アルティメット♡エロ神様~私は異世界転生してもエロ漫画を描く。死にかけていたHな宗教を復活させ、性のクセがすごい魔王軍に立ち向かう。
魔法少女ことり
序章 夏のコミケ3日目
戦利品はおうちに帰ってから楽しめ!
突然ですまない。
君は、エロ漫画を何冊持っている?
10冊? 20冊? それとも100冊?
――えっ? 1冊も持ってない?
嘘はやめたまえ。私は知っているんだぞ。
最近のエロ漫画愛好者は、スマートフォンの中に隠し持っていることくらいお見通しだ。
DLSi●eか? FAN●Aか?
それとも、とら〇あなか? メ□ンブックスか?
――まさか、違法アップロードされたものを見ているんじゃないだろうな?
違法アップロードされたものを見ている人は、今すぐ有料販売サイトで買い直しなさい。
そうした方が、自分の性癖に限りなく近いエロ漫画をゲットできるし、お目当ての物を得られたという満足感も半端ない。
それに、作家である私達にしっかりとお金が入る。私たちにお金が入れば、これから先も君たちの上下運動をお手伝いしてあげよう。
――おっと、自己紹介が遅れてすまない。
私は、エロ漫画家の「エ口マン力゛」という者だ。
私の仕事内容は言うまでもないだろう。
エッチな漫画で男性を興奮させる。
そして、大きく膨れ上がったオスのおちんぎんを、私の口座に突っ込ませて、ビュービュー出してもらう。
——これが、私のシゴトだ。
ちなみに、ペンネームの読みは、「
エロ漫画界隈において、この名前は割と知れてる方だ。間違えられることもめったにない。
だけど、この名前、めんどくさいことこの上ない。
エロ漫画の少しお隣の界隈——ラノベ界隈や絵師界隈では、二人に一人、この卑猥なペンネームが通用しない。実に、悲しいことだ。
イキるにイキって、「
——まぁ、そんなことはさておき。
先ほど、私は、エロ漫画を描いていると言った。
私の推測だが、君たちはきっと、既に
世間一般的なイメージでいうと、エロ漫画家というものは、男性だと思われがちだ。
事実、エロ漫画家には男性が多い。エロエロ美女やシコシコ性癖は、おじさんたちによって生み出されている。
まぁ、エロ漫画界隈に男が多いのも無理もない。男子の性欲というものは、砂漠で水を求めるようなものだからな。
しかし、実は例外もいたりする。
それが、私——「
——エロ漫画家ではあるが、
私の性別は、「
見た目は女でも、脳内はエッチなのだ。
性欲の強い女子だっていなくはないだろ?
女だってエロ漫画を描かないわけではない。
男だけがエロを嗜むと思ったら大間違いだ。
——ん? 私がどんな漫画を描くかって?
そうだなぁ……これまでに色んなエロ漫画を描いてきたからなぁ……。
私の周りには、「小さな女の子」を専門で描いているエロ漫画家や、「おねえさん」を専門で描いているエロ漫画家がいる。
だが、私は、彼らのように専門があるわけではない。かと言って苦手な性癖があるわけでもない。
言うならば、私は、性癖オールラウンダーだ。
どんなものでも描けるし、どんなものでも抜ける。SMでも人外でもなんでもござれといった感じだ。
——まぁ、私のエロ漫画、唯一のウリをあげるならば、「シチュエーション」だろうか。
私は、シチュエーションにはうるさいぞ。
エロ漫画は、男と女がただエッチすれば良いと思ったら大間違いだ!
しっかりとしたストーリーの上で、エッチするからこそ、エロ漫画は虹色に輝くのだ!
——あぁ? 具体例が聞きたいって?
いいだろう、教えてやるよ!
まずは、エッチする場所だ!
ラブホテルや自宅などというありきたりな場所ではダメだ! もっと、性欲を煽り立てるような場所でなくてはダメだ! 緊張と快楽が同時に存在する場所なら100点満点だ!
簡単な例を挙げるなら、日中の公園のトイレ、誰もいなくなった後のロッカールームなどがそうだ!
もちろん、女がすぐに快楽に堕ちるようであってはダメだ!
人間が社会で生活する上で、必ず持っている理性。それが、快楽を全身で味わう度に、卵の殻のようにだんだんとひび割れていく。
そして、もう理性なんてどうでもいい! とにかく気持ちよくなりたい! 早く気持ちよくなりたい! ——と、体の内側から溢れ出す液が抑えきれなくなった結果、その殻を突き破ってドロドロと溢れ出すんだ!
あとは、あとは————
――おっと、すまない。
寝不足で情緒不安定なんだ。許してくれ。
今日はもう疲れた。ほんと早く帰りたい。
連れが買い物から帰ってきたら、さっさと撤収しよう。
――ん? 私が、どこにいるかって?
ここは、東京ビックサイト。
夏のコミックマーケットの3日目だ。
私は、今年も売る側として参加させてもらった。これで連続5年目といったとこだろうか。
今年の夏も、オタクたちは粘液を垂らしながら川のように流れていた。これを眺めていると、ああまたこの季節がやってきたんだなと里帰りしたような気分になる。
幸いなことに、私のサークルは今年も盛況だった。昼前には新刊セットも売り切れ、アクリルスタンドやキーホルダーなどのグッズも全て売り終えた。
今年は、私の描いたエロ漫画がアニメ化したこともあったから、予想以上のオタクが押し寄せた。
私にとってアニメ化は、創作活動の目標の一つだった。
だから、「アニメ化決まりました!」と担当編集に言われた時は飛び上がるくらいに嬉しかった。
――創作活動10周年、そしてアニメ化。
多くのクリエイターにとって、一種のゴールのようなところに私は辿り着いたのだ。
この先、どんなことが待っているのだろう。
どんなエロ漫画を描いていけるだろう。
どんなエロ漫画と会うことができるだろう。
これから訪れるエロ漫画ライフを考えるとワクワクが止まらない。
――いや、ムラムラが止まらない。
――というか、アイツはいつになったら帰ってくるんだ?
(やっぱり、初心者にコミケを一人で回らせたのは失敗だったか?)
ただでさえコミケ会場は広いし、午後を過ぎても割と人が多いからな。
迷子になってても仕方ないだろう。
まぁ、待ってればすぐに帰ってくるだろう。
もしかしたら、手に入れた戦利品とともにトイレに行っているかもしれない。
――そうだ。暇だから、挨拶代わりにもらった別のサークルさんのエロ漫画でも読もう。
小さなリュックサックを木の机の上に置き、そのチャックをゆっくりと開ける。
リュックを逆さにすると、過激な表紙の薄い本たちが滝のようにこぼれ落ちてきた。
実は、コミケのような即売会では、クリエイター同士の恒例のやり取りがある。
知り合いの作家に挨拶に行く時は、自分の作った同人誌を渡す、というものだ。
(さてさて、同業者たちはどんなエロ漫画を描いているのかなーっと)
ペラペラとページをめくる。その度に過激なイラストが目に飛び込んでくる。
――まぁ、かれこれ10年もエロ漫画を描いている私にとっては、エロいイラストを見たところでなんとも思わない。
言ってしまえば、私がエロ漫画を読むことなんて、日常的にTwitterを眺めるのと大差ない。
私は目だけを素早く動かす。次から次へと、エロ漫画に目を通していく。
――1冊目。
――2冊目。
――3冊目、4冊目。
読み終わった薄い本を、一つ一つ鞄に戻していく。
「はぁ……」
大きくため息をつく。
残念ながら、どうやら今年も私をうならせるようなエロ漫画には出会えないようだ。
「絵は、エロいんだけどなぁ……」
一般的に見たら、どのエロ漫画もどちゃクソエロい。
私だって、無理やり抜こうとすれば全然抜ける。それは間違いない。
――だが、ダメだ。シチュエーションがイマイチなのだ。
どれもこれも私の求めるものではない。
目が肥えすぎてしまった私にとっては、普通のシチュエーションじゃ満足できない。
実際、私は、自身を満足させるエロ漫画がなくなったから、エロ漫画を描き始めたのだ。
とにかくシチュエーションがエロい。そんなエロ漫画を追い求めて、クリエイターの世界に飛び込んだのだ。
――だが、ここ数年、他の人が描いたエロ漫画を読んでいて全くムラムラしない。
シチュエーションが化け物級のエロ漫画にもう何年も出会っていない。
私を痺れさせるようなエロ漫画はもうこの世にはないのだろうか。
やはり、私を満足させられるのは、もう私以外にいないのだろうか。
夏の暑さで頭がぼうっとしていく。
私の後ろで開いているシャッター。
開かれた景色の向こう側からは、ミンミンゼミが求愛の叫びを轟かせている。
「ミーン。ミーン。ミーン。
ミーン。ミーン。ミーン。
ミーン。ミーン。ミーン。ミーン。
ミヤアアアアアアアアアアアッーーー♂」
ほんと盛んなオスどもである。
彼らの言葉を人間語に翻訳すると、
「ねぇ、だれかあああああ!
だれかああああああああ!
俺の子どもを孕んでくれえええ!」
と叫んでいるようなものだ。
つくづく、セミの声が人間に分からなくて良かったと思う。
私は、そんなどうでもいいことを考えてしまうほど疲れ切っていた。
いつも昼過ぎに起きる私にとって、コミケ当日、朝7時起きなんて地獄でしかない。
サークル参加だからまだいいものの、そうじゃない人は、太陽も登らないうちからコミケ会場に並ぶのだ。ほんと信じられない。
「はぁ……早く家に帰りてぇ……」
あんぐりと大きな口を開けて欠伸をする。
私は、自室が何よりも好きだ。
何百、何千冊というエロ漫画に満たされた私の部屋。それは、極上のムラムラに満たされたプライベートルーム。
あの空間に包まれていないと私はどうにかなってしまう。
このコミケだって、『
――ああ、一秒でも早く部屋に引きこもりたい。
私は、眠目をパチパチとさせる。首にかけていたタオルで額の汗を拭った。
「まだ、帰って来ないのかよ……クソ童貞が」
変哲のない木製の机。自販機で買ったお茶は、今ではもう空っぽだ。
私は、やれやれとでも言うように、後ろに垂らした長い黒髪を掻いた。
ふっーと一息つく。目を大きく見開いて眠気を覚ます。
5冊目のエロ漫画を手に取った。
「さて、次は誰のエロ漫画かな――」
表紙に目をやった――その時だった。
「――っ!?」
脳内に大きな衝撃が走る。
(なんだこれ……?
エロ漫画のくせに…………
こんなエロ漫画を手にしたのは生まれて初めてだった。
普通、エロ漫画というものは、表紙にムラムラを掻き立てるようなイラストが来るものだ。
(エロ漫画じゃないのか……?)
一瞬、そう思った。
だが、隅の方にしっかりと「R18」というマークが刻印されていた。
それなら、大人の本に間違いない。
表紙をめくろうと、真っ黒なエロ漫画に手をかけた。
――なぜだろう。ざわざわと胸が喚いている。
怖いという感じではない。どちらかといえば、好奇心というやつだ。
禁止されたものを覗き込んでしまうような、あのドキドキとした感覚。
恥ずかしさと緊張が入り混じったような不思議な気持ち。
その胸の高鳴りは、初めてエロ漫画を手に取った時と同じだった。
ピクピクと手が小刻みに震えている。
私は、恐る恐るページをめくった。
――1ページ目。
目に飛び込んでくるHなカラーイラスト。
早々に展開される濃厚なエッチシーン。
(……予定調和だ。最初の引きは肝心。初っ端から色付き漫画や本番シーンを入れるのはよくある手法だ。私だってよくやる)
――2ページ目をめくる。
またもやカラー付きの漫画。
へぇー驚いた。
どうやらこの漫画、全ページカラー印刷のようだ。
(全ページカラーなんていつぶりだ?
――というか、中身が全ページカラーなのに、なんで表紙は真っ黒なんだ? この作者は一体何を狙ってこれを描いたんだ?)
作者視点で野暮なことを考えながら、私はエロ漫画のセリフ一つ一つ、そして、描写一つ一つに目を通していく。
平穏な日常。うぶな女の子。
彼女が抱える辛い過去が展開されていく。
そして、今流行りの中世ヨーロッパのファンタジー世界。
さらに、その世界観に一癖を出してくる、『あらゆるエロが禁止された』SFチックな世界。
(ふーん。面白そうじゃん。――まぁ、初めに、キャラ設定と世界観を出すのは当たり前だけどな。そうしないと、ただエッチしてるだけの
――3ページ目。4ページ目。
次から次へとエロ漫画を読み進めて行く。
(なんだこれ……。随分と話の作り込みが細かいな。シチュエーション厨を自負する私でもここまで作り込んで書かないぞ)
――折り返し地点。ページ数は残り半分。
気づけば、私はそのエロ漫画にどっぷりと浸かっていた。
ページをめくる手が止まらない。
股の辺りがムラムラと疼く。
(ついに来た、本番シーンっ! 流れも順調!シチュエーションも悪くないじゃん!
――さあさあ。これからどうなる!? どうエッチする!? どう最後のシーンまで持っていく!?)
私は、エロ漫画を初めて読む中学生のようだった。夢中になってHな本にかじりついていた。
「あぁ……いいよ……。このシチュエーションたまらない……」
思わず声が漏れてしまう。
濃密なHシーンが、私の脳みそをピリピリと刺激する。
「あぁ……あぅ……」
机の下へ、左手が潜り込んでいく。
むずむずと疼く股。
いじらずにはいられなかった。
「……んっ」
2枚の布越しに感じる感触。
汗ばんだ肌、擦れる下着。
頭の奥底から沸々と熱い液体が湧き上がってくる。生物的衝動が抑えられない。
(なにこれ……やばい……)
ひたすらにページをめくり続ける。
そして、1度目の絶頂シーンが訪れる。
だが、それだけではページは終わらない。
物語は、ピンク色にうねった波をがっちりと掴んだまま、2度目の絶頂へとシーンが加速していく。
股をいじる私の手のスピードがどんどん速くなっていく。
体が火照っていく。鼻息が荒くなっていく。
(ダメっ……このままだと……)
ブルっと体が震える。
私の前を人々が通り過ぎていく。
だが、私がオナニーをしていることに誰も気づきはしない。
隣のサークルの楽しそうな笑い声がぼんやりと耳に伝わってくる。
(このままだと……イクっ!)
高まったテンションは、2度目の絶頂シーンに到達し脳内で爆発を起こす。
――だが、しかし。
その爆発はすさまじい爆風を巻き起こした。小休憩を入れることなく、3度目の絶頂――最後の絶頂へと突き進んでいく。
残り8ページもない。もうそろ、クライマックスがやってくる。
(やばい――やばいって――)
こんなところで自慰行為をしているのを見つかったら、次回のコミケは
インターネットを介して誇張が膨れ上がり、活動休止に追い込まれることも考えられる。
(でもっ――でもっ――!)
数年ぶりに出会った
自分の全てを失っても良い。
とにかく、今ここで、
その「
その「
味わずにはいられなかった。
私は、ページをめくってしまう。
そして、最後の絶頂シーンが訪れた。
「――んあああああああああああああっ!」
目に映る、史上最強の絶頂シーン。
積み上げられたシチュエーションが束となって私の全身を駆け抜けていく。
「と、と、と――――
股の間に、人差し指が思いっきり押し込まれる。それと同時に、頭に激しい電流が走った。
視界がぐわんと揺れ、脳内の太い血管がブツリと切れる。
大きな音を立てて私は椅子から転がり落ちた。
両方の鼻から熱い血液がだらだらと流れ出す。意識がどんどんと薄くなっていく。
「あっ……あっ……」
体の感覚がなくなっていくのに、私の頭の中は、パステルな幸せ色でどんどん塗りつぶされていった。
(エロ漫画で死ねるなら、本望だな……)
駆け寄ってくる足音。
騒々しい人々。
――私の意識はそこで途切れた。
夏のコミックマーケット3日目。
謎のエロ漫画が尊すぎたあまり、
私はリアルに死んでしまった。
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