第19話
「ええ。エンディミオン様が無職だと聞いてお話をうかがうために一緒に来ました。ギルドで聞こうかとお持ったのですが、お二人と約束があるとうかがいまして。こうして参ったわけでございます。」
ほぉう。
ガーランドさんがずいぶんと丁寧にミーシャさんとエリアルちゃんに話しかけている。
オレとは違う対応に少しだけムッとする。
でも、ミーシャさんもエリアルちゃんもガーランドさんがオレのことを【エンディミオン様】と呼んだところで吹き出しそうになっていたのをオレは見た。
そうだよな。ガタイのいいおっさんがオレのことを【様】付けで呼ぶのはあきらかにおかしいよな。
ごめん。ガーランドさん。オレの名前のせいで。
そう心の中で謝ってみた。
その後はミーシャさんとエリアルちゃんの前で、オレが無職になった経緯と、レベルを上げた方法をガーランドさんに伝えた。
「なるほど。よくわかった。」
ガーランドさんは一通りオレの話を聞くと神妙に頷いた。
そして、どこか遠くを睨み付ける。
「ガーランド、これ誰かがプログラムを勝手に修正した影響ですよね?」
「ああ。たぶん、あいつだろう。なにを思ってこんなことをしたのか・・・。」
ミーシャさんがガーランドさんに話しかけると、ガーランドさんがわけ知りのように頷いた。
というか、ミーシャさんなんで、ガーランドさんのことを呼び捨ててるの?
もしかして、ガーランドさんとミーシャさんは知り合い?
「あの・・・。ガーランドさんとミーシャさんはお知りあいですか?」
気になるので、オレは意を決して二人に話しかける。
すると二人とも微妙に苦い顔をした。
「ま、まあ。古い知り合いよ。(実は運営仲間だなんて言えないし・・・。)」
「あ、ああ。古い知り合いだ。(まさか開発しているのがオレたちだとは言えないな。)」
「・・・そうですか。」
二人の微妙な反応に、オレはミーシャさんがガーランドさんのことを好きなんじゃないかという疑心暗鬼にとらわれる。
もしくは、ミーシャさんとガーランドさんはリアルでも知り合いで、男女の仲とか・・・。
気になってしまってどうしても考えてしまうのだ。
「いや、まあ。用事もすんだしオレはギルドに帰るわ。」
「え?もう、ですか?エリアルちゃんのことは?」
「はぁわわわわわわわ。そ、それはまた今度ということで!!では!!失礼する!!」
話が済むと、ガーランドさんはすぐに出ていってしまった。
エリアルちゃんと友達になるという件については、どうやら後日にするようだ。
「ねえ?ガーランドとは本当に古い知り合いってだけかしら?」
ガーランドさんがいなくなった途端に、エリアルちゃんがミーシャさんに問いかける。
それ、オレも気になっていたところだ。
「え、ええ。古い知り合いよ。」
「ほんとうに?」
ミーシャさんが歯切れ悪く答える。
それじゃあ、嘘だと言っているようなものだ。
もちろん、エリアルちゃんもそう思ったようで不審な顔をしてミーシャさんをじっと見つめている。
「昔の彼氏・・・なんじゃないの?それともセフレ?(もしそうなら、エンディミオン様からは手を引いてもらうんだから!)」
「なっ!?違います!そんなんじゃありませんっ!!(ああ、エンディミオン様どうか勘違いしないで。私とガーランドはそんなんじゃないの。)」
エリアルちゃん、幼い見た目に反して随分な言葉を知っているな・・・。
ミーシャさんは顔を真っ赤にしてエリアルちゃんの言葉を否定した。
「じゃあ、なんなの?関係性をちゃんとに説明してくれるかしら?」
「………会社の同僚なのよ。」
エリアルちゃんの追求にミーシャさんはため息をつきながら、答えた。
「あら、そうなの?じゃあなんで黙ってたの?古い知り合いだなんて嘘をついてまで。」
「それには、いろいろと事情が………。(実は運営側なんですなんて、今はまだ言えないし。)」
「ふぅん。わかったわ。」
ミーシャさんの歯切れが悪くなる。
同僚だっていうのはほんとにのことみたいだが、本当に同僚ってだけなのだろうか。
オレが気にしすぎなのだろうか。
「エンディミオン様のこと、本気じゃないなら手を引いてよね!」
ミーシャさんのことを考えていると、とつぜんエリアルちゃんがそんなことを言ってきた。
本気もなにも、ここはキャッティーニャオンラインというゲームの中なのだ。
そう、ゲームの中なのに本気もなにもないだろう。と、思う。
そうは思っていても、こんなにミーシャさんのことが気になるのは何故だろうか。
現実とゲームの世界とは違うとわかっているはずなのに。
「私は本気よ!エンディミオン様のことは本気で好きなの。最初は興味本意だったけど、エンディミオン様と話せば話すほど懐かしい感じがして、ずっとエンディミオン様と一緒にいたような気がして。エンディミオン様が好きな気持ちは本当よ。」
「えっ………。」
思わずオレは声を出してしまっていた。
まさか、ミーシャさんから告白されるとは思ってもみなかったのだ。
でも、ミーシャさんがそう言ってくれたお陰で、オレのこの気持ちも整理ができた。
きっと、たぶん、いや、絶対オレはミーシャさんのことがゲームとか現実とか関係なく好きなんだろう。
だから、こんなにもガーランドさんとのことが気になるのだ。
そう思えば先ほどまでの悶々とした気持ちに説明がつく。
「ミーシャさん。オレもミーシャさんのことが大好きだ。不思議とオレもミーシャさんとは幼い頃かずっと一緒にいたような気がして、ミーシャさんの隣は居心地がとてもいいんだ。ゲームだからとか、現実とか関係なくオレはミーシャさんのことが好きだ。」
ミーシャさんの気持ちに胸が高まって、気づけばオレはミーシャさんに気持ちを告げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます