第69話

 


 


「回復薬よ。」


「回復薬ね。」


オレの質問にミーシャさんとエリアルちゃんは示し合わしたように同じ答えを返してきた。


まあ、それもそうだよなぁ。


ステータスに何の効果もないのであれば、回復薬より食事をする回数は絶対的に低いだろう。


フィールドに出れば、もれなく魔物が襲ってくる。


魔物のレベルが高ければ怪我をするので回復薬がどうしても必要になる。


フィールドに出たら回復薬か回復魔法で体力を回復させることしかできないのだから。


対して食事は必ずしも必須ではない。


食事をすることによってステータスに効果はないのだから。


ただ、食事をとることで相手とコミュニケーションをとることができるというだけだ。


コミュニケーション大事だけれども、それほど食事をとる習慣がない人もこのキャッティーニャオンラインのプレイヤーには多いだろう。


「えっと、じゃあ。二人とも回復薬が好物ってことで。」


『回復薬でよろしいでしょうか?』


「は、はい。」


改めて確認されるとドキッとするなぁ。


『ふぁいなるあんさーぁ?』


「ふぁ、ふぁいなるあんさーあ。」


『・・・・・・・・・。』


え?ちょっと違うのかな・・・。


なかなか答えが発表されないので思わずドキッとしてしまう。


確かに一番食べているのが回復薬ってだけで、回復薬は食事ではないんだよな。


だから、もし食事について聞かれているのであれば回復薬は正解ではないのだろう。


ただ、二人とも回復薬以外はほとんど口にしてないっていうし。


これで違ったらなんて答えればいいのかわからない。


『・・・多分、正解でっす。』


たっぷりと間が開いた後、そう返答があった。


っていうか、多分ってついてるけど・・・。


『みーごっと、破局イベントクリアでっす。おめでとうございまっす。』


「え?」


「あら。」


「もう?」


無機質な声は破局イベントをクリアしたとオレたちに告げた。


まさか、こんなにあっけなく破局イベントが完了してしまうだなんて思ってもみなかった。


途中、酷すぎると思われる問題もあったけれども。


ニャーネルさんってばこんなに簡単な問題を作ったのだろうか。


もっとこう、バトル要素があるかと思ったんだけど。


勝てるか勝てないか危うい敵に挑むようなそんな要素があるような気がしたのだけれども気のせいだったのだろうか。


まさか、こんなクイズだけで終わるとは思わなかったのであっけにとられてしまった。


『破局イベントクリアした方には恋人とより強力に結ばれるというアイテムをお渡ししまっす。アイテムボックスに入れておいたので受け取ってください。では、お疲れ様っしたー。』


ブツッと無機質な声が途切れた。


どうやら、これで破局イベントは終了らしい。


まあ、とは言ってもまた悪だぬきのぬいぐるみが100個集まってしまえば破局イベントが発生するんだろうけど。


「それで、何をもらったのかしら?」


「そうね。私も知りたいわ。」


「待って、今確認するから。」


エリアルちゃんとミーシャさんがオレが貰ったという破局イベントの報酬に興味津々である。


新しいアイテムだしね。


そりゃあイベントクリアのアイテムだったら知りたいよね。うん。


そう思ってオレは、アイテムボックスの中を確認する。


するとそこには見知らぬアイテムが追加されていた。


【恋うさぎのぬいぐるみ】


どうやらまたぬいぐるみのようである。


ニャーネルさんってばぬいぐるみが好きなのだろうか。


オレは新しく追加されたぬいぐるみを顕現させてみる。


うさぎは現実世界ではあり得ないだろうと思われるドピンク色をしていた。


ぱっちりお目目が可愛らしいけれど、ドピンクなのでかなり目立つ。


どうして、この色にしたよとツッコミたいところだ。


「まあ。なんてド派手なぬいぐるみなのかしら。」


「ねえ、エンディミオン様。このぬいぐるみの効果はなにかしら?」


エリアルちゃんは恋うさぎのぬいぐるみをしげしげと見つめながら、顔をしかめる。


反対にミーシャさんは興味津々に確認してきた。


「ええと・・・。このぬいぐるみを渡した人との愛情がかなり深まります。次に破局イベントが発生してもこのぬいぐるみを持っていれば一回だけ回避することができます。だって。」


オレは表示された説明をそのまま読み上げる。


「まあ!」


「ふぅ~ん。」


つまり、誰かにプレゼントしても良いし、自分で持っていてもいいということだよな。


相手との愛情がかなり深まるのはありがたいが、渡してしまうと破局イベントが発生してしまうんだよなぁ。


なんだかエリアルちゃんと恋人同士でいる限りまだまだ悪だぬきのぬいぐるみが増えそうだし、趣味じゃないけどオレが持ってるのが一番かな。


ミーシャさんもエリアルちゃんも欲しいと言い出さないし。


まあ、一つしかないから言い出せないのかもしれないけれども。


そう思っていると・・・。


「エリアル様!これを受け取ってくださいっ!!」


「え?」


そう言って見知らぬプレイヤーがエリアルちゃんに突撃してきた。手に、悪だぬきのぬいぐるみを持って。


『おめでとうございまっす。エリアル様。悪だぬきのぬいぐるみが100個溜まったので、破局イベントが開始されまっす。』


 


 


 


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