七日間の戦争
パチエント
第一話 春と駿
十七回目の春を僕を迎え入れる。お母さん、僕はこんなにも大きくなりました。なんて感謝の言葉を口に出す以前に、心にも抱くことも無くなった。自分でいうのも
何だが、人より性格が悪くふてぶてしい少年になってしまった。
人生で三番目に習慣になった校門を通る。桜の下、校舎と体育館に挟まれたその道の先に、新入生の群れがいた。きっとそわそわしている。いつも、初々しさというものは、いつの間にかなくなっている。どんな景色も素晴らしい絵画なんかよりも色鮮やかに見え、背筋を伸ばす緊張感となぜかわからないが少しの緊張感を持っている。
あんな時期が自分にもあったのか。どこか全盛期を思い起こす老人の様な自分に少し笑ってしまう。そこから周りに人がいないか、人知れず赤面してしまう。
自分の教室を確認してから、黒い線の入った廊下を歩く。いつ見ても、どういう原理で入るのかわからない。
階段を上る。春を半ば冬眠のように過ごした僕への今年最初の関門だった。もともと学校に来るまでの足取りが重かったが、さらに太ももにおもりでもつけられたようだった。そこで背中に更なる衝撃が来た。さすがに精神的なものではなかった。
「よっす」
振り向いてみると、予想的中。幼馴染の駿介だった。相変わらず、僕と対極にいるやつだ。サッカー部のエースで、いつも爽やかな顔を引っ提げている。女の子だけでなく、クラス全体のムードメーカだ。
「おはよう」
だけど、この挨拶だけはファッションセンスのわからない僕からしてもダサいと思う。返答に満足したのか、彼は殴ってやりたいほどに爽やかな笑顔をこちらに向ける。
「
「そんなことないよ。駿介が春なのに黒いんだよ」
駿介が袖をめくって腕を見た。僕のより筋肉質だった。サッカー部は腕まですごいのかと思ったけど、比較対象が引きこもりだということに気付いた。
「そんなことより、うちのクラス転校生が来るらしいぜ」
あ、小説の中の奴だ。と瞬時に思った僕は末期なのだろう。
「そうなんだ」
「相変わらず、反応が薄いのな」
名前の知らないクラスメイトがいるのに、新しい子が入ってきたところで変わらないよ。
そう言いたいところをぐっとこらえる。
「あまり期待しない方がいいよ」
駿介がそうな。と肘をつついてくる。久々に駿介と話すのは楽しかった。
そして、僕達二人は教室へ向かった。
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