貧弱の格闘家のステータスは全て10

「ごめんなさい!?ごめんなさい!?私が肩がぶつかったせいで瀕死の重症を負わせてしまった本当にごめんなさい!!?」


ティファは先程の人通りの多い商店街から少し外れた場所にある通りで、ひたすら先程自分が瀕死させてしまった少女に土下座していた。そして、謝罪を受けた少女の反応はというと……


「こちらこそ本当に申し訳ありませんでした!?私がこのような貧弱なばかりに!お2人に多大なご心配とご迷惑をおかけして!?しかも!蘇生魔法という強力な回復魔法まで使わせる事になってしまい!?誠に申し訳ありませんでしたぁ!!?」


先程瀕死状態に陥っていた少女も、ティファ達から事情を聞き、顔を先程とは違う意味で真っ青にさせ土下座して2人に謝罪していた。2人でひたすら土下座して謝罪し、「いや!私が悪いんです!?」と不毛な言い合いをしてるのを見て、リッカは呆れたように溜息をつく。


「はいはい。もうとりあえずお互いに悪かったって事で、お互いに謝罪を受け入れて終わりって事にしましょ」


リッカの言葉に、ティファと少女も自分達の言い合いの不毛さを感じたのか、苦笑を浮かべ2人共立ち上がった。


「ところで……貴方……その格好からすると冒険者よね?職業は格闘家で合ってる?」


「はい!私は冒険者で職業は格闘家!アヤ・サクライと申します!」


「えっ!?姓があるって事は!?まさか貴族の方なの!?やっぱりごめんなさい!?いや!?申し訳えりませんでしたぁ〜!!?」


基本、ギルドディアで姓を持つの貴族か王族のみで平民は持たない。なので、ティファはアヤと名乗る少女が貴族だと思ったのだが、アヤは慌てて手を横に振って否定する。


「いえいえ!?違います!?違います!?私は東方国の出身の為姓があるだけなんです!?うちの家は……まぁ……普通ではないんですが……少なくとも貴族のような身分ではありません!?」


「あぁ、そういえば東方国は誰でも姓を持ってるんだったわね」


リッカは前に読んだ東方国関連の本にそう書いてあったの思い出しそう言った。東方国はとにかくギルドディアを含めた他の国とも違う文化を持ち、偉い身分の人もそうでない人も姓を持っているのも文化の違いの一つである。


「そうだったんだ……それで……えっと……サクライさんって呼んだ方がいい?」


「いえ、アヤで大丈夫です」


「それじゃあ、アヤちゃん。その……何でさっきは何で私と肩がぶつかっただけで倒れたの?その……私も冒険者だけど……攻撃力はかなり少ないし……」


あえて自分の攻撃力は0である事は伏せてティファがそう尋ねると、アヤは困った表情を浮かべ


「その……実は……私……!貧弱体質のステータスなんです!!」


「はぁ?とても貧弱には見えないけど……ってか格闘家なのに貧弱ってどうなの……」


「私もどうかとは思うんですが……残念な事に全てのステータスが10しかないんです……HPやMPも含めて……」


「えっ!?嘘!?『サーチアイ』!!…………うわぁ!?本当だ!?HPもMPも含めたステータスが全部10だよ!?」


「なるほどね……だからティファと肩がぶつかっただけで瀕死になったのか……」


リッカはようやくティファと肩がぶつかっただけで瀕死になった理由を知る。全てのステータスが10ならは当然だろう。と言っても、ティファの攻撃力は0なので、ティファにやられたというより、ティファの着てる鎧の固さにやられた可能性が高いとリッカはにらんでいる。


「ねぇ、それって貴方……格闘家の職業と相性が悪いんじゃないの?」


リッカの言葉通り、冒険者職業がその人にあまりに適していないと、貧弱なステータスになってしまう事がよくある。リッカはそう思って指摘したのだが


「いえ!?そんな事はないです!?東方国の冒険者ギルドで格闘家と自分が相性がいいのは確認しましたし!登録した当時はこんな感じではなかったんです!?ただ……ある日を境にこのようなステータスに……」


「いや、突然このステータスになるって一体何があったってのよ……」


「……ん?あれ?」


『サーチアイ』を発動したまま、アヤを見て首を横に傾げている幼馴染にリッカは声をかける。


「どうしたのよ?ティファ」


「うん。あのね……アヤちゃんのステータス……10の数字の横にドクロマークが付いてるんだけど……?」


「はぁ!?それって……呪い状態じゃない!!?」


ティファの『サーチアイ』のスキルと、リッカの言葉により、アヤのステータス異常の原因がアッサリと判明したのだった。

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