第72話 前略、魔術と適正と
「はい、あなたが、魔術をです」
そうだ、そもそもあたしはなんで生身で戦っているんだ。異世界なら魔術、魔法、なんでもいいけどそういったファンタジーな攻撃をするべきだ!
「でも魔術って難しいって聞いたよ。基礎魔術ですら実戦で使うにはかなりかかるって」
前にラルム君から聞いた。それにプラスして、そこから自分の魔術が作れて1人前だと。
「別にあなたに魔術師になれとは言いません。1つの属性の、大雑把な放出ができればいいのです」
属性……正直な話、あたしには関係のないことだと思って少し聞き流していたけど。
ネオスティアの魔術はなんだろう、これも思っていたのと違う。
たしか、まず魔力をそのまま魔術に換える通常の魔術。大気中の魔力を感じ、属性を付与する魔術がある。
リリアンの属性と言う言葉から、あたしには何かしらに属した魔術を習得させようとしてるのだろう。
属性は7つ、火、水、風、雷、地、闇、光。
ただし、その魔力を大気中に感じ取れなければ使えない。自分に合わない属性はそもそもスキルボードにも現れないので習得できないのだ。
まぁ、このテキトーな世界のことだ、時間はかかるが努力でなんとかなるんだろうけど。
「随分と詳しいですね」
「ホントですねー、セツナが詳しいのは意外ですー」
「ファンタジーは嫌いじゃないので」
ちょっとだけ忘れかけてたけど、合ってるみたいでよかった。
人は興味のあることなら結構覚えてるものだ。
「それで?あたしはなにを習得すればいいの?」
「ドラゴンの硬い守りを突破するために、最高の攻撃力をもつ雷です」
なるほど、雷、格好いいじゃないか。その強力なイメージはあたしと一致する。
でも魔術を習得するにあたって、問題がある。
「でもさ習得できるのかな、あたしポイントないけど」
残ポイント1。最後の習得から大分期間があったと思ったけど、相変わらずケチくさい世界だ。
それに魔力?もよく分からない。ゲームとかなら初期から表示されてるものだけど、残念ながら自分のステータス的なものをみたことないのだ。
「そうですね、壁を登るなんて無駄な技術を習得した、頭の悪い人がいましたね」
あれは必要だったんだ、そんなに悪く言わないでほしい。
「安心して下さい、方法はあります」
よかった、なんとかなるみたい。
安堵しているあたしの前にポムポムが出てきて言う。
「ポムポムがぶっ叩いて、無理矢理に魔力を呼び起こしますよー」
「………………はい?」
待って!そう発する前に、ポムポムの大きな杖があたしの頭に振り下ろされた。
「あー!痛ったぁ!!!」
よかった、あたしの頭が固くて(物理的に)本当によかった!
無茶苦茶痛かったけど、潜った死線が違う。あたしは倒れることもなく、踏ん張り!耐える!
「セツナ、タフですねー、でもこれで魔力がいい感じに起きたはずですよー……多分」
多分……?なんか不安な言葉が聞こえた気がしたけど……
「ねぇ、ポムポム」
「はい、ポムポム」
「…………」
だからなんなんだ、その呼んだら間髪入れずに返してくるの。微妙な空気になってしまう。
「その、はい、ポムポムってやつはやめようか、話が進まないよ」
「分かりましたー」
よかった、これで安心して会話が続けられる。
「あのね、ポムポム」
「イエス、ポムポム」
「…………」
これは……諦めていいことだよね……うん……
「殴る必要あった?魔力ってこうやるものなの?」
「これが1番楽なんですよねー」
そうですか、まぁ今回はポイントが残ってないあたしが悪いか。
「えっと、あんまり変わった気がしないんですけど、本当に魔術使える?」
うん、頭がジンジンする以外変わった気がしない。大気中の魔力?も特に感じない。
「大丈夫なはずです。この先にポムポムさんの部屋の残骸があるらしいのでそこまで行って、試してみましょう」
「りょーかい、それにしても適正がなかったらどうしようか」
正直、あたしは自分が魔術に向いてるとは思ってない。もし向いていてもリリアンの求める雷がでなかったらどうしようか。
「その心配はありません。確かに向き不向きはありますが、例外もあります」
リリアンはあたしを見て、希望のある言葉を紡いだ。
「異世界の人間がネオスティアに来たなら、その人は全ての魔術に高い適正を持ちます。これは決まっていることです」
それは最高だ、あたしの冒険はここから始まるのだ。
あたしは未知の技術に期待しながら、リリアンについていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます