第48話

 


 


 


「わ、私の方が優斗のこと好きなんだからぁああああああ!!!」


「わ、私だって優斗のことが好きですわ!」


「ふへっ!?」


マコトと高城さんが何を言いだすのかと思えば急にオレのことが好きだと叫び始めた。


これはいったいどうしたことなんだろうか。


今まで全くといってモテなかったオレが、ここに来てモテ期到来なのか・・・?


いや。


これが全部夢だということもある。


もしかしたら、美琴姉さんに張り合うためにマコトと高城さんがそう言っているだけなのかもしれない。


「だって。優斗。よかったわね。モテモテで。マコトちゃんも高城さんも可愛いものね。」


「え・・・。いや・・・あの・・・。これは夢?」


美琴姉さんがオレに話しかけてくるが、いまいち頭の中に入ってこない。


むしろ、三人からほぼ同時に好きだと言われるなんて今まで経験がなく、からかわれているか、これはオレの都合のいい夢の中なんじゃないかと思えてきた。


「現実逃避しないの。みんな優斗のことが好きなんだって。」


「そ、そうなの!!今までずっとずっと黙ってたけど、私は優斗のことをゲーム友達と思ってたわけじゃなくて、ずっとずっと好きだったんだから!!」


「わ、私だって。美琴さんやマコトに負けないくらい優斗のこと好きなんだから。」


うう・・・。


どうやら夢ではなかったようだ。


頬をつねってみても痛くないし、三人がこれだけ言うのだ。


夢でもなければドッキリでもなさそうだ。


「ねえ。優斗。私たちの誰を選ぶの?」


「優斗!ずっと一緒にいた私だよね?ね?」


「私を選んで。」


三人からそれぞれ詰め寄られる。


「えっと・・・。あの・・・。」


オレは三人のことをそういう対象として見てこなかったのだ。


特に高城さんとはまだ会話するようになってから日が浅いし。


マコトだって今までゲームを一緒にするゲーム友達だったし。


美琴姉さんは姉だし。


三人のことを異性として見てはこなかったのだ。


だから、いきなり選べと言われても選ぶことなんてできない。


それに、美琴姉さんは実の姉なわけだし、美琴姉さんを選ぶことはできない。


「えっと。皆のことそういう対象だって見てこなかったし。美琴姉さんは血の繋がった姉だし・・・。ごめん。オレにはまだわからないよ。」


今はまだ決められない。


この三人の中で一番心が惹かれたのは美琴姉さんだけれども、美琴姉さんは血の繋がった姉だから選べるはずもない。


思ったまま、そう告げればマコトと高城さんがガクッと膝をついた。


美琴姉さんだけが優しく微笑んでいた。


「そう。まだ選べないのね。でも、いつかは(私を)選んでくれるのでしょう?」


「え、あ、うん。」


そりゃいつかは彼女が欲しいと思っている。


それがここにいる三人のうちの誰かになるのか、それともこれから出会う誰かになるのかはわからないけれども。


だから、美琴姉さんの問いかけに戸惑いながらも頷いた。


なにやらちょっとだけ美琴姉さんの言葉に含みがあったような気がするのが気になったけれども。


「・・・私、負けない!ライバルたちは強力だけど、絶対優斗に私を好きになってもらうんだから!」


「私だって負けませんわ!美琴さんよりもマコトよりも優斗に必ず好きになってもらいます!」


マコトと高城さんは気を取り直したようで、そう高らかに宣言した。


というか、オレの前で堂々と宣言されるとちょっとこそばゆい。


というか、オレ、この二人の宣言を聞いていていいのかと不安になる。


「むっ。諦めなかったか。二人とも強力なライバルだものね。ここは抜け駆けします!」


「へ?」


「え?」


「はい?」


普通抜け駆けはなしって言うところじゃないのだろうか。


何故だか、美琴姉さんが抜け駆けをすると発言した。


それに驚く、マコトと高城さんとオレ。


いや、驚かない方がおかしいだろう。


なんで、抜け駆けする宣言をするのだろうか。


「優斗!」


「は、はい!」


美琴姉さんがずずいっとオレの方に近寄ってくる。


近い近い近い!!


美琴姉さんの甘い吐息がオレの頬に当たってるんですけど!


「私、優斗と血が繋がっていないの。だからね、父さんも母さんも私と優斗が付き合うことに関しては歓迎してくれているからね。」


「えええええっ!!?」


血が繋がっていないってこのタイミングで言う!?


普通、このタイミングで実は血が繋がってないだなんて言うだろうか。


いや、言わないだろう。


もっと、こうシリアスなタイミングで言うのが普通だろう。


それか、役所に言って戸籍謄本を取り寄せて知っちゃったみたいなのが定番だろう。


それがなぜこのタイミング。


マコトも高城さんも側にいるのに。


っていうか、美琴姉さんとオレ、血が繋がっていなかったの!?


「こ・れ・で・優斗が気にしている倫理的な問題は解決だよね。ちゅっ。」


「ええええええっーーーーーー!!!!」


「ひ、酷いわっ!!!私も優斗にキスするの!!」


美琴姉さんが耳元でささやくと、オレの頬にそのまま柔らかな唇を押し付けてきた。


もちろんそれを見ていたマコトと高城さんからは悲鳴が上がったのは言うまでもない。


そして、その後オレがマコトや高城さんに揉みくちゃにされたのも言うまでもないことだろう。


 


 


 


 


第一章 完


 


 


長らくお付き合いくださりありがとうございました。


また沢山の応援、感想、評価ありがとうございます。


本日で第一章が完了となります。


第二章は明日から開始予定です。


第二章では、優斗があの人とお付き合いをする過程を書いていきたいと思います。


どうぞ引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 


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