第45話


最近は柚とデートする頻度が増えてきた。


「今日は何しよっか?」


「俺は外ぶらつくだけでいいや」


「それでもいいけどさ、啓ちゃん遠慮してるでしょ?」


「そりゃそうだろ? 柚は金持ちだから良いとして俺は至って普通の高校生だ、そんなに遊びに行く金はない」


「私がお金全部出すからいいのに」


「それが問題なんだ。 いくらなんでも柚にばっかり出させて悪いし、第一金は大事に使えよ? そんな散財してると一気にド貧乏になるぞ?」


「ん〜、私は啓ちゃんとの為に使うならいくら浪費しても構わないんだけどなぁ」


「お前どんだけ金貯めてたんだ?」


「ふふん、3桁は軽く越してるよ?」


「は?! 3桁?」


「そうだよ! 柚ちゃんとってもお金持ち!」


「通りで制服とか教科書とか買い直しても痛くも痒くもないはずだ……」


「このお金は復讐するためにいろいろ貯めてたんだけどね。これからは啓ちゃんの為に使いたいなって」


「でもそれは柚が傷付きながら貯めた金だろ? 」


「うん、だからこそ今度は好きな人の為にね!」


「だったら俺はその金は俺の事より柚が柚自身の為に使ってほしいな」


「啓ちゃんとの結婚資金とか?」


「話が急すぎだろ…… まぁ何にしてもそんなに持ってるなんてな……」



「会長がね。 私がやめる時に私が稼いでた分取っておいてくれて全部くれたの。 娘の門出だって」


「優しかったんだな」


「最初は物凄く怖かったんだけどね、会長には会長なりの優しさがあったの。あ! あのね、啓ちゃんを会長に見せたいの。 だから一緒にお墓参りに行ってくれる?」


「ああ、もちろん。柚がお世話になった人だもんな」


「ここからそう遠くないから歩いて行けるの。付いてきて」


そして少し歩き柚が目指す墓地が見えてきた。


「ここだよ! 会長のお墓結構大きいからすぐわかるよ」


「もしかしてあのデカいのか?」


「正解! すぐわかったでしょ」


そして俺たちはその掃除が大変そうなデカいお墓に向かい買ってきた線香と花を添えた。


柚と俺は両手を合わせ静かに拝んだ。

俺は心の中で軽く自己紹介をし、俺と柚をこれから見守ってくださいと祈った。


柚の方はまだ両手を合わせていた。

そして柚も終わり墓地を後にした、柚は少し静かだった。


「結構長い時間手を合わせてたな」


「うん、私がやめる時凄く落ち込んでて会長にろくな挨拶もお礼も出来なくてそれが心残りだったんだ…… 生きてる時に言いたかったなぁ」


柚は少し上を向き物悲しげな表情をしていた。


「でもさ、死んでからじゃあ寂しすぎるよ、私は親にも今までありがとうって言えないうちに終わっちゃった。 でも啓ちゃんには今からでも遅くない。 だからいっぱい私の気持ちを伝えたいの、だから啓ちゃんこれからもいっぱい愛し合おうね」


柚には柚のそんな思いがあったんだな。

いつでもどこでも考えなしにベタベタしてると思ったらそんな事を考えていたのか。


「大丈夫だよ、そんなに急がなくても。

俺と柚はこれからじゃないか」


「うん、これからだもんね。啓ちゃん、私を手放しちゃ嫌だよ」


「あはは、柚次第かな」


「もう! どうせ私は重い女ですよ」



そしてそれから更に季節は過ぎ二学期も終わる頃。


「う〜、寒いねぇ」


「もう冬だしな、冬休みに早くなんないかなぁ」


「私はあんまりなってほしくない気もするな」


「どうして?」


「学校だったら啓ちゃんに何も約束なしで会えるでしょ! 冬休みとかなったら啓ちゃん寝てたりして会ってくれなそうなんだもん」


「なるほど、そういう事か。 つまり柚は毎日俺に会っていたいと?」


「それほど好きって事よ! 啓ちゃんは違うの?」


「やっと柚から解放されるのかぁ」


「監禁されたい?」


「嘘です……」


「まぁクリスマスもあるもんね! 啓ちゃん何してくれるのか楽しみだなぁ」


「そこまで期待するなよ、普通に過ごすと思っとけよ」


「本当はね、それでも全然いいんだ。好きな人とクリスマス過ごすのなんて私も初めてだから」


「俺も彼女となんて初めてだしな」


「初めて同士いいじゃない! 私ね、啓ちゃんが居てくれたら何も寂しくないんだ…… だけどこうも思うの。 もしいなくなったら?って。 最近幸せになるにつれて不安も大きくなってきて」


「柚……」


「なぁんてね! 考え過ぎだよね」


柚はそう言って笑っていたが不安に思ってるのは本当だろう。 そんな柚の笑顔だった。

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