第9話


朝日奈のお陰で家に着くのがだいぶ遅くなった。 もう面倒いのでコンビニで夕飯を済ませ帰るなり風呂に入り寝てしまおうと思った。


風呂から上がるとさっそく朝日奈からLINEが来ていた。


『もうお家に着いたかなぁー?』

とか『今日は楽しかったねぇ』 とか『私と連絡取れるようになって良かったね!』


さっきの事を考えると俺をイラッとさせる内容だったので既読スルーする事に決めた。 ザマァ!


俺はベッドの中に入りいろいろと疲れたのかすんなり寝れた。

そして目覚めの良い朝。 何時かなと思いスマホを見て一気に気分が悪くなった。


3:41 『これはもしかして既読スルー?』

なんか知らんキャラクターのスタンプ連発……


4:12 『おーい!!』

そしてまたスタンプ連発。


4:30 『しくしく(笑)』

以下略


はぁ? なんだこりゃ!? しかも(笑)てなんだ? さらに頭にきたので再度スルー。


俺はため息をつきながら電車に乗り元気ないなぁと徹に言われながら学校に着いた。


そして教室に入り涼が話しかけて来たのでしばらく話していると坂木と平井も登校してきたようだ。 朝日奈は…… 来なかった。


そして坂木や平井も俺の所に来て朝日奈は? と聞いてきたので昨日の内容を話した。


「あはは、それじゃあ寝坊ね! 柚もやるじゃない」


坂木がゲラゲラ笑っている。しばらくすると坂木は電話が来たのかどこかへと行ってしまった。


すると平井が俺に話しかけてきた。


「柚ってね、見た目は可愛いんだけどやる事なす事めちゃくちゃでね。 中学の時もいろんな人と付き合ってて中には怖そうな人とも付き合ったりしてたの。

でもいつも柚はピンとこないとか言ってすぐ別れたりしてビッチとか言われてたりしてて……」


「新村君が昨日会った隼人って人もその内の1人でね、別れる時も柚から一方的でさ、隼人怒って大変だったのよ。 私と夏美は柚と小中一緒だったからさ。 でも柚って根は優しい子だよ? たださ……」


そうこう言っている内に朝の授業が始まって話は途中で終わってしまった。

俺は厄介な奴に目を付けられたという思いしかなかった。


昼になり昼飯を食べ終わると眠そうな顔をした朝日奈が登校してきた。 今頃来やがった……


「ふぁ〜、おはよー」


「よく来たな、しかも今頃」


「新村君とせっかくLINE交換したのにシカトされるなんて思ってもみなかったからつい熱くなっちゃった」


「それであのウザい内容か……」


「まったく失礼しちゃうよ、新村君ってば。 私がせっかくラブコールしてあげようと思ったのに」


「昨日の今日で俺の中の朝日奈への思いが伝わったよな?」


「え!? 何それ? もしかして私に惚れちゃったの!?」


「バカなのか?なんでそうなるんだよ…… ひたすら面倒くさい奴だって事だよ!」


「え〜、引く手数多の私がそんな風に言われるなんて信じらんない」


そう言って朝日奈は俺の鼻をつまんできた。すると涼がラブラブだなとからかってきた。 迷惑してるんだよ……

そして今日の学校も終わった。


「ん〜、なんか学校あっという間だったねぇ!」


「そりゃ午後から来たお前はそうだろうよ」


「私がいなくて寂しかったの?それならそう言えばもっと早く来たのに」


「どういう神経してんの?」


「むぅ、また悪口!そんなに悪口いうなら口塞いじゃうよ」


「はいはい、ごめんなさい」


さてどうしたもんか…… 今すぐ帰ると昨日の連中とまた鉢合わせしそうだし。

てかなんでそんな事考えるようなんだよ! こいつと昨日一緒に帰らなきゃ無縁だったのに。


ジトーッと朝日奈を睨むと朝日奈が気付き満面の笑みでニッコリしてきた。


「はぁ〜」


ため息しか出てこない……

とりあえず部室でも行こう。 行くはずのない部活だったけど。

今なら朝日奈は坂木と平井と話しているし見つからないようにコッソリと。


そして部室に来てガラッと扉を開けるとやはり先輩ただ1人が読書をしていた。


「あら? 来ると思ってなかったけど……」


「はい、俺も行くはずなかったんですけど時間潰さなきゃいけない都合があって」


「そう、なら好きにしていいわよ。 新村君居ると目の保養にもなるし」


「え?」


「冗談よ、何か飲む?」


「じゃあお茶かコーヒーで」


俺は部室の中を見渡す。トランプや麻雀、将棋やチェス、ルーレットなどあるが基本的に1人で出来そうなものがないな……


あ、漫画置いてある。 これで時間潰そう。 俺は漫画を手に取り読み始めた。


「はい、コーヒー」


「ありがとうございます」


静かな時間が流れる。 先輩も何も話さない。 こういうのは悪くない、最近の騒がしいのに比べれば。


だが突然その沈黙は破られた。部室の扉が開き朝日奈の姿があった。


「いたいた、新村君帰らないの?」


「誰のせいで帰れなくなったと思う?」


「うーん、もしかして新村君先輩の事が好きで……」


「はぁ〜、もういいわ」


先輩はクスクス笑っている。


「貴方たち面白いわねぇ、いつもそんな感じなの?」


「はい、とても迷惑しています」


「ていうのは新村君の照れ隠しでとても嬉しいですって事なんです」


「あら、そうなんだ」


「もう俺は何も喋りません」


こいつのペースに巻き込まれたくないのでだんまりする事に決めた。

朝日奈は俺の方へ来て俺が何を読んでるのか覗き込んできた。


「ハン◯ー×ハン◯ーか、ふぅん」


俺の読んでた漫画を見て興味なさそうに朝日奈は部室を物色し始めた。

そしてしばらくして時計を見るとそろそろいいかと思い部室を出て行こうとした。


「あら、お帰り?」


「はい、電車2本分遅らせたのでそろそろいいかと……」


「よくわからないけど気を付けて帰ってね」


「じゃあ私も帰ろうっと」


そして朝日奈と部室を出た。


「じゃあゴーゴー!」


「ってまた一緒に帰るのかよ!?」


「当たり前じゃん? 昨日の今日で私を1人にするの? 怖いよぅ」


朝日奈がわざとらしく震えてみせる。いや、もう全てがわざとらしい……

俺は断ってもついてきそうなのでもう諦めた。

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