第44話


文化祭が始まり俺は見た目で受けるからと受け付け役に回された。

柚は俺と一緒がいいと断固言い張り俺と一緒に受け付け役になった。


「真面目にやれよ?」


「言われなくたって真面目です」


一般公開もされるのだがまぁ高校生の文化祭なのでそんなに期待して見るものでもない。


すると1人強面の人が柚に向かってやってきた。


「あれ? 後藤さん、どうしてここに?」


「おお、目立つ場所に居てくれてよかったよ。 ちょっとお前の顔を見にな。うちの事務所も大分落ち着いたからな、前にお前と会った時落ち込んでいたから気になってたんだ、やめる時も相当落ち込んでただろ?」


「今はお陰様で元気にやってます。わざわざ来てくれるなんて後藤さんありがとうございます。それとこの隣の啓ちゃんは私の彼氏です」


「お? 柚にもついに特定の彼氏が出来たのか、って女みたいな奴だな」


「啓ちゃんはこう見えても私にとってとっても頼りになるんですよ!バカにしないでください」


「まぁ柚が選んだんだから文句はねぇけどよ。しっかり柚の面倒見てくれよ? 彼氏さん」


「はい、そのつもりです」


と言うよりこんな怖い人が学校来てるなんてアリなのか? よく入れたな……


「じゃあ俺はそろそろ行くわ、あんまりこんな場所にいるべきじゃねぇからよ。後で会長の墓参りでもしてやってくれや、場所は後で伝えとくから」


「はい、必ず行きます」


そう言って男は立ち去った。


「なぁ柚、あの人って……」


「うん、そう。 前に言ってた人だよ。外見は怖いけど結構優しいとこあるの」


柚は昔を懐かしむようにそう言った。

ここまで来てくれるくらいだ、そうなんだろう。


受け付けが交代し俺たちも文化祭を見て回れる事になった。 そういや香里がメイド喫茶に来て欲しいって言ってたな。


「柚、香里のとこでも寄るか?」


「なんで香里ちゃんのとこに行くのかなぁ? 」


「お前もついてくれば何も問題はないだろ?」


「そりゃそうだけど……」


そして香里のクラスに行くと香里はメイド姿で接客をしていた。


「あ、ようやく来てくれた! でも目の上のタンコブも一緒なんて……」


「誰に言ってるのかな? 香里ちゃん」


「まぁいっか、私のこの姿啓に見せつけるには」


「私だってそれくらいやれば出来るわよ! 啓ちゃんあんなのが好きだったら今度やってあげるから!」


「おい、今は喧嘩しないで楽しめよ、な?」


「さすが私のご主人様!」


「ちょっと! 啓ちゃんに馴れ馴れしくしちゃダメ」


「これだけ嫉妬深いと啓も大変だねぇ、その内朝日奈さんに殺されたりして」


なんかそれ真実味があってうまく笑えないぞ……


メイド喫茶から出て外で開いている出店なども見て回った。


「ねぇ啓ちゃん、なんか食べよー!」


「うーん、さっき香里のとこで食べたのにまだなんか食べるのか? 柚が食べたいのでいいよ」


「じゃあケーキ的な何か!」


「そんなの作ってるとこあるのかよ……」


柚はいろんな店を散策している。無邪気に店を見ている柚はもともと可愛いので男子の目線を集めている。


あんなに笑って楽しそうにしている柚は確かに可愛いだろうな。


「あったよー! シフォンケーキ、一緒に食べよ? 」


「え、ああ」


「うん? どうかした? あ、もしかして私が他の男子にチラチラ見られてて嫉妬してた?」


「凄い自信だな。食欲旺盛だなと思って見てただけだ」


「もう! 啓ちゃん少しはデレてくれたって構わないのよ」


「あいにく柚みたいに人前でデレデレするなんて慣れてないんだ」


「じゃあ私がデレデレしてあげる」


「いたいた! 柚! 知らないうちにそんなに新村君とベタベタしちゃって!」


「あれぇ? 鈴菜、学校は? 今日そっちも文化祭でしょ」


「私はサボりよ、柚のとこに来た方が楽しそうだったし」


「鮎川久し振りだな」


「うん! 私新村君にも会いたかったんだ」


「こら! もう啓ちゃんは私のものよ!」


「わかってるわよ、ただ新村君には私も恩があるからね」


周りが鈴菜を見てざわつき始めた。


「あの可愛い子誰だよ? 朝日奈の知り合い? 」


「朝日奈の知り合いはやっぱレベルたけぇ」


などと聞こえてきた。 まぁ柚と鮎川が並べばそうなるだろう、鮎川も柚に負けず劣らずだからな。


「鈴菜、私のクラスのお化け屋敷でも見る?」


「あ、そうだね! 行ってみたいけど柚はお化けやらないの?」


「こいつは俺と一緒に受け付けしたいって聞かなくてさ」


「あー、なるほど! そりゃそうだよね」


そして鈴菜を連れて俺たちのクラスに行くと坂木と平井が鈴菜を見て近付いてきた。


「鈴菜、なんであんたが来てんのよ!」


「来ちゃダメ?」


「あんたが面倒事持ってきたせいで柚大変だったのよ?」


「うん、その件はごめんなさい。だから私反省してそういのはもう卒業したの」


「鈴菜偉い!」


「まったくもう、柚は鈴菜に甘いんだから。わかったわよ、それならもう何も言う事ないわ。 謝られちゃったしね」


「じゃあ私お化け屋敷鈴菜が終わったらいろいろ案内してあげるね! 啓ちゃん、私がいないからって他の子にちょっかい出したら監禁しちゃうんだからね!」


「するわけないだろ? それにお前が言うと洒落になってないからな」


そして柚は鮎川を連れて学校を案内しに行った。


「啓あれ誰だ?」


気がつくと隣に徹がいた。


「鮎川の事? 柚の友達だよ」


「朝日奈はお前にもうメロメロだから望みはないけど鮎川さんならいけるかもしれない」


いや、無理だと思うぞいきなりは……

そして徹は柚たちが向かった方向に歩いていった。


予想通り見事に玉砕し落ち込んで帰ってきた徹を慰めるのに大変だった。


「やっぱ柚のとこに来て大正解だったね、ねぇ、 今日は久しぶりに3人で柚の家に行かない?」


「いいよ! 私もそう思ってたところ。 いいでしょ? 啓ちゃん」


そして文化祭が終わり柚の家に鮎川と俺で久しぶりに3人で向かう。前はゴタゴタしてたけど今回は純粋に柚と鮎川、俺とで楽しく過ごした。

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