太陽と呼ばれた娘(こ)

第1章

 君は僕に言った。

「私ね、北風と太陽の物語に出てくる太陽になりたいの」

君は間違いなく、僕を、そして君を大切に想う周りのみんなを照らす、温かすぎる太陽だったよ。

           *

 「ねえ!なに読んでるの?」

ぶっきらぼうにそう言い、僕の読んでいる本を覗き込んでくるのは、同じクラスの久坂向日葵(くさかあおい)。

「え…これは…イソップ寓話の本だけど…」

僕はそう答える。すると彼女はキョトンとした。

「イソップ…?寓話…?」

なにそれ、と続きそうな口調。

 この人、寓話自体も知らないのか…

と思った僕は、説明するのが面倒で本に目を戻した。その様子を見た彼女はもう一度僕に話しかけようとしたが、友達に呼ばれその場を走り去る。

 寓話知らない高校生なんているのかよ、レベル低いな…

僕は少し苛立った。でもこんな小さなことで苛立つ自分にも更に苛立つ。最近はずっとこの調子だ。僕はここ数ヶ月、常にこんなモヤモヤとした感情の中にいる。理由には心当たりがあった。今どき珍しくない親の離婚騒動。それが僕を憂鬱にさせる要因だった。


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