第64話 悪魔との闘い


 彼と応戦中の悪魔がとうとう本気を出したようだ。雰囲気が一変した。間違いなく強くなっているだろう。それに対して彼はどう動くのだろうか、緊張して彼の様子を見守っていると、


「先輩!! なんと彼が並列思考を発動しました! 一体何をするのでしょうか!?」


 並列思考か……何故今この時になって発動するのだ? 何か策でも有るのだろうか、だが、並列思考でできること言ってもあくまで思考を分割することであって、何かが生まれるわけではない。


 自分の思考の範囲内のことだけであるため、脳の処理能力が上がって、戦闘に対して有利にはなれるかもしれないが、それでもこの場を乗り切れるほどのインパクトはないだだろう。


「あっ、彼が次に発動したのが……バーサークと、逆鱗!? なっ、これはかなり強力な組み合わせですよ!? これはもしかしたらもしかするんじゃないんですか??」


 バーサークと、逆鱗か。なるほど、そうすれば確かに悪魔に対抗できるだけの力は手に入るかもしれない。だが、自らの意識を手放すようなものだ。上手くいく可能性が低い。いや、上手くいかない可能性が高いと言った方がいいだろう。


 攻撃も短調になり、動きも直前的になるのだが。普通のモンスターならばそれでといいかもしれないが、悪魔相手だと少し厳しいように思う。


 あまりの事態に後輩の日本語がおかしくなっている。もしかしたらもしかするってどう意味なんだ? 若者の語彙は本当に難しい。


 っ! 彼が動き始めた。だが、その速度があまりにもおかしい。飛び出したというよりも弾き飛ぶようなスタートダッシュだ。ゼロから一気にトップスピードまで持っていったぞ。これは一体……


「彼は、バーサークと逆鱗で、STRとAGIが上昇しています。しかも、両方共ですからそれがかけ合わさってもの凄い倍率です。筋力も上がっているので、スタートダッシュがこれほど速くなっているようです」


 そういうことか……恐ろしいな。両方使うことで倍率を引き上げ、デメリットも打ち消しているのか。なんせ、片方発動するだけで意識を手放すのだから、それと似たようなスキルをもう一度使っても意味ないからな。なるほど賢いな。


 だが、その状態で上手く戦闘できるかな?


「ってえ?」


 上手く戦闘ができている。流石にいつも通りとまではいかないが、自我を完全に手放しているようには思えない。いや、少し説明不足か、どこかから誰かが指示しているかのような、そんな動きだ。暴走するのをなんとか抑えて、無理やり動かしているようにも見える。


 最初の接近から、袈裟斬りを繰り出した彼は悪魔に避けられた瞬間に、すぐさま左手で突きを繰り出した。そしてそのまま右で追撃しようとするが、一旦距離を置かれる。


 すぐさま駆け寄り、次々と攻撃を繰り出していく。避けられても構わずに斬り続けている。


 悪魔が嫌がって空中に逃げようにも翼を断ち切られているため実行不可能だ。いよいよ厳しくなってきた悪魔は、逃げに徹し始めた。只管避けて距離おいて、避けている。


 もう、勝つことを諦めて仲間を呼ぶのかと思ったが、どうやら違ったようだ。


 パチン!


 かなりの距離を置いた悪魔が指を鳴らすと、超巨大な火の玉が出現した。それでも彼は突進していく。


 しかし、彼と魔法では流石に魔法の方が速いようだ。彼に衝突し、大きなクレーターを作った。



 ッドッガーーーン!



 だが、それではダメなんだよ、悪魔君。


 その刹那、悪魔の首が宙を舞った。

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