第110話 困った時の対処法


「あ、先輩、彼、結局仙人になる方法すら聞かずに師匠の元を離れちゃいましたよ?」


「え!? ちょっとごめん、理解できないんだけど」


「じゃあ、順番に説明しますね。まず、彼と仙人である師匠がまず出会います。そして、仙人の方が彼に向かって水分となるものを要求したのです。

 これに対して彼は目にも止まらぬ速さで駆け出し、市場からりんごを買ってきました。ですが、それはほぼ窃盗でしたね。帰る時に金貨を指で弾いて、店の壁にめり込ませていましたから修復代こみでギリギリ窃盗や器物損害判定はありませんでしたがね」


「お、おう」


 彼は本当に破天荒だな。恐らく本人には自覚はないだろうが、今までもかなり無茶苦茶なことをしてきている。そもそも、普通の人はゲームにログインしてまで自殺しようと思わないだろう。まあ、別に彼を否定も批判もするつもりはない。


「そして、その後、彼はその仙人の弟子になることを誘われたのですが、彼は何を思ったのか、師匠になってくれる存在である仙人を食事に誘ったのです!」


「そ、そうか」


 もう、頭が痛いというが胃がキリキリするというか、どうして彼はこんなことをしでかしてしまうんだろうな。何度も言うが彼は別に自覚はないだろうし、別にそれを否定するつもりはない。ただ、上記を逸しているのは間違いない。


「仮に仙人といえど、まあ食事にともに行くことに何か問題があるのだ?」


 なんとなく察しはつくがあえて知らぬふりをして彼女にそう問うてみる。すると。彼女はキラキラと目を輝かせて答え始めた。


「いえ、先輩、それが問題の始まりだったのです! 彼はそれまで仙人に対し、この人が仙人であろうと勘付いていながらも一人の老人として扱っていました。しかし、この食事処で事件が起きたのです!」


「事件……?」


「そうです、事件です! 彼は仙人主導の元、ドラゴンステーキというお店に入りました」


 う、うわー。ドラゴンステーキという店なら俺も知っているぞ? 確か実際にはドラゴンのお肉は使っていないが、オーク、オーガ、ミノタウロスなどのステーキが食べられるはずだ。そして、その値段は高かったはずだ。


 うん、もう、なんとなくオチが見えてきたぞ。


「そして仙人の食欲が暴走を始めました。一番高級なお肉、ミノタウロスの特大ステーキを仙人は二十枚、二十枚も食べたのです!」


「じゅ、二十枚……」


 そ、それはどれほどの金額になるのだろうか。代金はどうしたのだろうか?


「そして仙人は一瞬でその栄養を自らの血肉にかえ、筋骨隆々の姿を取り戻しました。ですが、元々はただの修行僧、お金がある道理がありません」


 だ、だよなー。


「そ、それで?」


「もちろん彼が代金を請求されたのですが、彼はなんと、暗殺ギルドカードを提示して、ギルドの方に請求させることで難を逃れたのです!」


 え、えぇ…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る