大盾使いの少女は無事にホウオウを討伐する
突如巻き起こった爆破で、リッカが使用した『マジックチェーン』は砕け散った。色々起こる突然の出来事に動揺するリッカだが、爆発が自分の所まで迫ってるのを見て、すぐにもう一つのスキル『マジックシールド』を発動する。
このスキルによって出来たシールドは、リッカの魔力で出来たシールドで、攻撃を受ける度にリッカの魔力数値は削られてしまうが、リッカの魔力数値は900000なので、そう簡単に削られ消える事がないティファ並とはいかないが、通常の大盾使いの防御より高いと自負していたのだが……
「へっ……!?嘘……!?きゃあぁ〜!!?」
なんと、その爆発の余波だけでリッカの『マジックシールド』は砕けてしまい、リッカは爆発の余波により吹っ飛ばされ、自身がいた場所より数十m以上離れた場所まで飛ばされ、その場で倒れ気絶した。
「うっ……う〜ん……?」
ようやく気絶から目を覚まし、リッカはゆっくり起き上がる。リッカはなんでこんなに所で寝てたんだ?と思ったが、徐々に意識回復するにつれ、先程の戦闘を思い出して慌てて立ち上がる。
「ティファ!?ティファは無事なの!?って!?何コレぇ!!?」
リッカはすぐにティファとホウオウが対峙した場所に向かい驚愕で目を見開く。
ティファとホウオウがいた場所を中心に、半径数kmに及ぶ巨大なクレーターが出来ていたのである。あまりの光景にリッカは思わず呆然と立ち尽くしてしまう。が、すぐにティファの事を思い出し、リッカはもう一度大声でティファを呼びかける。
「ティファ〜!?ティファ〜!?無事なら返事して!!?」
リッカの頭に嫌な予感がよぎる。これだけ巨大なクレーターが出来る程の爆発が起きたのだ。その中心地にいた彼女が無事な訳がない。そんな考えが頭をよぎりリッカは首を横に振る。
「……〜い!リッカ!!……っちだよぉ〜!!」
「えっ?この声は!?」
小さく自分を呼ぶ声がして、リッカはその声がする方を探す。間違いない。あの声は間違いなくリッカの大事な幼馴染の声だ。リッカはふと、爆発の中心地に目を向けると
「お〜い!リッカ!!こっちだよぉ〜!!」
「ティファ!!?」
爆発の中心地で、呑気にも笑顔を浮かべながら手を振ってる幼馴染を見つけ、リッカは急いで降りてティファのいる所まで走って向かい、ティファに近づくとガシッとティファの肩を掴む。
「ティファ!?無事!?無事なのね!?怪我はないの!!?」
「う……うん……特にダメージも負ってないし平気だよ……って!?リッカこそ!?その髪の毛!?どうしたの!?」
ティファは自分の無事を伝えるも、リッカの髪の変化に驚きそう叫んだ。綺麗な真紅の髪色が、全部真っ白になっているので、ティファは驚くのも無理はない。先程リッカを呼びかけていた時は、リッカだという認識はあっても、髪の毛の色までは分からなかったのである。
「あぁ、これ?職業が魔術を使う者ならよくあるやつで、魔力数値が0になると髪の毛が真っ白になっちゃうのよ。一晩ゆっくり寝れば魔力数値も戻るし、髪の毛の色も戻るから心配する必要ないわよ」
リッカはなんて事ないようにそう説明した。実際、この現象はよくある話で、魔術を使う者は魔力を込める事で、自身の魔法の威力を上げる為、すぐに魔力数値が0になりやすい。そして、0になると髪の毛が真っ白になるのも魔術を使う者なら当たり前に知ってる話だ。一晩寝れば元に戻るのも含め。ただ、リッカは900000という魔力数値の持ち主なので、この現象が起きたのは、冒険者登録してから初めて起きた現象というだけである。
リッカの説明を聞いて、大した事ではないと分かりホッと安堵の溜息をつくティファ。しかし、何故リッカの魔力数値がいきなり0になったのか疑問に思って尋ねると
「あの爆発の余波で『マジックシールド』が砕けたのよ。『マジックシールド』は私の魔力で作ったシールドだからね。それが砕けたって事は、私の魔力数値が0になる程削られる威力だったって訳ね。あの爆発の余波でだから末恐ろしわ……本当……」
ティファはリッカの説明に徐々に顔が真っ青になる。ようは、リッカの髪の毛が変化してしまったのは自分のスキル『シールドパニッシュ』のせいである。ティファはリッカにすぐに頭を下げる。
「ごめん!!リッカ!!私のせいでリッカの魔力を!?」
ティファは謝罪の言葉を述べるが、リッカは軽く溜息をつき
「別に全く気にしてないから謝罪は必要ないわ。むしろ、ティファがどうにかしてくれなきゃ、それこそこの程度の被害で済まなかったはずだからね」
リッカは本心からそう言った。実際問題、ティファが『シールドパニッシュ』を使わなければ、撤退先々の町や村に被害が出て死人は沢山出ただろうし、リッカ自身ももしかしたら死んでいたかもしれない。それを考えれば、1日休めば元に戻る髪色や魔力なんて大した被害とも思っていない。
だが、ティファはそれでも気にしてしまう。リッカは冒険者になってもオシャレにはこだわりがあり、あまり言わないが、自分の真紅の髪の毛を気に入っていてきちんとケアしているのを知っている。だからこそ、ティファはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
「それより、一応念の為に聞くけどホウオウはどうなったの?」
「えっ?あっ、うん。多分……アレ……かな……?」
リッカがティファの気持ちは察し、話題を変えるようにそう声をかけると、ティファは自分の後方にある物を指差す。そこには、ゴブリンロードの魔石よりも2回り程大きく、色も虹色に輝く魔石が転がっていた。しかも、魔石の近くにはホウオウがドロップしたと思われる「ホウオウの羽根」が数枚落ちていた。
「まぁ、ここにいて全然襲ってこないから倒したとは思ってたけど、なんかあまり実感が湧いてこないわねぇ〜……」
「うん。私も同じ気持ちだよ……」
ティファ達は2人だけでSランク指定のホウオウを倒した。その証拠の魔石もしっかり転がっているのだが、2人は未だに討伐した実感が湧かず、ただ呆然とホウオウの魔石を眺めていた。
「……それにしても……まさかこれ程の威力になるとはね……」
しばらくホウオウの魔石を見つめていたリッカは、再び『シールドパニッシュ』によって出来たこの惨状を見て溜息をつく。ティファは「あはは……」と乾いた笑みを浮かべるしか出来なかった。
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