闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-
山口遊子
第1話 ゾンビ?
昼休み。
具体的にはドクドクと胸の
ゴキッ!
耳で聞いたわけではないがみょうに
どこかの骨が折れた音だと思う。地下通路の
あれ、
真っ暗になって何も見えなくなった
なんだか俺の体がおかしな状況になってしまった。
とはいえ、こんなところに寝ているわけにはいかないので、立ち上がろうと、両手をついたところ、左手は何ともないようだが右手がうまく動かない。
首を曲げて右手の
どうもうまく起き上がれない。仕方ないので、うつぶせからせめてあおむけに寝っ転がろうと左手だけでわしゃわしゃしていたら、近くに
「たいへん。人が倒れて苦しそうにもがいてる。救急車、救急車!」
足音からするに、周りに人が集まって来たようだが、うつぶせのままなので良くはわからない。ただ、すこし先に、男物の靴や女物の靴が目に入った。
この感じだとかなりの人が集まって来たようだ。このままわしゃわしゃしていると
骨が折れても全く痛くないのが
しばらく眼をつむって寝たふりをしていたら、ガチャガチャ音を立てて救急車用のストレッチャーを運ぶ足音が近づいてきた。
「だいじょうぶですか? 聞こえますか? ……反応がないぞ!」
よーく、救急隊員さんの声は聞こえているのだが、なぜだか声が出ない。
「呼吸は? ……、呼吸してないぞ」
「おい、脈がないぞ。AEDは持って来てるな。すぐ、始めるぞ、胸をはだけてくれ」
「ここでですか?」
「バカ者、命がかかっているんだ!」
うつ伏せからあおむけに寝かせかえられ、ハサミか何かで上に着ていた衣服が切られ、上半身がはだけた。
そのあと右の
「いくぞ!」
ドーン!
実際の音はしなかったがそんな感じで俺の体がのけぞり一瞬浮き上がった。
そして今度は、大柄な救急隊員が俺の体の上にまたがり、両手をみぞおちより少し上あたりに当てて体重を乗せて思いっきり押してきた。
「
バキバキッ!
「次、
「……だめだ、もう一度いくぞ」
バキバキッ!
また、2、3本いったな。
ドーン!
……
同じことが4、5回繰り返されたが、俺の心臓は
「どうだ、
「ダメです。
「ダメだったか。仕方ない、上に毛布を掛けて、とりあえず近くの受け入れ先に
あれ、俺って死んでるの? 心臓は動いていないがどぎまぎしてると、二人がかりでストレッチャーに乗せられ、地下道から上の道路で待つ救急車に運ばれた。サイレンつきで
ガチャガチャとうるさく音を立てるストレッチャーで運ばれ、救急室のベッドに移された。すぐに、やって来た担当の医師が俺の左手首の
医師が、救急隊員たちに何か言うと、彼らは救急室から出て行ったようだ。
俺は、医師に死亡を確定されたらしい。
「
医師がどこかに連絡したようで、しばらくすると二人ほど緑の服を着た男の人たちが別のストレッチャーを持って部屋に入って来た。すぐに俺をそのストレッチャーに移して運んで行った。一度、エレベーターに乗ったので、どこかほかの階だと思う。
このままだと、
搬送中のこの状態で
運び込まれた部屋は、教室ほどの広さの部屋だと思う。ストレッチャーからベッドの上? おそらくは
俺を運んだ二人は部屋を出て行ったあと照明を消したようで辺りは暗くなったことが
自由のきく左手で布をはだけ、手術台の
手術台の脇にかなりの数のメスや名前の分からない刃物や器具が並んだ台が置いてあった。ノミやノコギリやハンマーは見なかったことにしよう。
いくら痛みがない体だからといって、意識を持ったまま解剖されたくはない。ここは逃げの一手だ。なんとか手術台から足を床につけ、立ち上がった俺の姿はまるで生ける
AEDのために上に着たものがハサミのような物で切り裂かれているため、みょうに
よろよろと出口に向かって暗い部屋の中を歩いていると、いきなり
「……」
俺を視界に入れた侵入者。恐らくは女性の看護師さんが息を飲んだ。それは、びっくりするだろう。解剖予定の死体が歩いてるんだ。
「キャー!」
これもお約束の
そうこうしているうちに廊下の先から、ドタドタと大勢の人がやってくる音がしはじめた。
俺って、これからどうなるの?
[あとがき]
一次救命処置についてのご指摘があり若干修正しました。
一次救命処置は救急車が来るまでの周りの方の救命処置ですので、
いざという時のため、一次救命処置の手順:http://www.jrc.or.jp/activity/study/safety/process/ などいちどご覧になってください。
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