隣人愛性bias
近江葉
再会
玄関の扉が静かに開かれると、/ /の姿がそこにあった。
ようやくたどり着いた目の前の光景に、心臓が跳ねる感覚を覚える。瞬く間に胸の高鳴りは最高潮に達しようとしている。
彼女の顔を見るのは、実に半年ぶりであり、言い換えれば、彼女もまた俺の姿を見るもやはり半年ぶりになる。
この状況を全く想定していなかったのか、戸惑いを隠せない様子の/ /。
再会の時。
小暑控え、夏が始まろうとする頃。涼風がほのかに残る熱気から逃げるように、二人の間を抜けていく。
彼女の視線は真っ直ぐに俺の顔を捉えて離さない。
驚嘆で固まる表情。けれど瞳の奥には深い憂いの色が表れる。
全てが、あの時と同じで。今は、夕映えの空が艶やかな彩りを添える。
あなたを追いかけてここまできたのだと告げる。
すると、先に姿を消したのはあなたの方じゃないかと、/ /は初めて怒りの感情をぶつけてきた。
彼女が吐露する本心を受け、些か狼狽する。けれど、だからと言って引き下がる気はない。
/ /は俺が見るせかいを好きだと言った。他にも見せて欲しいとって言ってくれた。
そうやって、孤独と絶望の世界で動けずにいた俺に、救いの手を差し伸べてくれた。
だから、今の俺はここにいるんだって、そう思ってる。
俺は気の利いたやり方など知らなかった。だから、勢いに任せに/ /を抱き寄せる。
初めて会ったときから、気づけば俺も/ /に惹かれてた。
その時に語った言葉は、/ /にとって何気ない一言だったのだろう。
もちろん/ /との間に、明確に示すことのできる約束や関係はないけれど。
それでも、まだ俺は/ /に恩返しができてないから。
/ /に俺のせかいを見せてあげたい。見ていて欲しい。
俺にはこれといった特技も、才能も、頼れる友人すらまともにいない、何もない男だけど。
俺は/ /のためにこれからも生きる。
時間かかると思うけど、いつか必ず/ /を幸せにするって約束するから。
どうかこれからもそばで、見守っていて欲しい。
俺の拙い言葉に対して、/ /は一言「待ってます」と言った。
涙する/ /の姿と、その情感を想い、
精一杯抱きしめた。
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