Scenario.8
教室につく。一時間目は大教室での講義だった。一番後ろの席に腰掛けて教科書を広げる。
さぁ、杖に書いたことが実現するならば、今から誰かが俺の服を褒めるはずだ――
「おはよう」
と、俺は横から声をかけられる。そこには、去年ホームルームが同じだったリチャードがいた。ものすごく仲がよかった訳ではなかったが、班が同じだったので会えば話をする程度の仲だった。
「おはよう」
俺はそう返す。リチャードは俺の一つ隣に腰掛けてバッグを足元に置いた。
そして――
「今日、なんかオシャレだね」
彼は、確かにそのセリフを言った。
――シナリオの通りだ!
時計を見ると、時間もピッタリだった。
「いや、別にお前と同じローブだろ」
声を少し上ずらせながら、用意していた台詞を言う。すると、彼は的確にボールを返してくる。
「そうなんだけどさ。なんて言うか、着こなしがさ、いい感じ」
前後に余計なセリフがついているが、多分シナリオ通りの言葉が入っている。
――普通に考えて、制服をオシャレなどと褒められるわけがない。流石にこれだけ立て続けに思い描いたことが実現すれば、偶然ということはあるまい。
やはり、杖の力は本物なのだ。
一気に高揚感に包まれる。
――まるで神にでもなったような気分だった。
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