第3話
ひとまずお金のことはマコッチを頼ることにした。
男としてマコッチにお金を借りることに抵抗がなかったわけでもない。
しかし、このゲームお金がないとなにも出来ないのだ。
スキルを得るためには師範に師事しなければならないが、そのためにはお金が必要なのだ。ちなみに、職業にマッチしたスキルであればゲーム開始時に一つだけおまけとしてランダムで付与されるらしい。
もちろんオレは無職だから、おまけのスキルなんてなかったけれど。
で、スキルが無いことにはなにも出来ないのでお金を稼ぐこともできない。
お金を稼ぐことが出来なければ師事することもできないのでスキルを得ることもできない。
オレはひとまずマコッチにスキルを一つ得るための1000ニャールドを借りることにした。
ちなみにニャールドというのはこのゲーム内での通貨のことだ。100ニャールドあれば回復薬を一つ買うことが出来る。
初期ボーナスとして運営から配付されるのは5000ニャールドだ。5000ニャールドあれば最低限の武器や防具が購入出来るのだ。
「マコッチありがとな。必ず返すから。」
「気にしないで。あたしってけっこう稼いでるから。鍛冶師ってそれなりに稼げるんだよね。エンディミオン様によさそうな武器や防具も作れるから後であげるよ。倉庫に入ってるから今すぐにはあげられないんだ。」
マコッチってばお金持ちらしい。それでも幼女にお金を借りたままにしておくのは心情的にいただけないので必ず返そうと誓った。
「武器や防具も買わせてもらうよ。今はお金がないから無理だけど、スキルを得てお金を稼いで買いに行くから。」
「いいのに。鍛冶レベルをあげるために初心者用の武器や防具を量産してるからいくらでも支援するよ?」
「マコッチにばかり頼ってると男として情けなくなってくるからさ。でも、ありがとな。マコッチ。」
悪友だ、悪友だと言うけれどもマコッチはゲーム内ではとても頼りになる存在だ。現実でも小動物的で癒されるけれども。
「どういたしまして。でも、あたしにも下心があるんだからね!だから気にしなくていいよ。」
「え?」
下心ってなんだろう?
と思うより早くマコッチはかけていってしまった。
マコッチに下心なんて似合わない気がするけど。あいつプリン大好きだから、プリンくれってことかな?
って、ああ!!
スキル何を一番最初に覚えるべきか相談すればよかったなぁ。
「優斗ー!!ご飯だよー!!」
「わかったー!今行くー!」
スキルを何にしようか決めかねていると美琴姉さんがオレを呼ぶ声が聞こえてきた。
どうやらもう夕飯の時間のようだ。ゲームをやっていると時間が経つのが速いような気がする。
急いでセーブをするが、初めてこのゲームでセーブをするので少し手間取ってしまった。
ダンジョン内ではセーブ出来ないようだが、それ以外では好きなところでセーブすることが出来るようだ。
セーブし終わって立ち上がると、そこには美琴姉さんが立っていた。
「遅いから呼びに来たわ。優斗ゲームやってたのね。ゲームもいいけど、来年は受験生なんだから勉強もしっかりやりなさいよ。(ふぅ~ん。優斗ってばキャッティーニャオンラインやってるのねぇ。これはチャンスかも。)」
どうやらオレがゲームをしていたのはバレていたらしい。
美琴姉さんはなにやらこちらを見てニヤニヤと笑っていた。
「美琴姉さん何笑ってるの?母さんたちは帰って来たの?」
「うん。とっくに帰って来ているわよ。さ、早く行きましょ。」
美琴姉さんはそう言ってオレの手を抱き締めた。
「えっ!?ちょっ………。(胸!胸にあたってる!!)」
美琴姉さんの胸に触るとか、オレいいんだろうか。姉弟なのに。
っていか、すっげー弾力だなぁ。美琴姉さんの彼氏羨ましい。
そう言えば母さんたちに報告があるって言って美琴姉さんは帰って来たみたいだけど、まさか彼氏が出来ましたって報告か?
そうだよな。
美琴姉さんはちゃんとした会社に就職したし、他に報告といったら彼氏とか結婚とかだろ。まさか、転勤ってことはないだろうし。会社を選ぶ基準が転勤のないところって言ってたし。
やっぱり彼氏か。彼氏なのか。
まさか!結婚通りこして子供が出来たって報告じゃないよな。
「優斗?なにムッツリ考え込んでいるの?うふっ。もしかして、優斗の手に当たってる私の胸が気になる?」
「ちっ、ちげーしっ!!」
「えー、ほんとかなぁ?気になるんだったらほら、遠慮しなくてもいいのよ?」
「え、遠慮なんかしてねーしっ!!」
美琴姉さんわざとオレの手に胸をあててたのか………。なにがしたいんだよ。
遠慮しなくていいとか、なんだよそれ。
ニヤニヤと笑っている美琴姉さんをキッと睨み付ける。
「か、からかわないでよね!」
「ふふっ。優斗ってばかーわいいー。」
「ふあっ!!?」
オレの反応に気をよくしたのか、美琴姉さんがにっこり笑いながらオレの頭を優しく撫でてくる。その撫で方がとても気持ちがいいのは美琴姉さんには内緒だ。言ったらまた嬉しそうに笑いそうだからな。
☆☆☆
「美琴の手料理美味しいわねぇ。彼氏に振る舞ってるのかしら?」
ふふふ。と笑いながら母さんが言う。
確かに美琴姉さんが作ってくれたハンバーグはふっくらとしていて、とても美味しい。
噛んだ瞬間に肉汁が口の中に溢れ出す。
いつの間に美琴姉さんはこんなに料理が上手くなったのだろうか。
一緒に暮らしていた時はハンバーグを作ってもすぐ焦がしてたし、ふんわりしていなくて固かったのに。しかも肉汁も出きってしまっていた。
やっぱり彼氏のために練習をしたのだろうか。
「あはは。仕事が忙しくて彼氏どころじゃないわよ。優斗に食べてもらいたくて練習をしたのよ。」
「あら、まあ。あなたたちは仲がいいわね。」
「へ?オレ?」
「ふふふ。」
美琴姉さんが料理を上達した理由がオレに食べさせたいとか。なにそれ、照れるじゃん。
「てっきり今日、美琴から話があるってきいて彼氏のことかと思ったら違うのね。なんの話なのかしら?」
夕飯を食べ終わるか終わらないかというときに急に母さんが美琴姉さんに尋ねた。
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