第28話

 


ギルドに着くとそこは今日も冒険者で賑わっていた。


さて、昨日会った銀髪の女性冒険者はどこにいるのだろうか。


いや、さっそくギルドに来てしまったが彼女がNPCでなければ今日もギルドにいるとは限らないか。


早まったかな。


でも、クエストの対象ならばNPCなんだとは思うけれども。


彼女がNPCでなければ、探している相手は彼女じゃなと推測される。


オレはギルドに足を踏み入れる。


今日のギルドの受付は2箇所開いていたが、どちらも同じくらいの列の長さだ。


こないだみたいに片方だけ長蛇の列ということにはなっていない。


どうやらニャーネルさんはいないようだな。


まあ、ニャーネルさんに会いにきたわけではないのでいいけれども。


銀髪の彼女に会ったのはギルドのシャワールームだった。


先日と同じ時間帯というわけではないので、そこにいないかもしれないけれども取り合えずシャワールームに向かってみる。


もし、そこで誰かに行き会うのであれば銀髪の彼女について確認するのもありだろう。


そう思ってシャワールームに向かったのだが、シャワールームには誰もいなかった。


そうなるとどこにいるのだろうか。


オレはギルドの中を探すことにした。


まあ、ギルドにいるとは限らないんだけどね。


シャワールームを出てすぐ冒険者と思われる女性がこちらに向かって歩いてきた。


彼女はシャワールームを使用するのだろうか。


「あの、すみません。」


オレは意を決して彼女に話しかけてみる。


「・・・なにか?」


緑色の犬を抱っこしているオレを怪訝な表情で見てくる女性冒険者。


尻込みしたくなるが、グッと我慢をする。


「・・・あの、このわんこの飼い主を探していまして。銀髪の女性ってことだけはわかっているんですが、ご存知ありませんか?」


【わんこ】を強調して確認する。


決してシャワールームで覗きをしようとしていたわけではないのだ。


人を探しているだけなのだ。


「銀髪の女性・・・?ごめんなさいね。心当たりはないわ。(あの人ではないわよね。彼女だったら誰でも知ってるからわざわざ聞いてくるはずはないわね。)」


「・・・そうですか。ありがとうございます。あの・・・では銀髪の女性ってこの街で見かけたことありますか?」


「(彼女以外)私は見たことはないわね。」


「そうですか。ありがとうございます。」


どうやら女性冒険者は銀髪の女性に心当たりがないらしい。


シャワールームのことを知っていたから銀髪の女性もこのギルドを頻繁とは言えずとも何度かは利用しているのではないかと思ったのだが・・・。


それにしても、この街で銀髪の女性を見たことないか・・・。


これは、この犬の飼い主を探すのは大変そうだなぁ。


オレはギルド内でも一番人がいる待合スペースに向かった。


待合スペースでは飲食可能となっているため、数人の冒険者が朝からお酒を飲んでいたりする。


もちろんオレは未成年なのでお酒は飲まない。


ゲームだから別にお酒を注文してもいいだろうと言うことなかれ。


このゲーム以外とお酒に関しては厳しいのだ。


ゲームの初期登録時に生年月日を入力する必要があるのだが、そこで未成年であればゲーム内でもお酒が飲めない使用になっている。


もちろん生年月日を偽ることも可能だが、生年月日を偽っていることが運営側にバレてしまうとアカウント停止処分を受ける。


しかもブラックリストに載ってしまうので、提携しているオンラインゲーム会社のゲーム全てで以後、生年月日を誤魔化してゲームに登録しようとすると登録できない仕組みとなっている。


なので、そこまでして年齢を偽る人はまずいない。


バレた時のリスクが大きいからだ。


「こんにちは。」


オレはお酒を飲んでいる冒険者4人組に声をかけた。


「おう!なんだ坊主、お前も飲むか?」


「ほれほれ、飲め飲め。酒はいいぞぉ~。」


揃ってお酒を進めてくる。


が、しかしここでお酒を飲むわけにはいかない。


「すみません。オレ、未成年者なので。」


「そうか、なら仕方がない。」


「じゃあ、なんか用か?」


このゲームでは未成年者に無理やりお酒を飲ませようとするとペナルティが課せられるため、未成年者だとわかるとお酒を進めようとはしなくなる。


「ええ。今、クエストを受注しておりまして。この緑色の犬の飼い主を探しているんです。ヒントを確認すると、どうやら銀髪の女性が飼い主のようなんですが・・・。ご存知ありませんか?」


オレがそう尋ねると冒険者の男性たちはお互いを見合わせた。


「銀髪かぁ・・・。」


「銀髪の女性って言ったらなぁ?」


「ああ。だが、彼女の可能性はないだろうなぁ。NPCじゃないみたいだし。」


「でも、彼女だったらオレがクエスト受注したい!」


「はあ!?そりゃオレもだ!!」


「オレだって受注したいっ!!堂々と話しかけることができるんだぞ!!」


「そうだそうだ!長蛇の列に並ぶ必要もないじゃないか。それに、列に並んでも業務的な要件しか話せないし・・・。」


どうやら、この冒険者たちは銀髪の女性に心当たりがあるようだ。


しかもどうやら人気があるらしくその女性に会うためには長蛇の列に並ぶ必要があるとか。


長蛇の列ができるということはその女性はなにかお店を開いているということだろうか。


でも、話しぶりからすると、どうやらNPCではないようなので期待薄だろうか。


「あの・・・その方は今、どちらにいるかわかりますか?」


でも、その女性の可能性もあるので念のため確認をする。


「ん?そういや鍛冶師の嬢ちゃんとどっかに消えてったきり見てねぇな。」


「あー、ギルドの個室じゃねぇか?」


「えらい剣幕だったもんな。鍛冶師の嬢ちゃん。」


「見かねたギルマスが仲裁に入ったくらいだもんなぁ。」


どうやらこのギルド内にいるらしい。


しかし、取り込み中のようだ。


すぐに会うことは難しいだろうか。


「ありがとうございます。取り込み中なようですのでここで待ってます。うぉっと・・・。」


オレは冒険者たちにお礼を言うと、立ち上がろうとした。


だが、冒険者の一人にガシッと腕を取られた。


「まあまあ、どうせ一人で待ってるんだろ?オレたちと一緒に話をしようぜ。」


「そうだな。酒は飲ませてやれねぇがジュースならどうだ?奢ってやるよ。」


「ここのフライも美味しいぞ。」


「なんでも好きなもん取ってやるからここで待っていろよ。」


そう言って冒険者の皆さんはオレにテーブルにある食事を勧めてくる。


しかも勝手にジュースまで注文されてしまった。


どうやらオレにこの場所にいて欲しいようである。


先ほどの会話からすると銀髪の女性にオレが用事があると言ったから、オレの横から銀髪の女性に話しかけたいだけなような気もするが・・・。


まあ、害はないだろうからここは冒険者の皆さんと一緒に座っているか。


一人で待っているのも退屈だしな。


そういう訳で、オレは冒険者の皆さんとギルドの待合スペースで銀髪の女性の用事が終わるのを待つことにしたのだった。


 


 




 


 


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