座学の時間
本を読み終えた俺には一つの疑問が生まれた。「ところでマーリンさん、何故この本を俺に?」
「物語というものはとどのつまり創造力を喚起させる存在。独自の工程や儀式で術式を生み出す混沌魔術に必須なのさ。そしてこれは君の出生と正体に関わることだ。今は分からなくとも、いずれ理解出来る日が来るだろう。」
意味深な言葉にやや困惑したが、なるほど、と俺は納得した。
「さて、次は象徴学の時間だ。これは脳にシンボルを記憶、埋め込むことによって、自らを門とし精霊を召喚しやすくする為の勉強だね。魔方陣を使って呼び出す方法もあるのだが、君の場合君自身が"門"となれる素養を見抜いた。だから今回教えるのは前者の方だね」
「それはちょっと怖いですね。もしそれで召喚した精霊に逆に使役された場合はどうするんです?」「それについては後で退去式魔術という精霊との繋がりをリセットする魔術を教える。」
「このよくある三角形に目玉はご存知かな?」「ああ、それなら知ってますよ。イルミナティとかそういう秘密結社のマークですよね。」
「残念、イルミナティは梟が象徴だ。正解を言うと、あれは拝火教の拝火壇だ。さらに踏み込むと、拝火教の主神である原人オフルミズドを表している。」
それにイルミナティは大昔に潰されてしまっている。巷で言われている"それ"は陰謀論で塗り替えられてしまったものだ。」
「余談だが、私は歪んだイメージを流布したり、意図的な誘導を含む官製陰謀論に否定的な立場を取っている。だが、陰謀そのものは否定していない。それは私達魔術師達によって何度も歴史上で繰り返されたことだ。私はそういった行いをする闇に堕ちた魔術師を何度も見てきた。それを止められなかった私達にも責任はある。だから私達も共犯者、そして魔術師を代表して君に謝罪しよう。」
「善良な一般の人々を長きに渡り苦しめてしまって申し訳なかった。不躾を承知で言うが、これからその悪の魔術師を捕らえるのに協力してほしい。君の力が必要なんだ。」
「分かりました。俺に出来ることであればなんでもやります!」
俺は迷ったが、自分が特別な人間だと自惚れて勢いで了承してしまった。
マーリンさんは指を鳴らし、嬉しそうに言った。「良い返事だ!これからどうか宜しく頼むよ!で、次だ。このVと卍にはこんな意味があってーーー」
めちゃくちゃ長い講義を聞かされた。が、楽しかった。
「長い間頑張ったね。これで最後。5元素魔術と"ゴースト"すなわち精霊と呼ばれる存在と融合する方法について教えよう。」
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