マジかよっ

有金御縁

女子高生と遅刻と食パンと角と衝突と

「おい朔。なんで遅刻した?」


男子生徒高崎朔たかさきさくに対し隣の席に座るメガネ男子生徒小野坂渉おのざかわたるがあきれたように尋ねた。


「セーラー服着た女子高生が口に食パンをくわえながら『遅刻遅刻~』って言いつつ走ってくるのを角で待ってたんだ」


袈裟掛けしていた学生カバンを机に下ろしながら高崎は至って真面目に応える。


「なんだそりゃ」


「『20XX年、○月○日8時15分頃、この角で食パンをくわえて走る女子高生と走ってきた男子高生による衝突事故がありました。事故を見かけたかたは警察までご連絡ください』って書かれた看板が建てられた角なんだ」


「そんなん建ってんの?」


「しかもそこは昔に発掘調査された場所でもあってな。なんとセーラー服を着て口に化石化した食パンをくわえた骸骨が出土したんだ。発掘調査していた人たちが記者会見で『この骸骨の推定年齢は女子高生1年生~3年生ほどの人物で、当時遅刻ぎりぎりで走っている最中であったのだろう』って見解出してたんだ」


「なんの見解だよ・・・。で、いたんか?」


「いた」


「マジかよ」


「ただ、食パンはくわえてなくて、『余裕余裕~』って言いながら歩いているブレザー姿の女子中学生っぽい人だった」


「それが普通じゃね? いやでもそれもなんかおかしい感じがすんだが。ああ、でも誰だっけか? 確かよ、中学の頃にお前みたいに登校中に角で食パンをくわえた女子高生とぶつかって病院送りになった奴いたよな」


「そういえばいたな」


高崎朔は想い出したように手をポンと叩くが、そのあとに他になにか想い出したのか眉をひそめた。


「あれ? でも確かそれって女子高生とぶつかって病院送りじゃなくて、女子高生のくわえていた食パンの角にぶつかって、当たり所が悪くて病院送りじゃなかったか?」


「そういやそうだった」


今度は小野坂が手をポンと叩いた。

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