第71話 前略、協力者と方針と
「え、なんでですか。ポムポムはビックリですー」
ポム……なんて?とにかくカラフルな不審者は、まるで自分の申し出が断られることを想定してなかったように驚いてる。
……驚いてるはずなのだが、そのさっきと変わらない声色が感情を感じさせない。
「えっと……全体的に怪しいから……かな?」
うん、怪しい。
他の魔術師たちは白のローブ姿なのに、この娘はなんだろう、目に悪い。カラフルな色をした服を着ている。
次に目に入るのは髪だ。ラルム君の青い髪もなかなかだが、ピンクはさすがに違和感が抑えられない。
あとその身長よりも大きな杖、どう見ても使いづらいだろう。いや、魔術のことはよく分からないけどさ。
本人がぼんやりとしているのに、なんか外見がうるさい。
「怪しくないですよー、ポムポムですー」
ポムポムとは名前だろうか?自分で怪しくないと言うやつは、大体怪しいのだ。
「えと、ポムポム?」
「はい、ポムポム」
「…………」
呼びかけた途端に間髪入れずに言い返してくる。なんだろう、ちょっとイラッときた。
「やっぱり怪しいので、大丈夫です」
あたしの中のヤバイ人レーダーが激しく反応している、関わらない方がいい。
こんな状況だし、面倒事は増やさないに限るだろう。
「なんでですかー、困っているならお助けしますよー」
うーん、怪しいけど悪い娘じゃないのかな?
なんでそこまで助けてくれようとするのだろうか?お互いに初対面のはずだし。
不思議に思って聞いてみる事にした、なにか理由があるのだろうか?
「え、困っている人がいるなら助ける。当たり前じゃないですかー」
「あぁ、なるほどね」
声色は変わらないままだけど、その目がとても嘘をついていると思えなかったので、あたしはポムポムを信じてみることにした。
人を信じるという行為は、このぐらい単純でいいのだ。
それからリリアンも交えて簡単な自己紹介をした。本当の目的は明かせないけど、ドラゴンを倒したいと伝えた。
「わかりましたー、協力しますよー」
「頼んでおいてなんだけどさ、本当にいいの?」
リリアンも言っていた、ドラゴンは最強の種族だと。
ならばそれに立ち向かうのは簡単な事じゃない。最悪の場合、死もありえる。
「ポムポムはー、あそこでなにもせずに言い争う人たちよりもー、なにか行動を起こす人の方が正しいと思いますよー」
ありがたい言葉だ。そう言ってもらえると、少しだけ自分の行動を正しいと思える。
「ありがとうございます。ポムポムさん、さっそくお願いがあります」
「なんですかー、リリアンちゃん」
リリアンちゃん……たしかリッカもそう呼んでたよね、ちゃん付けはなんだか可愛らしい。
そういえばリリアンは何歳なんだろう?
多分同い年かちょっと下くらいだよね、ならあたしもそう呼んでもっと優しく対応するべきだったのかな?
ふむ、あたしは年下に甘いのだ、今からでも変えようか。
「へぇ、なにか作戦でもあるのかな?リリアンちゃん」
「……あなたじゃありません、黙っていてください」
「ちょっと厳しくない!?」
一瞬で不機嫌そうな表情に変わったリリアンに、バッサリと切り返される。
そんな強い言葉を使ってはいけないのだ。
先輩。どうやらあたしには、年下に優しくする才能は無いようです。
いじいじ、しゃがみ込んで石を転がす。
リリアンとポムポムは話を合っている、あたしは蚊帳の外。
「方針は決まりました、行きましょう」
「ドラゴンを倒す方針?」
はい、短く答えて、あたしを見る。
「あなたに魔術を覚えてもらいます」
「魔術!あたしが!」
その不思議でファンタジーな響きは、少し落ち込んでいたあたしを一言で立ち直らせた。
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