置き場

水無月 深夜

終末音新世界

 約30年前、世界各地上空に現れた黒いゲート。

 そのゲートを介して見たことも無い黒い生物が現れ地上へと降り立った、姿形は様々、顔は黒いヘドロで認識は不可能、形態は四足歩行もいれば二足歩行ある、さらには節足動物や軟体動物みたいな黒い生物も見受けられた。

 最初は静止した状態で無害かと思われたが突然、空に鳴り響く不協和音。

 その音と共に黒い生物は動き始め人間を喰い殺し、刺し殺し、引きちぎり、叩きつけ踏み潰し始めた、黒い生物は通常の銃火器はおろか戦車や地対空ミサイルでさえも効かず、世界はパニック状態に陥ったがそれと同時にとある研究所が滅亡寸前と思われた世界をギリギリの所で救った。

 その研究所とは「最上研究所」。

 最上研究所は女性研究者でありただの人間には変わりない見た目、しかし彼女自身が戦うのではなくそれ以外のだった、それは人間の見た目をした機械兵士、それはエルフ耳の人間、それは人間の平均身長ある二足歩行する人型の蜥蜴、それは茶色い体毛が体全体を覆っている人型の生き物、上半身は一般男性で下半身は馬の生き物、人間とはかけ離れた生き物が多数現れ、黒い生物に対抗する力を唯一持っていた、しかし最初は押し返すと思われたが徐々に巻き返され今現在では全世界約7割方土地や人々を失った。


『異界ゲート出現 出現場所はーー』

 室内に突如鳴り響くアラート音。

「うんあぁ…、やっとか次はどんな奴だろう」

 研究室で白衣を着た赤い長髪の女性が椅子の上でだらしなく寝ているとけたたましく鳴るアラート音で起きた。

「博士。準備を、恐らくこの場所はゲートが近くにあるため異生物が多数見受けられると思います」

 慌てる様子もなく落ち着いた雰囲気で研究室のドアを開け博士と呼んだのは白いワンピース姿が燦然と輝く金髪をよりハッキリと際立たせていて身長はそれほど大きくはなくまだ子供に近かったが言動が大人びている、少女だった。

「んぁ…、μちゃんか、今はまだ活動期間だっけ?」

 白いワンピース姿の少女はμ《みゅー》と呼ばれ小さく「はい」と答えた。

「何曜日?」

「第三曜日です。観測では第三、第四が…」

「あー、いい分かったから。はぁ…、じゃあ準備するか…」

 白衣の女性はまだ寝起きでゆっくりと立ち上がった。

「博士。援護チームは?」

「強襲チームは戻ってない?」

「はい、おそらく南米まで飛び帰還するのは早くて明日かと…」

「分かった、じゃあ先に援護チームに客人を護衛してもらい私があとから向かう」

 軽く背伸びをしながらストレッチをしつつμに指示を出した。

「了解、私は出撃は?」

「んー、悪いけど防衛お願い出来るかな?」

 ストレッチが終わりμの方を向くと博士と呼ばれている白衣の女性は申し訳なさそうな顔をしてμは「はい」とだけ答えた。

「本当にごめんね、アイツとの約束なんだ」

「またあの人の話ですか、私には分からないですが博士の言葉には嘘偽りはないので信じています。お任せ下さい、私は博士が戻るまでの間はしっかりとこの場をお守りするので!」

「ん、よろしく頼むよ。じゃ行ってくる」

「はい、いってらっしゃい」

 博士と呼ばれた白衣の女性はμの頭を軽く撫でて研究室から出て行った。


「うわっ!ととっ……」

 突然、空中に放り投げだされたと思ったらたいした高さはなく飛び跳ねる程度の高さから落ち、尻もちをついた。

「あいたたた…、全くいきなり飛ばすなよ…、あれ?…えっと…」

 誰かに蹴られて放り投げられた訳でもなく上から落とされた訳でもない、ただ空中に突然に放り投げられた。しかしその経緯を思い出そうとしたが思い出せなかった。

「思い出せない、何故だ?いや所でここは…」

 辺りを見回すとそこはビル群が建ち並ぶ場所だったが所々では崩壊して草木が多い茂り廃墟の場所と化していた。

 そして極めつきは空に大きく禍々しい黒い渦のようなものが蠢いていた。

「気持ち悪…」

 空に気を取られていたら背後から呻き声の様なものが聴こえ振り返るとそこには四足歩行で黒くヘドロ状の頭が2つで明らかに敵対心をむきだしている生物が3頭、4頭と続々と現れた。

「グルルルゥ」

「逃げた方がよさそうだな…」

 恐る恐る黒いヘドロ状の生物とは真逆の方向に足を向け一気に走り出すと同時にヘドロ状の生物も追いかけ始めた。

「やばい、かなりやばい!死ぬ!だれか!だれかーー!助けて下さーい!!」

 助けを求めつつ大声を出しても返事は全て背後から追いかけてくるヘドロ状の生物の「ワンワン」とは言い難い獣の並の鳴き声だけだった。

「ーーやれやれ、まさかの客人がこんな雑魚とはな…」

「えっ……」

 するとどことなく声が聞こえたと同時に背後から現れ黒いヘドロ状の生物の前に立った。

 その背中は赤黒いマントに黒い逆立った髪の男性で高身長で腰には白銀に輝く剣と白銀に輝く銃が下げられていた。

「あ、あの…」

 足を止め「危ないですよ」と注意をしよう思った矢先、ヘドロ状の生物は赤黒いマントに何も躊躇もしないまま勢いの如く数匹飛びかかった。

 赤黒いマントの男性は剣を抜き目にも止まらぬ速さで飛びかかってきたヘドロ状の生物を切り刻むとヘドロ状の生物は周囲にびちゃびちゃと音を立てそのまま煙となって消えた。

「下がっていろ、殺されたくなかったら」

「は、はぁ…」

 言われるがまま一歩下がると赤黒いマントの男性はそのままゆっくりと前身してヘドロ状の生物を切り刻み始めた。

 ただその光景を呆然と見ているとヘドロ状の生物の上から影、否またヘドロ状の生物が落ちてきた、しかし次は二足歩行で約5m近いヘドロ状の生物で頭に付いている二つの目が見下ろしていた。

「チッ、巨人級か…」

 赤黒いマントの男性が舌打ちする。

「じゃあ俺の出番かな?」

 ゆっくりと背後から歩き抜き去ると赤黒いマントの前に出たのは一般成人とは変わらない身長で体色が青色で茶色いボロボロの短パンしか履いてない訳の分からない人物が現れた。

「ムカつくがオレは疲れたから先に帰る、あとは頼む」

「お易い御用」

 短パンの人物は両拳を合わせるとみるみる体全体が大きくなり始め気づいた時にはヘドロ状の5m近い生物と同じぐらいの大きさになった。

「なんなんだよこれ、一体なにが…」

 呆気に取れた瞬間、まだ残っていた四足歩行のヘドロ状の生物が飛びかかってきたがギリギリの所で赤黒いマントの男性が切り刻んだ。

「安心するな、まだ終わってない」

「すみません…」

「じゃあ俺は帰るからあとは頑張れよ」

「うぇっ!?ちょっと待ってくださいよ」

「あん?」

 終わってないと言っておきながら自分は帰るとゆう身勝手さに驚き反射的に止めてしまった。

「いや、あの〜……」

 最後まで助けて欲しいとはとても言いづらくまた他の言葉を見つけようとしたがあまりにも頭の処理が追いつかず上手く言葉が出せなかった。

「まさか?お前まだ助けてもらいたいと?」

 言いたい言葉が向こうから投げてきた。

「とても言いづらいのですが…」

「はぁ…」

 申し訳なさそうな顔をすると赤黒いマントの男性は一つため息を吐く。

「嫌だ」

「え?」

 まさかの言葉だった。

 しかし、次の瞬間にはその言葉が否定するかのようにまた一人現れた

「ダメだよそんな身勝手な行動は〜」

 その場には似つかわしくない女性の声、現れたのは白衣姿で赤い長髪の女性、博士と呼ばれた女性だった。

「最上、それは俺の勝手だろ」

「レオ君、一応味方がいるんだからちゃんと連携をとらないと、それに今回は客人が来たんだから最後まで守り続ける任務でしょ」

「レオ君は止めろ、クソうぜえ」

 はたから見たら母親に怒られる息子。

 もはや追われていた雰囲気を忘れさせる程その場に似合わない雰囲気が漂っていたが大きな音を立ててビル群に倒れる巨人、体色が青色の巨人の方が押されていた。

「ありゃ、押されてる?」

「見りゃ分かるだろこのバカ!」

「バカと言ったな!バカと言ったレオ君がバカなんだよ!バーカ!」

「うっざ!!」

 女性の方は意外と子供なのか言動が幼稚じみていたがそれよりも赤黒いマントの男性の方はさっきまでとは一転して雰囲気が全く違った。

「仕方ない、聞こえるエディア?」

 耳につけた通信機から誰かを呼ぶ女性。

『はい、しっかりと聴こえます。博士と言い争ってるバカと客人も』

「ふっ、バカと言われてるし」

「うるせえ!こっちも通信機付けてるから聞こえてるわ!てかお前絶対にワザとだろ」

 なんだこのアットホームな雰囲気、通信機の内容は聞こえないが明らかに赤黒いマントの男性がバカにされてる様子が分かった。

 だがしかし、その雰囲気は急に変わった。

「エディア。装填を双撃に、巨人級の両目を潰せ」

『了解』

「レオ君。周囲に残っている残党を排除、周囲5kmの安全を確保」

「レオ君呼ばわりは嫌いだがスイッチが入った時は嫌いじゃねえ、了解」

「アリュス。聞こえる?」

「博士?いつ来たの?」

 体色が青色の巨人がヘドロ状の巨人に押し倒されながらも答えた。

「今さっき、アリュスはエディアの援護のち巨人級を叩き潰せ」

「了解」

 女性は凛とした声で指示を出すと赤黒いマントの男性はその場から消え去った、そして一発の発砲音が聴こえるとヘドロ状の生物の巨人のこめかみに撃ち込まれたのち小さな爆発を起こして仰け反った、それを見計らい続けざまに一発の発砲音が聴こえる、それは巨人の両目に撃ち込まれた爆発して両目が潰れた巨人はその場で悶え苦しみだした、そして押し倒されていた体色が青色の巨人は立ち上がり思いっきり殴りつけ、叩きつけたのちそのまま頭を踏み潰した。

「ふぅ、終わりかな?」

 眺めていただけで全てが終わった。

「大丈夫かい?」

「あ、ああ…」

 何も言葉が出ない、不思議な出来事以上に何を言えばいいのか分からなかった。

「ところで君は何処の世界からやってきたの?」

「何処…?だろう、分からない」

 急な質問、しかし考えたが分からなかった。

「分からない?おかしいな、初めてだ」

「初めてと言われても俺も君と会ったのは初めてだから…」

「ああごめんごめん、私は最上もがみ 最中さなか。この地球を代表するゲートキーパー、最後の砦の代表さ。君は?」

「俺?俺は…えっと……」

 記憶がない、もとい思い出せないが正しい。

 気づいたら放り投げられたようにこの場所にやってきて変な生物に追い回されて助けられた。

「分からないの?自分のことなのに?」

「ん、ああ悪いけど分からないましてや名前も何もかも全て」

「こりゃ参ったな〜」

 最上は頭を抱えた。

「見た感じ恐らくだけど人間だよね?服装も一般人と変わりない無地のTシャツに深緑色のズボン、髪はそれほど乱れてない。意外とあっさりしてるわね」

「あっさりと言われてもさっきまでおかしな事に巻き込まれていたんだけどな…」

「まぁいいけど何か思い出せないの?」

「何かと言われてもな〜…ん?」

 ズボンのポケットに何か入ってるのに気づき取り出すとそれは小さな長方形の黒い箱の様な物だった。

「あっ、それってまさかUSB?懐かしい〜」

 最上は目を輝かせながらUSBと言われた小さな長方形の黒い箱を見つめた

「USB?」

「うえっ…、君まさかこれもしらないの?本当に人間?」

「いや全く」

「なーんか残念だな、まぁ一応異世界の客人だから帰れとは言えないしそもそも無理だし仕方ないから招き入れるしかないか〜」

 最上が腕を組み飽きれていると。

「ふぃ〜、終わった終わった」

「任務完了」

「周囲に残敵なし、最上終わったぞ」

 それぞれが安堵の息と肩を回したりと疲れた顔をして戻ってきた。

 さっきまで巨人になっていた体色が青色の人物は最初に現れた時と同じ大きさまでに戻っていた。

 三人のうち一人が初めて見た顔だった、髪はエメラルド色の長髪で顔は美形男子で耳は横に長かった。

「エディア、アリュス、レオ君お疲れ様」

 アリュスは体色が青色の巨人になれる人物。

 レオ君は赤黒いマントの男性。

 そして残ったエディアは美形男子。

「レオ君はやめろ」

「ふっ、まだまだ子供だな」

「ちょっ、二人共」

 二人がいがみ合ってるのをアリュスが止めようとする。

「とりあえず帰還する、犠牲者はなし。まあ当然だよね、超エリート集団だからね」

「ふっ、当たり前だ」

「妹も忘れては困るよ博士」

「当たり前だよ!」

 三人は誇らしげに笑った。

 そして一人の女性と三人の男性、そして一人の客人は帰還した。

 研究室にて三人の男性と二人の女性に一人の客人。

「で?コイツは記憶喪失なのか?」

 赤黒いマントの男性レオが白衣の女性の最上に聞いた。

「多分」

「多分って、これは確実に記憶喪失でしょう、役に立つのですか?博士」

 美形男子の長耳のエディアが飽きれていた。

「う〜ん、役に立つかはどうかはコレを見るしかないが…」

 最上はUSBを取り出した。

「じゃあさっさと見ようぜ…と言いたい所だが最上の言い方を見る限りどうらや難しそうだな」

 レオが鋭い目付きで最上を見た、最上は顔色を変えずに答えた。

「うんやはり君は恐ろしく鋭いね、どうやら中の情報は壊れてる。修復には時間が掛かる」

「だろうな、まあいい俺は部屋に戻る」

「レオが戻るなら私も戻ります、妹の帰りは遅いと思うので」

「じゃあ俺も」

 三人は研究室から出て行った。残ったのは最上ともう一人女性、ワンピースを着た少女と客人だけだった。

「悪いね、こうゆう人達いや種族しかいないから」

 最上が申し訳なく言った。

「ああいや、なんか本当にこちらも申し訳ないです、何にも覚えてなくて、でも本当に覚えてなくて何を言ったらいいのか…」

「いや本来であれば言うべきなんだろうがちょっとこちらの事情もあるから全て話す事は出来ない」

「仕方ないですよね、何にも知らない人物に情報を言うのは」

「それもそうなんだが…う〜ん……」

 最上は何か違う事情で悩み始め腕を組み天井を見上げた。

「まあいいか、そういえば名前も覚えてないんだよね?」

「恥ずかしい事ですが覚えてないです」

「私でよければ一応仮名は与えるけど思い出したら本当の名前に戻しても構わない、けどここにいる以上名前はないと少し苦労するから名前は必要だよ、これもう強制みたいなものだけどいいかな?」

「構わないです、図々しいですけど変な名前は止めて下さいね」

「大丈夫、名前はそうだな昔はこの苗字が一番多かったからこれでいいかうん。君の名前は『佐藤』でいいかな?」

「佐藤、ですか。案外普通ですね」

「うぇ…君は何を想像していたんだ。まさか私が本気で変な名前を付けると思ったのか?」

「はは……」

 記憶喪失の客人は新しく名前を貰い、佐藤と名付けられた。

「さっそくだが佐藤君はこのμちゃんに研究室内を案内してもらってからまたチームが再結集してから会議を始める」

「あの三人以外にもいるんですか?」

「当たり前さ、μあとは頼んだ」

「了解、博士」

 ここまで一切喋ることもなかった最上の隣に立っていた少女は指示されたとたんに口を開き研究室のドアの前に立ち開けた。

「佐藤様、こちらです」

「あ、ああよろしくお願いします」

 佐藤は少女の見た目に反して落ち着いた雰囲気と大人びた口調に驚きつつも後を追って研究室を出て行った。

「さて、解析を始めますか」

 佐藤から貰ったUSBを研究室内に置いてあったPCに差し込んだ。

「最上」

 PCを見ていると背後から最上を呼ぶ声が聞こえた。

「レオ君か、やっぱり気づいちゃった?」

 背後に立っていたのはレオだった、レオは少し怒り気味の表情だった。

「当たり前だ、お前ら人間共は嘘をつくのは下手だ。特に最上はな」

「ありゃりゃそれは残念、エディアとアリュスは?」

「当然、分かっていた」

「まあだろうね」

 特に驚く様子もなく最上はPCをずっと操作したままレオに一切振り向かない。

「そんな事よりアイツの事だ」

「佐藤君?」

「ああ、佐藤と仮名を名付けた客人の事だ。何を知ってる?」

「コレを見れば分かるんじゃないかな?ヴァンパイア・レオード君」

「なぜ本名をそこで……」

 ヴァンパイア・レオード、レオの本名で彼は吸血鬼種ヴァンパイアだった。

 レオは最上がとある画面をPCに映し出しレオに見せるとレオは驚き目を見開いた。

「驚いた、吸血鬼種ヴァンパイアでもそんな顔をするんだ」

「お前、いや最上博士。これは一体どうゆう事だ?」

「普通ではありえない事だよ、全く恐ろしいものだな。」

 PC上に映っていたのは佐藤と名付けられた客人のプロフィール。

 生年月日と名前、職業など個人情報あらゆるものがそこに映し出されていた。

 レオと最上が驚いたのは彼、佐藤の生年月日でも職業でもなかった、名前だった。

「なんで…苗字が『最上』なんだ?偶然か?しかも『すぐる』ってのは…」

「ーー私の弟だ」

 最上が答えた。

「見てみろ、生年月日は生まれて数十年後の今日を指している」

「はぁ?じゃあ何?コイツは生まれた年にこっちに来たのか誕生日プレゼントか?いや待て辻褄が合わない、そもそも最上には弟なんていないはずじゃあ…」

「ああ、いない『傑』とゆう名前は存在しない」

「なら本当に最上の弟なのか?」

「確証はない、だけど弟だと断言は出来る」

「理由は?」

「私の両親が次に生まれる子供の名前は『傑』にしようと話していた事があった。しかし叶わず流産となった」

「死んだならいないはずじゃねえか、なんでいるんだよ、同姓同名と言いたいのか?」

「同姓同名であってもこれは本当に弟だ、これを見ろ」

 PCの画面を下にスクロールしていくと職業についた経歴等がこと細かく書かれていた。

「職業は研究員、しかも最上研究所。そして最上財閥の子供、私の弟として誕生している、住所も間違いはない」

「間違いはないのか?」

「ない、恐ろしいたまらなく恐ろしい」

 最上は両肩を掴み震えた。

「最上博士。これは彼に伝えるのですか?」

 レオが冷静を装い丁寧に最上に聞いた。

「君は本当に面白いな、性格が分かりやすいよ」

「あくまで彼を本当に人間と見た場合、この世界に置いては無力過ぎる。足でまとい」

「また私の選択で決めなきゃいけないのか」

「前回は軽率過ぎただけの事、今回は深く考える事も出来るが時間が無い、早めの決断をお願いします」

 レオは最上に頭を下げその場から消えた。

「……平行世界パラレルワールド、まさかこうなってしまうとは…」

 最上はため息を吐き頭を悩ませた。

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