第14話

 


「そうなんだ。もうスキルを取得できるほどレベルが上がったの?すごいね!」


「ええ。レベル10になりました。」


ミーシャさんは自分のことのようにオレのレベルアップのことを喜んでくれた。


「異常よね。こんなに短期間でレベル10になる人初めてみたわ。」


エリアルちゃんは憮然とした表情でポツリと呟いた。


「確かにそうね。まさかこんなに短期間でレベルが上がるとは思わなかったわ。エンディミオン様、何をしたの?」


そのエリアルちゃんの呟きをしっかりとミーシャさんが拾ってオレに訊ねてきた。


やっぱりこのレベルの上がり方は普通ではないのだろうか。


少しだけ不安になる。


が、それも無職という職業だからだろうかと思った。


「川がゴミだらけだったんですよ。なので、その川のゴミを拾ってたらレベル10になってました。あと【ゴミ拾いの達人】って称号を得ましたよ。なんか、この称号の影響で取得できるExpとお金が2倍になるようです。」


「ええっ!!!?」


「なにそれっ!!!?」


オレの説明に対して、ミーシャさんとエリアルちゃんは驚いたように声を上げて身を乗り出してきた。


おおっと。


思った以上の食いつきだな・・・。


「ちょっと私もゴミ拾ってくるわ!!」


「ええっ!!?ちょっと待って!!オレが無職だからゴミを拾うとExpとお金が増えるみたいなんだよ。」


「はあっ!?」


エリアルちゃんが興奮した様子で飛び出て行こうとするので慌てて止める。


エリアルちゃんがゴミを拾ってもExpとお金が増えない可能性があるからだ。


ちゃんとに説明してからでないと、また嘘つき呼ばわりされそうだ。


って、あれ?


エリアルちゃんってNPCじゃないのか?


てっきり始まりの街の装飾品店で仕事をしているからNPCだと思ってたんだが。


「ミーシャさんがゴミを拾ってもExpもお金も増えなかったんだよ。だから、エリアルちゃんが拾っても同じかもしれないと思って・・・。」


「ふぅ~ん。それで、誰もゴミを拾ってExpとお金が増えたという情報がないことと組み合わせて無職だけの特権という風に考えたってわけね。それ、検証してみようじゃないのっ!!」


おっと。


エリアルちゃんはやる気だ。


ゴミを拾ってみようと息巻いている。


「ああ・・・。でも、この辺に落ちていたゴミはオレが全部拾っちゃったからない・・・かな?」


「えええええっ!!!!?一つぐらい残しておきなさいよ!!まったく。」


「あははははは。街からゴミが消えて綺麗になるのって気持ちいいよね。」


エリアルちゃんもゴミを拾ってみたかったようで、ご立腹のようだ。


でも拾ってしまったものは仕方がない。


「うぅ・・・。明日になったらどこかにゴミ落ちてるかしら。拾わないと・・・。」


「うん。そうだね。ゴミを拾うっていいことだと思うよ。ちなみにオレの場合は、ゴミを捨てるとExpとお金も減るんだ。こっちなら今でも試せるんじゃないかな?」


オレはもう一つの可能性のことを告げる。


これだったら今でも出来るだろう。


不要なものをその辺に捨てればいいだけなのだから。


まあ、Expとお金が減ってしまうけれど、そこはゴミを再度拾えばいいだけだし。


「う~ん。ゴミを捨てるのには抵抗があるけど・・・。興味はあるわね。」


エリアルちゃんはそう言ってお店の奥の方に走って行ってしまった。


捨ててもいいゴミを探しに行ったのだろうか。


「ねえ、あの子と何があったの?」


「え?あの子って?」


エリアルちゃんが店の奥に消えていくと、ミーシャさんが小さな声でたずねてきた。


あの子って誰だろう?


マコッチのことか?


「エリアルちゃんのことよ。」


「エリアルちゃん?別に何もないよ。装飾のスキルを教えてもらっただけだよ?」


なぜ、エリアルちゃんのことをそんなに気にするのだろうか。


装飾スキルを教えてもらっただけなのに。


「・・・そう。」


ミーシャさんはそう言うと黙り込んでしまった。


いったいなんだというのだろうか。


「あったわ!!」


微妙な空気が漂うミーシャさんとオレ。その空気をかき回すようにエリアルちゃんが戻ってきた。


手にはなにやら緑色のネバーッとした怪しい物体が入った入れ物を持っている。


「えっと・・・。それは、なにかな?」


「ちょっとね、調合のスキルも習得してみたんだけど失敗しちゃったのよね。だから、これを捨てるわ!」


「・・・。なんかやばいものじゃないでしょうね?」


オレは不安で思わずミーシャさんを見上げた。


ミーシャさんは苦笑をして小さく首を横に振った。


「大丈夫です。見た目はちょっと不気味ですが、なんの効果もありません。ただのちょっとネバッとした液体です。」


「そうですか。よかったです。」


安心した。


どうやら捨てても環境破壊とかにはならないようだ。


ただ、拾うとなったらちょっと面倒くさいことにはなりそうだけれども。


「いくわよ!!えいっ!!」


そう言ってエリアルちゃんは床に向かって調合の失敗物を思いっきり叩きつけた。


「ちょっ・・・!!」


まさか叩きつけるとは!!


思いっきり叩きつけたおかげで、緑色のネバッとした液体が割れた容器から零れて辺りに散らばった。


もちろん側にいたオレやミーシャさん、挙句の果てには投げつけたエリアルちゃんの服にもかかった。


ネバッとした緑色の液体が服につく。


「うぅ・・・。害は無いっていうけど、これじゃ服を洗わなければいけないね。」


オレはガックリと項垂れてそう呟いた。


オレ、この服しか持ってないんだよな。


買いに行くにもこの汚れた服で行くのもちょっと気が引ける・・・。


「うえっ。なまぐさっ!!!」


エリアルちゃんは零れた液体から香る独特の生臭さに鼻を抑えた。


ちょっと、自分でやっといてそれはないんじゃないかな・・・。


まあ、見た目が幼女だから許すけどさ。


「悪かったわね。服を汚しちゃって。でも、Expもお金も減ってないわ。私が捨てるんじゃダメなのね。ってことはゴミを拾ったってExpもお金も増えないってことかしら。」


おお。


エリアルちゃんが謝ってくれた。


まさか、こんなことになるとは思わなかったのだろう。


「Expもお金も減らなかったのか・・・。やっぱり無職だけなのだろうか。」


「その線が濃厚かもしれませんね。」


「あれ?でも、貢献度が減ってるっ!!しかも10も!!あり得ないっ!!貢献度あげるの大変だったのにぃ!!」


エリアルちゃんが急に叫びだした。


貢献度ってなんだろう?


そう思ってステータス画面を見てみたが、オレのステータス画面には貢献度なんて項目はなかった。


「貢献度は街に帰属した人だけが持つステータスなんです。貢献度が増えればその街での発言力が上がっていきます。」


「はあ。そうなんですか。」


貢献度というのがわからなくて首を傾げているオレにミーシャさんは説明をしてくれた。


つまり、その街の住民になればいいってことかな。


貢献度があがると発言力も上がっていくということは貢献度が高ければその街を治めていくこともできるのかもしれない。


「もうっ!せっかくの貢献度がっ!!しっかもくっさいし!いいことないわ!あ、ちょっとあなたたちも臭いから、うちで身体洗っていけば?着替えの服も用意するわよ。」


 


 


 


 


 


 


 


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