第13話


「いったッ!」


足の裏にチクっと痛みが走る。

血が出てきた……

床には割れたガラスの破片と散らかった家具等。


「片付けなきゃ……」


あの後新村君が帰った後私は冷静じゃなかった。

閉じられた玄関をしばらく睨み私は皿を玄関に向かって投げつけた。


「女みたいな顔してるくせに!! なんで私の気持ちがわかんないのよッ!」


椅子を蹴飛ばし足の指に痛みが走った。


「痛い、痛いよ」


頭にきたのでテーブルの物を乱暴に引き落とした。

ガシャーンと割れる音がする度に気分が晴れてきた。


バカ! バカ! バカ!

新村君のバカ! ふざけんな!

今は1人にしないで欲しかった、少しはわかれ!


我ながらめちゃくちゃな事を言ってるのはわかってる。


「ハァッハァッ!」


なんだか疲れた…… もう寝よう…


次の日目が覚めるとこの惨状。

今日は学校行けないや、それに新村君の前で泣いてしまった。 私ったらあんなに取り乱して恥ずかしくて顔あわせらんない…… 私らしくない。


しばらく休んで頭を冷やそう、そうしよう。 ていうか私なんであんなにムキになってんだろ、思い通りにならないから? まぁいいや。


片付けはその日のうちに終わらせた。 ガラスの破片や何やらで手や足を数箇所を切ってしまったけど……


私が何日か学校を休んでいると花梨から電話が掛かってきた。


「新村君またボコられたよ、柚のかわりに」


「え? なんで?」


「柚と付き合ってた先輩に」


「え、誰だっけそれ?」


「はぁ、新村君とことん可哀想ね」


私はそんな人いたっけ? と記憶を探った。 あ、そう言えばちょっと前に告白されたっけ?


でも新村君に思った以上に夢中だったからまったく眼中になかったから忘れてた。


「それで? どうなったの?」


「私たちが先生呼んだからその場はなんとかなったけど」


「ありがとね花梨」


「いや、新村君に言いなさいよ」


「うん、わかってる」


新村君が知らないうちにまたボコボコにされてたなんて……

やっぱり後できっちりお詫びしとこう。 新村君に借りばっかり作っちゃうのもなんかアレだし。


そして次の週私は登校した。

いた、新村君!

だけど私の予想に反して私の行動はおかしなものだった。


声がかけれない…… なんで? しっかり冷静になってきたのに。

新村君は私が何も言わないのを少し不思議そうな顔をしていたがすぐ目を逸らしてしまった。


どうしちゃったんだろ私……

それから何日か経ったがまったく新村君に話しかけられない。


そして2度ある事は3度ある。 新村君が今度は知らない先輩に絡まれていた。

まだ何かあるんだろうか? でも新村君は今度は無傷で戻ってきた。


そしてしばらく経ちやっぱり気になったので私は遠藤君に聞いてみた。


「なんかこの前啓をボコった先輩の知り合いみたいだけど言い掛かりつけられて財布取られたみたいだ。 定期とか色々入ってたから啓の奴困ってんだ。 俺もあんま金持ってないから電車賃くらいしか貸せなかったけど」


「ふぅん、ありがとう」


仕方ない、私が人肌脱ぐか。

私は最後の授業が終わった後すぐさまカッターを持って2年の教室に向かった。


「すみません、さっき1年の新村君と会ってた先輩居ますか?」


みんなキョトンとしている。ここのクラスじゃないのかな? と思ったがすんなり出て来てくれた。


「俺だけど? なんか用か?」


「あ、あの、 付いて来てくれますか?」


先輩は何か察したのか付いて来てくれた。私は誰も来そうにない学校の倉庫に行き先輩と2人きりになった。


「で、こんなとこまで連れてきて何?」


「新村君から取った財布返してもらえますか?」


「じゃあさ、1発やらせれば返してやるよ?」


話が早くて助かる。

私がいいよと言うと先輩は飛び付き私の体を弄り始めた。


さっさと終わらないかなと私は思考を停止させた。

事が済んだ。 結構乱暴だったな、この先輩。


先輩がズボンを履きまた頼むわと言って新村君の財布を私の目の前に投げた瞬間私はカッターを取り出し先輩の背後に回り後ろから先輩を抱きしめ首筋に刃を当てる。


「動くな!」


「お、おい、本気かよ!?」


「本気ですよ?私はか弱い女の子だから自分が危ないと思ったら手が動いちゃうかもしれません。だから死にたくなかったら動かないで下さいね?」


「わ、わかった、わかったから!」


「今後私と新村君に近付かないでもらえます? 1発やらせてあげたのは落とし所です、わかりましたか?」


「わかったからやめてくれ!」


「約束ですよ?」


そして私は先輩から離れた。 そして先輩は私から一目散に逃げてしまった。離れたらカッター取り上げられて反撃されるかと思ったけど根性無しだったみたいね。


そして新村君の財布を拾い部室に向かう。電車の時間ずらしてるからまだいるはず。


部室に行くとちょうど新村君が出てきた。


「あ、新村君」


急にだんまりから話しかけたので新村君は少し驚いている。


「これ」


私は新村君に財布を渡した。


「なんでお前が持ってるの?」


「新村君が財布取られたの見てて後でその先輩に会って返して下さいって言ったらあっさり返してくれたよ?」


「はぁ?」


明らかに疑っている。 でもいいや、これで少しは借りを返せたかな?


「私の女子力のお陰だね!」


そう言い私はやっと

新村君に向かって笑いかける事が出来た。






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