第20話 俺の名は。
トルシェに名前を聞かれたのだが、名乗る名前がなかった。
ちょと前に何だか考えていたのだが何だっけなー? そうだ「オブシディアン」だった。あのときはカッコいいと思ったけれど、ちょっとおおげさなような気がする。
ここは
「闇の眷属」から連想される、カッコいい名前だ。安直だが、やはりダークなんちゃらだよな。ダークスレイヤーとか、ダークソ〇ルとか。
トルシェが返事を待っている。急がねば。
ダークくん。これなんかダークなうえにお茶目だ。少女受けしそうで良さそうだ。方向性はずれてしまうが
『俺のことは、とりあえずダークくんとでも呼んでくれ』
『ダークンさんですね。分かりました』
ダークンじゃなくてダークくんなんだが、トルシェには俺のお
『トルシェ、いろいろおまえに聞きたいことがあるんだが、いいか?』
『はい、ダークンさん。わたしに答えられることなら』
『まず、へんな質問だが、俺たちがいる
『ダークンさんはここがどこか知らないってことですよね。確かに変な質問ですが、ここは迷宮都市テルミナにある大迷宮の5層で新たに見つかった迷宮の一部分です』
『迷宮都市ってのがあるんだ』
『はい、大迷宮を中心に街が発達して都市にまでなったものです。いまでは、トラン王国の王都トランの次に大きな都市になっています』
『トラン王国ってのもあるんだ』
『ほんとに、ダークンさんは外のことを全くご存じないんですね』
『いろいろ事情があってな。目が覚めたらいきなりこの迷宮の中にいたんだ。だからここがどこかも分からないし、もっと言えば、自分がスケルトンであること以外何もかもわからない。ちょっと前まで、俺は、トルシェと同じ人間だったんだ』
『ダークンさん、実はわたしは人間じゃないんです。わたしはハーフ・エルフなんです』
『ハーフ・エルフ? エルフと人間との混血だという?』
『そうです』
『ふーん。まあ、いいんじゃね』
『えっ、それだけですか?』
『それだけって、それ以上何もないだろ』
『そうなんですか。ダークンさんはハーフ・エルフに何も感じないんですね』
『そう言われれば、すごいじゃないか。ハイブリッドなんだし』
『ハイブリッド?』
『ハイブリッドっていうのは、2つを掛け合わせていいとこどりすることだ。なんだ、もっとハーフ・エルフをほめてほしいのか?』
『いえ、その逆です』
『逆?』
『人間もエルフもハーフ・エルフを
『どこの世界にも似たような連中が湧くんだな。まあ、俺にはそれをどうすることもできないが、トルシェよ、少なくとも俺はおまえをそういったことで軽蔑することは絶対ないぞ。そもそも、俺なんて
『そういえば、槍で刺されたハズなのに、
『おまえを、ケガをさせて置き去りにした連中のことはそのうち聞くとして、どうも、おまえのはめてる指輪が俺のこの指輪に反応して、傷やら骨折が治ったようだ。それと、おまえは俺の眷属になったようだ』
『眷属ですか。身寄りのないわたしがダークンさんの眷属に。そうだったんですね。ありがとうございます。それで、ダークンさんを見ても全然怖くなかったんだ。アハハハ』
『そ、そうか。喜んでくれたのならそれでいいか。それじゃあ、そろそろ
『はい』
二人して立ち上がり、トルシェはリュックを背負い、弓を手に取った。俺はもちろん、相棒のリフレクターとエクスキューショナーを持った。
通路に出たところで、トルシェに話しかける。
『こっちだ。
そこら辺に黒いスライムがいるだろ? あいつら、簡単にたおせるわりに、たおすと使った武器なんかが強くなっていくようなんだ。おまえも、その弓で矢を
『ダークンさん。もしかして、あれは、ブラック・スライムじゃありませんか?』
『名前は知らないが、あの黒いのはけっこういるんだ。たおしても、すぐに新しいのが湧いて出てくるからお得だぞ』
『いえいえ、あれに近寄る冒険者はいませんよ。近寄るだけで黒い
『ふーん。ここはおまえのいた階層より1階層下の階層なんだが、上からここに階段で下りてくるとき黒いもやもやが見えたからな。トルシェは気付いてないようだが、黒い
『じゃあ、なんでわたしは何ともないんでしょう?』
『あれが、おまえのいうブラック・スライムじゃないか、それともおまえが俺の眷属だからか。いろいろ考え合わせると、おそらく後者だろうな。というわけで、いま何ともないなら、ただのスライムと変わらないんだからどんどんやっちゃってくれ。ほらな』
そういって、近くの壁にとりついていた黒スライム、おそらくトルシェの言うブラック・スライムをエクスキューショナーの一振りでたおして見せた。
そいつは、ぽちゃっと音をたてて床に落ちて黒い水たまりになった。
『わ、分かりました』
トルシェは
狙いをたがえることなくまっすぐ矢はブラック・スライムをとらえ、一撃でスライムは床の上で黒い水たまりに変わった。
駆け寄って、床に落ちた矢を拾ったトルシェが、その矢を見て、
『少しも矢が傷んでいません』
『だろ、きっとその矢は少しだけ強くなってると思うぞ、持ってる矢を順番に使って、
『分かりました。全部といっても、この矢を含めてあと6本しかないんですが、ハハハ』
『6本もあれば、今のところ何とかなるだろ、頑張れ』
『はい!』
[あとがき・宣伝]
SF『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897022641
なろう連載中のものの転載です。タイトル通りの宇宙ものです。よろしくお願いします。
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