第41話
「み、美琴姉さんっ!?」
「あら。昔は一緒に寝たじゃない。」
「いつの話を言ってるんだよ!?」
何歳の頃の話を出しているのだろうか。
確かに、美琴姉さんとオレは小さい頃はいつも一緒に寝ていた。
それでも、オレが小学校低学年くらいだったと思うんだけど。
「あら~。もう、私が優斗くらいの年のときは、まだまだ優斗と一緒に寝てたわよ。だから、ほら。いらっしゃい。」
あの時の美琴姉さんが今のオレの年齢と一緒だとしても、今のオレたちが一緒に寝るのはまずいと思うのだが。
いろいろと。
「あのねぇ・・・。美琴姉さん、オレももう高校生なんだよ。万が一間違いが起こったらどうするの。」
大きなため息交じりにそう言えば、
「・・・別に間違いが起こってもいいのに。」
美琴姉さんが小さく何かを呟いた。
でも、小さすぎてオレには聞き取れなかったが。
「なんか言った?」
だからもう一度聞き直した。
「ううん。なんでもない。いいじゃん、久しぶりなんだから。ね?ね?」
「はあ~。わかったよ。」
「やった!」
結局オレは美琴姉さんに敵わずオレのベッドで一緒に寝ることになってしまった。
☆☆☆
「優斗、久しぶりだね。こうやって一緒に寝るの。」
「うん。」
「何年ぶりかな・・・?」
「う~ん。10年ぶりくらい?」
「えー。もうそんなになるっけ?」
「うん。」
オレのベッドに横になりながら、オレたちは過去を振り返った。
美琴姉さんが一緒に生活していた日々は今も褪せることなくオレの中に思い出として残っている。
「あんなに小さかった優斗もこんなに大きくなっちゃうんだもんなぁ。男らしくなったよね。ねえ、本当に彼女いないの?マコトちゃんは違うの?明日来るっていう高城さんも彼女じゃないの?」
「・・・いないよ。マコトも高城さんも違うし。」
本当はミーシャさんが彼女なんだ。
ゲームの中のことだけど、オレは現実でもミーシャさんと恋人になりたいと思っていた。
でも、そのミーシャさんはもしかしたら美琴姉さんかもしれないんだ。
美琴姉さんがオレの彼女だと想像するとオレがオレでなくなってしまいそうだ。
今まで築き上げてきた家族の絆というものを壊してしまいそで。
だからオレの彼女はいないと美琴姉さんに告げる。
「そっかぁ。本当に?」
「本当。」
「本当の本当?」
「本当の本当。」
「本当の本当の本当?」
「本当の本当の本当。」
「本当の本当の本当の本当?」
美琴姉さんは寝っ転がったままオレを見て、何度も確認してくる。
「・・・美琴姉さん、不毛だからもうやめよう。本当にいないから。」
「・・・うん。わかった。」
そう言って美琴姉さんは目を瞑ってしまった。
オレも変な考えが浮かばないうちに寝ることにする。
と、いうか次、美琴姉さんが話しかけてきても返事をしないことにしよう。
じゃないとオレ、ドキドキしすぎて眠れないから。
というか、今も緊張しちゃって眠れないけど。
ってか、本当に眠れない。
チックタックっていう時計の秒針を刻む音が妙に耳に残る。
辺りが静かだから余計に大きく聞こえてきてしまう。普段は気にならないのに。
それに、右隣りから聞こえてくる美琴姉さんの息遣いがなんだか艶めかしく感じられる。
どうしよう。
本当にオレ、眠れないんだけど。
そう思っていると美琴姉さんが身じろぐのがわかった。
オレはビクッと固まってしまう。
「ねえ、優斗。もう、寝ちゃった?」
「・・・・・・・・・。」
美琴姉さんに緊張して眠れませんなんて言えないし。
ここは、もう寝たふりだ。
「・・・寝ちゃったのかな?・・・ねぇ、少しは私にドキドキしてくれたりしないの?」
はあっ!?
美琴姉さん何を言ってらっしゃるんですかっ!?
思わず叫びそうになった。
しかも、なんか美琴姉さん少し寂し気だし。
もう、オレにどうしろっていうんだよ。
姉相手にドキドキしちゃまずいだろ。
だから、オレこんなに我慢してるのに、なんで美琴姉さんからオレの我慢を打ち破ろうとしてくるのかな。
美琴姉さんの嫌がらせにしか思えないから、起きていても返事なんかしないんだからな。
そう思ってオレはぎゅっと目を瞑った。
がさり。
美琴姉さんが動く音が聞こえる。
目を閉じているから見えないが、美琴姉さんがオレの方に近寄って来たような気がする。
っていうか!!
っていうか!!
オレの口元に美琴姉さんの息が当たってるような気がするんですけど!!
え?ちょっ!!まっ・・・。
ああああああああーーーーーーーーっ!!!!
オ、オレの唇に暖かくて柔らかい何かが当たってる!!
こ、これは美琴姉さんの、唇?
もしかして、オレ、美琴姉さんとキスしてる?
目を開けて確認したい。
確認したいけれども、今さら目を開けるのも起きていて無視してましたと言っているようなものだし。
キスされて、目が覚めましたって言って目を開ければいいのか?
いや、どこのお姫さまだよ。オレ。
キスされて目覚めるだなんて、お姫さまじゃないか。
これも、パス。
となると、やっぱり眠ったふりを続けるしかないのか。
と、心の中で葛藤していると美琴姉さんの唇が離れていった。
・・・なんだかとても名残惜しいと思ってしまったのは秘密だ。
でも、まだ美琴姉さんの顔はオレの顔の近くにあるらしくて、オレの頬に美琴姉さんの吐息が当たる。
「ねぇ。優斗。・・・私がミーシャだよ。優斗・・・エンディミオン様。」
オレの耳元に美琴姉さんが囁いた。
特大の爆弾を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます