第11話
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咲は校内ではだれにも文句を言われないほどの完璧美少女だった。
月曜日の朝。全校集会が行われ、生徒会長として咲はそれに参加していた。
すたすたと壇上を歩いていくと、感嘆のため息がいくつも漏れる。
「……今日も綺麗だ」
「……ああ、本当にな」
「毎週全校集会があればあの女神を見ることができるのに……」
「ああ……あのキリっとした顔が美しい」
「……そうだな、踏みつけられたい……」
そんな会話があちこちでぼそぼそと生まれる。
咲が歩くだけで、それだ。彼女はじっと生徒たちを一瞥した後、マイクに向かって声をあげた。
静かにしてください、という教師の声が響き、段々と体育館内は静かになっていく。
咲はそこで一度挨拶をと思い、声をあげる。
だが、声は小さく檀上でしか響かない。
そこで、咲は気づいた。
(……うう、電源入ってなかった)
そんな小さなミスには、誰も気づいていないようで、咲はひっそりと安心していた。
咲はすぐにマイクの電源を入れ、挨拶を行う。
それから、生徒会としての話を行っていった。休日に行われるボランティア活動などについての告知、休日に行われる特別授業などなど。参加者を募るための話だった。
本来、これらは教師が行ってもいいのだが、「飛野さんが言ってくれたほうがみんなも参加する」という理由から生徒会長である咲に任されていた。
話を終えた咲がすっと一礼をし、壇上を歩き去っていく。
「……ああ、飛野さんは今日も美しい声だな」
「……本当にな」
「ボランティアかぁ……生徒会も参加するなら、俺もやろうかな……」
「そうだよな……ゴールデンウィークに飛野さんを見られるなんて……それってつまり付き合っているのと同じだもんな……?」
「……そうだな、あの声で罵られたいぜ」
咲の挨拶が終わると同時、またも体育館内は騒がしくなる。
全校集会はそんなこんなで問題なく終わった。
昼休み。咲は生徒会室にて昼食を食べていた。
普段はクラスの誰か、誘ってきた人と食事をするのだが、今日は一人になりたかったのだ。
咲は笑顔とともに、カバンから一冊の本を取り出した。それは治の書いた小説の二巻であった。一巻はすでに読み終え、二巻を買っていたのだ。
食事をしながら本を読む。人前では完璧を演じているため、生徒会室にいる時くらいしか、そんなお行儀悪く食べることはできなかった。
咲は買ってきた菓子パン五つをテーブルに並べ、小説のページをめくっていく。
「はぁ……島崎さん……凄いなぁ」
ぼそりと小説を読みながらつぶやいた時だった。がらり、と生徒会室が開け放たれた。一瞬咲はびくりと肩をあげ、急いで本とパンをしまおうとして、机に脚を強くぶつける。
「い、いった……っ!」
痛みにもだえながら、入室してきた親友とも呼べる彼女をじっと睨んだ。
同じく、昼食を食べていた生徒会の会計を務める森島(もりしま)真由美(まゆみ)に声をかけられた。
「やほー、咲っちー! 一緒にお昼たべよ!」
真由美であったことにほっとしながら、咲はテーブルの整理を始めた。
ジンジンと痛みを訴える膝をさすりながら、咲はじとっと真由美を見た。
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