第28話 シュウウウウウ
「パーティー会場を襲った犯人、根津博義。僕らと同じ小説家の伊那後先生、そして編集者の灰塚さん。彼らを殺したのは貴方ですね?」
僕が問い掛けると彼女は
「シュウウウウウウウ」
と息を吐いた。僕は構わず続ける。
「事件が起きる前、僕は友人から『白い大蛇』の話を聞きました」
「……」
「『白い大蛇』は蛇ノ山という山の主でしたが、異国からやって来た『紅い蠍』と呼ばれているアヤカシによって追い出されました。蛇ノ山から追い出された『白い大蛇』は人が住む都会で暮らすようになった。という話です」
「……」
「僕は『白い大蛇』をパーティー会場で見ました。そう、貴方も参加されたあのパーティー会場です」
彼女の目が大きく見開かれた。「シュウウウウ」という呼吸音も荒くなる。
「パーティー会場を襲った犯人、根津博義にはあるアヤカシが憑いていました。『白い大蛇』は根津に憑いていたアヤカシを捕食し、姿を消しました。憑いていたアヤカシを喰われた根津は気を失い、そのままやって来た警察に逮捕され、連行されたのです」
「シュウウウウウウ。シュウウウウウ」
「しかし、根津は拘置所の中で死にました。刑務官や他の囚人の話によると、死ぬ寸前、根津はしきりに『ヘビ』と言っていたそうです」
「シュウウウウウ」
「『白い大蛇』は今まで人を直接殺めたことはないそうです。僕は友人と一緒に何故、今まで人を殺したことのない『白い大蛇』が根津を殺したのか考えました。結果『白い大蛇』は報復のために根津を殺したのだろうということになりました。根津は『白い大蛇』が憑いている人間を傷つけた。もしくは『白い大蛇』が憑いている人間を追い掛けた。『白い大蛇』はその報復に根津を殺したのだろうと……。ですが、その後『白い大蛇』は関係のない灰塚さんと伊那後先生を殺しました。何故『白い大蛇』は二人を殺したのか?僕には分かりませんでした」
灰塚さんと伊那後先生が『白い大蛇』に殺される理由なんてない。なのにどうして『白い大蛇』は二人を殺したのか?二人も知らぬ間に『白い大蛇』の怒りを買っていたというのか?
「ですが、違いました。僕は……大きな勘違いをしていたのです」
そう、勘違い。僕は根本的な事を間違っていた。
「『白い大蛇』は誰も殺していませんでした 。三人を殺した蛇のアヤカシは 『白い大蛇 』とは別のアヤカシだったのです。そして、そのアヤカシはある人間により操られていた 」
彼女の目がさらに大きくなる。僕はその目をまっすぐ見据えた。そして、ベッドに横たわっている彼女を指さした。
「それは貴方です」
僕の指の先には、病院のベッドに横たわっている『蝶野聡子』がいた。
「蝶野さん。貴方が三人を殺した犯人です」
華我子さんの元を訪れる二日前、僕は蝶野さんが入院している病院を訪れていた。
意識は回復したが、たくさんの機械につながれ、話すことはおろか、呼吸さえも自力では出来ない蝶野さんは「シュウウウ。シュウウウ」と息を吐いた。
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