第3話 オタクで何が悪い俺は27歳だ

マジやべぇ……、この子まるでゲームのキャラ雰囲気ありありじゃねぇか。


正直言って可愛いい……いや、まるで2次元の百合ゲー彼女が、現実の女性として表れたかのような感覚にとらわれてしまいそうになるほど、その子は。


可愛いと思った。


髪は肩にかかるか、かからないか位の、ボブカット風の赤身を感じさせる髪。


身長は155㎝くらいかな。

意外と切れ長で瞳がくっきりと映える目。

鼻がスッと伸び先が少し丸い感じが可愛い。

口元は小さく薄くもなく厚くもない、ほど良い感じの唇。


少し薄めのブラウン色の上着に白のシャツが映える。

そこに赤と白のストライプのネクタイ。

格子柄のスカートは膝すれすれのあたりまである。

制服の上から見てもスタイルはかなり均等が取れている。


何より思わず目が行ってしまう、女の強調部分。

巨乳とはいかないが、制服を着てる状態でも結構な大きさであることがうかがえる。


「なにじろじろ見てんのよ!」


「あ、いや……ごめん、あまりにも可愛いんでつい」

「ふぅーん、そうやって初めに褒めて、その気に向かわせようとする戦法なんだ」


「だ、だから俺は生身の女には興味はねぇってんだろ」


「お邪魔します」と言い、部屋に入るなり彼女は絶句した。


「うっ! 何これ……もしかしてあんた変態オタクなの?」


部屋の壁に貼りつくされた2次元女の子たちのポスター。スチール棚に所狭しと並び置かれている数々のフィギア。


どれもこれもアニメとゲームの女子キャラだ。


「おたくで何が悪い!」

こういうときは開き直るのがよい。


「いい歳してんのにまだこんなのにはまってんだぁ。おじさんもう30は超えてるんでしょ」


「馬鹿な!! 俺まだ20代。30なんかじゃねぇ。27だ!」


正直ダメージは大きい。今の一撃はかなり効いた。俺はそんなに老けて見えるのか!!


「でもさぁ、四捨五入すると30じゃん。やっぱおじさんだよ。それも2次元の女の子にドップリとはまっている変態おじさん。だから生身の女には興味が無いって言ってたんだ」


「おう、そうよ! 俺は2次元の女しか愛せねぇんだ。だから生身の女にはこれっぽっちも興味がわかねぇ。それにだ、俺をおじさん呼ばわりするのはやめてくれ。意外と胸に刺さる」


「だって私から見ればおじさんでしょ10も歳離れているんだもの」

ま、まぁそういわれると妙に説得力がある。


10も離れているとJK側から見れば、俺も立派なおじさんなんだろう。


「じゃぁなんて呼べばいいの?」


「あ、そう言えば俺の名前まだいってなかったな。山田浩太やまだこうた『27歳だ!!!』(ここは再度、最大限に強調した)。山田でも浩太でもどっちで呼んでもいい」


「どっちでもいいて言われたって、名前で呼ぶ訳にいかないじゃん。私達さっき出会ったばかりなんだからさ。やっぱ『山田さん』て呼ぶのが普通じゃない。お隣さんとしても」


妥当な回答が卒なく帰ってくる。

此奴本当に女子高生か?


「好きにすればいい。そっちは『梨積なしづみさん』でいいよな」


「出来れば私は名前で呼んでもらえると嬉しいかな。繭玉のまゆ、簡単でしょ。それに苗字で呼ばれるのあんまり好きじゃないし。繭って呼び捨てにしてください」


俺は苗字で自分は名前か……。ま、俺にしてみればどうでもいいことなんだが、これくらいの子って、こんな感じで呼び合っているんだろうか?


それとも俺が年上っていう事でもあるからか?

でも、お互いに名前で呼び合うのもなんだ、その、付き合っているみたいで違和感がある。


「名前で呼ぶのか……なんか照れ臭いな」


「別に私がその方がいいって言っているんだからいいんじゃない。それに多分同じ事考えてたんじゃないかなぁ。お互い名前で呼び合うのはなんか付き合っているみたいだって」


思わずぎょっとした。


「なんで分かった」

「やっぱり、山田さんからなんかそんなこと考えてるんじゃないのかなぁって、言うの感じてたから」

「それってやっぱそんなオーラ的な何かが、俺から出ていたという事なのか?」

「オーラ? 何それ、うけるぅ! だって山田さん物凄くわかりやすいんだもの、顔にその表情ありありと出てるから」


マジかぁ! もしかしてそういう事なのか? 俺が部長の目の敵にされているというのは。つまりは、あの大嫌いな部長の事をこの俺はこの顔に表していたという事なんだ。それじゃぁ目の敵にされわなぁ。


「はぁー、まぁいいやその通りだよ。じゃぁ繭って呼んでいいんだな」

「ええ、いいですよ」

にこらとして答える繭の顔は、2次元キャラとは違う何かを俺に植え付けてくるような感じがする。


繭は床にぺたんと座り、俺が差し出した毛布をひざ掛けの様にして掛け、改めて俺の部屋の中を見回している。


俺はベッドに腰かけていた尻を上げ、キッチンに行き冷蔵庫を開けた。

「これから何か作るんですか?」

「あ、いや。体冷えてるだろうと思って何か温かいものを……ミルクティでいいか?」

「そんなお構いなく」

「いや、少し冷えて来たし俺も飲みたいからな」

「そうですか、それなら遠慮なく。ミルクティーでいいです」

「ああ、甘めだけど大丈夫か」

「お好きなように」



長野と飲んだ後全て吐き出して、シャワーを浴びたらいい加減酔いも冷めて来た。やっぱり今日は冷え込んできている。


ええ、っと確かカップはもう一つあったな。


なにせこんな2次元オタクの部屋に来る奴なんかそうそういる訳がない。食器もほとんど俺一人がまかなえるくらいの最低限の物しかない。


でもしかしなんだ、この俺の部屋で女子高生とこんな真夜中に二人っきりでいるというのは、何かとてつもなく不思議な感覚に襲われる。


それが性的な欲求である物ではないことは確かだ。

いや、むしろ性的欲求であった方が、俺はなんだか救われるような気がしてきている。


ちらっと見る繭の後姿。

本当にこの子は実在する子なんだろうか? もしかして俺はあまりのストレスで今まで、俺が作り上げた妄想と話をしていたんじゃないんだろうか。


ミルクパンに牛乳を注ぎ入れ砂糖と蜂蜜、紅茶のティバックを入れ、沸騰する寸前のところで火を止める。


軽い湯気と共に甘い香りが立ち込めた。


不思議とこっちの心が、安らぐような気がするのはなぜだろうか。

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