幼馴染の聖賢女と元貧弱格闘家は闇ギルドと対面する

  リッカとアヤは牢から脱出した後、念のため他の牢にティファがいないかを確認した。しかし、どこを探してもティファはおろか人1人牢に入れられた者はいなかったので、この部屋への出口と思われる扉にアヤは手をかけた。


「……鍵がかかってませんね?最悪見つかってもいいから蹴破ろうと思っていたのですが……」


「あの牢屋あまり使用された形跡がなかったし、鍵はもう前に紛失したのか……あるいは私達の事をそれだけ舐めてるのか……」


リッカは忌々しそうにそう口にしたが、とにかく今はティファを探すのが先決と頭を切り替える。アヤはゆっくり慎重に扉を開けた。


「これは……?」


「まぁ、あんな地下牢があるぐらいだもの。大方予想していた通りだわ」


扉を開ければ、そこはとても広い廊下だった。床にはいかにも高級感溢れる絨毯が敷いてあり、廊下の所々にはいかにも高級そうな調度品が置いてあった。


「これは……貴族の屋敷……ですか?という事は……私達を攫ったのはアスファルト領の領主……!?」


「宿屋寝てる間にとはいえ、そんなに何時間も眠ってないでしょうし、十中八苦間違いなくそういう事でしょうね」


リッカは重たい溜息をついてそう答える。正直、自分達が何時間寝ていたかは分からないが、1日ぐっすり寝た感じもしないし、数時間でこのような地下牢がある貴族の屋敷がある場所と言ったら、答えはアスファルト領の領主屋敷しかない。

  それだけじゃない。恐らく今アスファルト領で起きている事件の主犯もアスファルト領主だろう。そう考えれば色々納得がいく。何故、これだけの事件が起きたのに解決しないのか?国がどうして問題解決に動かないのか?当然だ。ここの領主が犯人なら解決に真剣に動かないし、アスファルト伯爵は商業でこの国を潤した実績のある貴族だ。国の動きを上手く止める事も容易いのかもしれない。


「しかも……!?からかい半分で言った事が本当になるなんて……!?」


自分達とティファだけが切り離された理由。それは一つしか考えられない。犯人に狙われている小さな女の子の対象にティファも入ってしまったのだ。やっぱり、ティファにもっと警戒魔法とかをかけておくんだったとリッカは後悔した。


「けど、ティファなら大丈夫じゃないでしょうか?」


「まぁね。あの娘は規格外の防御力にとんでもスキル持ちだからね。下手な事でやられはしないでしょうけど、私達みたいに装備品を装備してるか分からない。大盾なかったらあの娘に攻撃手段がないのも事実よ」


ティファのスキル『シールドパニシュ』も『プロリフレ』も大盾がなけれは使用出来ないスキルだ。まぁ、『シールドパニシュ』に関してはどのみち使用出来ないが、とにかく、大盾が無いのならティファには攻撃する術がない。ティファの攻撃力は0なので、いくら叩いても全く痛くないのだ。


「それもそうですね!とにかくティファを探しましょう!」


「えぇ!」


そして、2人は広い廊下を慎重に移動した。ある程度慎重に移動を続けて2人はある事に気づく。


「人の気配がしませんね?」


「そうね」


2人共冒険者なのでそれなりに気配には敏感だ。残念ながら昼はマリーのスライムにやられたが、それでも、2人共全く人の気配を感じないのは不審を通り越して不気味である。


「普通こういう屋敷には使用人とか、見張りの騎士とかいるはずでは……?」


「どう考えても貧乏貴族でもないし、普通は間違いなくいるわね」


だが、どれだけ廊下を歩いても全く人の気配がしない。しまいには2人共警戒を緩めて廊下を歩き出す。扉を開ける時だけ慎重に開けながら、2人は広い廊下を進んで行くと……


「ここは……?玄関ホールかしら……?」


  進んだ先にあった扉の一つを開けると、玄関ホールと思わしき場所にたどり着いた。2人は辺りを見回すがここにもティファがいないと確認し、階段を上った先にまたいかにもな大きな扉があったので、2人はそこに進もうとしたのだが



「お目覚めのようでなによりだ」


突然せんな声がして、2人が慌てて振り向くと、そこには全身真っ黒な服を着たフードを目深に被った者がいた。フードのせいで顔は見えないが、声の感じから男ではないかと2人は推測した。


「貴方!?何者なの!?この屋敷の関係者なの!?」


リッカはそう叫びが、背中から冷や汗をダラダラ流している。先程2人で念入り玄関ホールを確認したのに、突然自分達の目の前にこのフードの者は気配を悟られる事なく現れたのである。強気に発言したリッカだが、そのフードの者の得体の知れなさに僅かな恐怖を感じていた。


「関係者と言えば関係者か。私はここの領主が望む物を与えてやってるからな。闇ギルドの商売人として」


「闇ギルドですって!?それはとっくの昔に自然消滅したはずじゃ!!?」


「それはお前達がそう思ってるだけだ。闇ギルドは魔王が討伐された後でも密かに活動していたさ。こんな物をここの領主に提供したりな」


フードの者が指をパチンと鳴らす。すると、突然フードの者とリッカ達の間にかなりのサイズの魔物が出現する。

  それは、顔は女性のようにも見えるが、鋭い牙にギラギラと血のように赤い瞳に緑色の顔。おまけに、髪の毛らしき物は無数の小さな蛇のような物が出てきていた。更に下半身も蛇のような形をしていた。その魔物を見て2人は驚愕する。


「んなぁ!?メデューサぁ!!?」


2人の目の前に突如Bランク指定のメデューサが出現した。

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