誇りの上で

町田翔太

あるく

どれくらい歩いただろう


肩に食い込んだバックパックを揺らし、ぼやけた街灯が並んでいる


俺は泣いているのか


汗なのか涙なのか分からないのもが瞼の中に溜まっていた


異臭を放つこの身体は都心から離れたベッドタウンを歩いていた


26時の多摩に俺だけの呼吸が響く


街灯と街路樹が等間隔に並べられ、天国を嫌うように坂を登り曲がる


森に迷い坂を下り街が近づく

太陽の街八王子


俺の身体を光が照らす


タクシーが本日最後の客として俺を選んだみたいだ

横を通り過ぎ10m先で止まった


俺はその車が憎らしい

俺は歩くのだ

運転手の顔が嫌らしく見える

その顔を睨みつけ抜き去る


タクシーは50m先のバス停で反対方向へ曲がっていった


テールランプの残光が寂しく焼き付いてしまった


2019 06 14

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