もしも魔法が使えたなら
咲坂 美織
プロローグ
「ねぇ、もし魔法が使えたら何魔法だと思う?」
「いきなりどうしたの?」
前の授業が終わり、さて次の授業は、と机の上を片付けていると前の席の友人がくるりと振り返ってこう言った。
「いや、授業中暇でなんかぼけーっと考えてたの」
「授業を聞きなさいよ」
たしかに前の授業は数II。文系の典型と言われるような頭脳の持ち主である友人なら授業中ちょっとぼけっとしてることもあるかもしれない。……人のこと言えないけど。
「そうだねぇ……」
「お、乗り気になってきた?」
「なんの話?」
席の前後でじゃれていると、少し離れた席の友人が寄ってきた。
「もしも魔法が使えたら、何魔法が使えると思う? って」
「ファンタジーだねぇ」
なんだそれ、と笑う友人たちを眺めながら私はふむ、と考える。
「あんたは召喚魔法とか使役魔法とか使いそう」
「いや私が猫飼ってるからって安直すぎない?」
「んで、君は水魔法とか? 薬品入りの」
「あたしはマッドサイエンティストかい」
友人たちのあきれた目線をいただきながら私はもう一人の友人へと目を向けた。こちらを気にしてはいるが幼馴染につかまって来れないらしい。
「あっちは精霊魔法とか?」
「あの幼馴染召喚されそう。んで、そいつ最強」
「たしかに」
三人で顔を見合わせてけらけら笑う。
「女三人でなんの話してんの」
「イケメンはあっち行け」
「俺に対する当たり強すぎない……」
後ろの席のイケメンが何か言っている。しょぼくれた顔してもイケメンはイケメンだから腹立つな。
そんなイケメンの顔を眺めつつふむ、と考える。
「
「それって褒めてる?」
嫌そうな顔をするが、私たちは気にしない。にやにやと笑うだけである。
「それで、君は? あっちは召喚魔法に水魔法に精霊魔法でしょ? 君はなんだと思うの?」
「私は……」
私は、私がもしも魔法が使えたなら……
「授業始めんぞー。そこのハーレム解散しろー」
「ヤキモチは見苦しいですセンセー」
イケメンが何か言いながら自分の席に戻っていった。
友人たちもそれぞれあとでね、と声をかけながら席に戻っていくのを手を振って見送った。
「一次が終わったからって気抜くなよ。さて、この前の模試の解説から始める」
まずは正答率が低かったところから解説するぞ、と先生が黒板に向かったそのとき。
「……君はさ、聖魔法って感じだよね。聖女さま、みたいな」
「……は?」
後ろから小さな、呟くような声が聞こえた。
思わず振り返る。
呟いた張本人は振り返った私の顔を見てにこり、と笑った。
「そこ、仲良いのは分かるが授業中までとはいい度胸だな」
慌てて前を向くが、教壇の前には目を据わらせた先生。
あとで職員室、と言って再び黒板に向かった先生にはいと答えながら今度こそ授業に集中した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます