キミの笑顔が見たいから~いつか貴方と出逢えたときにanother story~

第1章

キミのころころ変わるその表情に、僕はいつしか心を奪われていたんだ。けれど一番見たいのは、キミの咲かす満開の笑顔。

            *

僕の過ごす日々には、いつだってコーヒーの香りがする。この香りが一番心を落ち着かす。どんなに悲しい出来ごとがあったって、辛い出来事があったって、僕の心を優しく包む優しい香り。ああ、今日もこの香りと一緒に一日が始まる…

僕は都内のカフェで働く25歳の高橋篤也。このカフェでは大学生の頃から働いていて、店長の三好さんに腕を見込まれ、大学卒業と同時に就職した。まさか自分がカフェで働くなんて想像もしていなかったけれど、就職を決めた時は新たな自分になれる気がして心が躍ったのを今でも鮮明に覚えている。それからというもの、店長である三好さんの温かさに救われながら楽しく働かせてもらっていた。

カフェにはいろんな人が来る。眉間にしわを寄せながらブラックコーヒーを飲むサラリーマン、恋人と一緒にテスト勉強をする制服を着た女子高生、新品のスーツに着せられているような新社会人。春は特に、誰もが新たなベールに身を包まれ自分の毎日を一生懸命に生きていた。そんな中、僕は最近、ある人を知らず知らずのうちに目で追っていることが多い。その人はいつも、決してオシャレすぎずどこまでもシンプルで、けれどどこか品のある服を着て、ミディアムヘアーを内にワンカールだけ巻いて、パソコンに向かっていた。僕がその人を自然と目で追ってしまう理由。それは彼女の表情だ。彼女の表情は、面白いくらいにころころと変化する。真剣な眼差しでパソコンを見つめていたと思うと、次の瞬間には眉をひそめて難しい顔をしている。かと思えば電話が鳴って、出た瞬間にキラキラした目で会話をしている。こんなに表情が豊かな人に、僕は初めて出逢った。でもあの人、どっかで見たことあるな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る