あなたの部屋に私のパンツ干してもいいですか?
さかき原枝都は(さかきはらえつは)
はじめましての彼女は可愛いと思った。
第1話 2次元の女をこよなく愛する男
もし、隣に越してきたのが可愛い女子高生だったら、どうする?
彼奴とはあることがきっかけで共同生活をすることに。
彼奴と俺の境界線は部屋の壁一枚。
しかし、彼奴は自由に俺の部屋に出入りが出来る。もちろん俺も同じだが……。
迫る女子高生の誘惑。
でも俺は生身の女は愛せないんだ。いや、愛してはいけないと心が言っている。
18歳の現役女子高生を、もうじき30を迎える27歳おっさんサラリーマンが愛してもいいんだろうか……。
部屋と部屋を仕切る壁。その壁が唯一の境界線。
乗り越えてはいけないのか?
その壁を取り払った時俺たちの先にある未来は……。
どんな未来何だろうか?
ゴト……ガタ、ガタガタ
バタン!
「ん!」
なんだぁ、朝から隣
空き部屋だったのに……。誰か引っ越して来たのか?
今何時だよぉ……。
11時がぁ。寝みぃ。
それもそのはず仕事が終わって帰宅したのが11時過ぎ。
それからコンビニ弁当食べながら配信したてのアニメを見て、そのままゲームになだれ込んで、意識が途切れたのが午前5時くらいだった。
「しかしうるせぇなぁ」
と、思いながらも抗議する勇気も、いや動くこと自体面倒でその気にさえならない。
しばらくすると隣からの物音はピタリと止まった。
「やれやれこれでゆっくり寝れる」
どたん、ばたん。ドン!
な、なんだなんだ。物凄い音がしたが、大丈夫かぁ。
まぁ1階だから、下の住人には響かねぇけど、でもようすげぇ音だったな。
「いったい何やってんだ!」
気になるところはあるが、そこは他人様の事。俺には関係ない。
ここに住みだして早2年。
学生時代に住んでいたボロアパートに就職後も居座っていたが、あまりのぼろさについに取り壊しが決まってしまい、あえなく退去。
実家に帰る気なんてもうとなかった俺は、一時しのげるアパートを探し今ここに居座っているという訳だ。
就職してからもう5年。今は中堅どころのシステム会社で勤務しているが、毎日上司に怒られながらもなんとか続いている。
出来ることなら、仕事も……この住まいともおさらばして新たな人生に踏みかえたいところだが、何となくめんどくささが先に立ってしまい、今の生活に怠惰しきっている状態だ。
とは言うものの、俺はこよなくアニメが好きで、ゲームが大好きだ。
特に百合ゲーは大の好みだ。
しかもだ、2次元の女の子に囲まれているこの空間が今、俺にとっての唯一の憩いの場でもある。
男27歳。彼女いない歴年齢と同等。多分……? そう言う事にしておかなければ今はやっていけない。
しかし、俺には2次元の彼女たちが大勢いる。
現実の女なんて必要も……この際不便はない。
男の生理現象は2次元の女の子たちと、この右手があれば処理は出来る。
はずだった。
あの子が俺の前に現れるまでは……。
◇◇◇◇
お隣さんが引っ越してきてから、3日間なんの音沙汰もない。
ま、どこかの野郎だろう。そんな奴から引っ越しの挨拶されても「あ、そうですか」とだけしか言わんだろうし。この際どうでもいい。
最も、この3日間部長から早朝出勤を言い渡され、帰りは残業。
ブラックもいいところだ。
家に帰ってくれば、疲れ果て真っすぐベッドにこの体が倒れ込んでいく、そんな3日間を過ごしていた。
「ああ、もう嫌だ! こんな会社辞めてやる。あのくそ部長。俺をなんだと思ってんだ! そもそも何で俺だけこんなにどやされなきゃいけねぇんだよ」
「まぁ、あれだそのなんだ、お前は目に付きやすいんだよ」
「目に付きやすいって? なんでだよ。この俺のどこがそんなに目に付きやすいんだ」
「なんていうかさぁ、雰囲気と言うか。外見はまぁ、そんなに目立つ訳じゃないんだろうけどね。多分態度だなぁ。そう、お前からにじみ出るオーラとでも言うんだろうか、何か感じるんだよきっと」
部長からいじめを食らっている俺を慰めてくれているのか、それとも遠回しにけなしているのか、その真意は読めないが今俺の愚痴をビールジョッキを傾けながら、ニヤニヤしながら聞いてくれているのは同期入社の
唯一此奴だけは俺の見方だと……俺は今の所思っている。
俺に何かあればこうして、居酒屋でいつも俺の愚痴を酒を飲みながら聞いてくれる。まぁ良き同僚で友達と言ったところだろう。
「オーラってなんだ! この俺からどんなオーラが出ているというんだ」
「まぁそんなにカリカリしなさんな。ここだけの話、この前人事から訊いたんだけど部長今度転勤になるみたいなんだ」
「部長が転勤! マジかよ。やったね、これであの部長ともおさらばだ」
「まぁこれはあくまでも噂なんだけどね」
「しかしお前良くそんな情報つかんでこれるな」
「まぁ、人事にちょっと仲のいい人いるから、その人から訊いただけなんだけど」
「ひょっとして、
「ま、まね。彼女だとはここでは断言できないけどね」
「ふぅん、お前らそれなりにいい感じになってたんだぁ」
「だからさぁ、そこは『ふぅーん』で流してくれると助かるんだけどなぁ」
「別にいいじゃねぇか、ま、でも彼女を狙っている奴って結構多いって噂は訊くけどな。お前もそのうちの一人だから、あんまり表ざたにしたくはないだろう」
「いやいや、そんなんじゃなくてさ。なんかもう僕はもう彼女とはあまり関係を持ちたくないんだよね。それにここだけの話、
「な、なんだ今度は総務課のあの町村友理奈とか?」
ねぎまのネギの芯がひょこッと口の中で飛び出し、熱さが舌にダイレクトに伝わる。
あちち! 火傷しそうになる口の中を冷やすようにビールをごくごくを飲み込んで、今度はむせた。
「慌てて食うからだよ。別にそんなに驚くことじゃないと思うんだけどなぁ。最も中井さんは彼女から僕に言い寄ってきているだけなんだけどね」
「言い寄ってきているだけって、あの中井さんがかよ。それに町村友理奈って言ったら中井さんと並ぶ男子社員のあこがれの的じゃねぇか。お前大丈夫なのか? そのうち他の男社員に刺されるんじゃねぇのか」
「そんなヘマは僕はしないさ。だからここだけの話なんだよ。お前はこういう事には本当に関心がないからな。ま、だから話せるんだけどさ」
「まぁ、俺にとっちゃどうでもいいことだな……実際」
「そうそう、こよなく2次元の女の子しか愛せない、お前だから言えるんだよ。でもさぁ、いい加減現実の女にもうちょっと興味を持たないといけないんじゃないのかなぁ。俺たちもう27だよ。結婚していたって別に不思議じゃない年だしさぁ、お前も自分の将来の事考えるといつまでも2次元の女の子恋しじゃ、この先どうにもならなくなるんじゃないのかなぁ」
「へっ! 俺は今のこのままがいいんだ。生身の女なんか興味はねぇよ」
「その減らず口いつまで言えるかだよな」
長野勇一はにへらと笑い残っていたビールを喉に流し込み。
「済みませ―ン! 生ビールジョッキ2つお願いしまーす」
「俺まだ半分残ってるぜ」
「だったら早く飲めよ」
そしてまた、にヘラと俺の顔を眺めながら笑っていた。
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