大盾使いの少女はギルドに依頼達成の報告をする

「シンシアさん!無事に依頼を達成しました!」


ティファは元気よく冒険者ギルドの扉を開けると、開口一番シンシアに依頼達成報告をした。シンシアもそんなティファを笑顔で出迎える。


「はい。マルム村からの村長からもお話を伺いましたよ。頑張りましたね。ティファちゃん」


「はい!それとシンシアさん聞いてください!私!1人でゴブリンを何体も倒せたんです!それに!ゴブリンロードも一体倒したんですよ!」


嬉しそうに今回の依頼の顛末を語るティファ。そんなティファをまるで母親のような顔で聞くシンシア。そんなはしゃいでる幼馴染に呆れて溜息をつきつつも、嬉しそうに笑うリッカ。



 ティファが初めてゴブリンを討伐したあの後、ようやく落ち着いてきたティファは再びリッカと一緒に森を見て回った。その間何体ものゴブリンを討伐。それで、ようやく異常事態に気づいたゴブリンロード達がティファ達の前に現れた。

 流石のゴブリンロードの出現に、ティファは先程の緊張感が戻ったものの、冷静にいつも通り『挑発』で敵の攻撃をこちらに引きつけ、ついでに『サーチアイ』も使用した。そして、完全にティファの必殺技のようになったスキル『プロリフレ』でゴブリンロードを一体撃破。謎の攻撃で仲間のゴブリンロードがやられて驚愕して固まって隙だらけのゴブリンロードをリッカが魔法で焼き尽くした。

 ティファがゴブリンやゴブリンロードの魔石を持ってルンルン気分でマルム村に戻った。最初は村長はまた失敗したのかと落胆したが、ティファが100以上あるゴブリンの魔石と、ゴブリンロード3体の魔石を見せて村長に報告した時、村長は目を丸くして驚いた。

 その後、村長は手のひらを返すようにティファ達に態度が悪かった謝罪と、依頼を達成してくれた事の感謝の礼と、それからまた今後村で同じように困った事があったら助けて欲しいと土下座するようにお願いされた。その間、ティファは恐縮しっ放しだった。



「ははは!ティファ君は随分とはしゃいでるねぇ。まぁ、無理もないか。初めて魔物を1人で討伐した上に、ゴブリンロードという大物まで仕留めたんだからはしゃいで当然か」


はしゃいでシンシアに話すティファを笑顔で見つめながら、エルーシャはリッカの横に立つ。リッカはチラッとエルーシャを見たが、特に何も言わずに未だはしゃいでる幼馴染を見る。


「しかし、流石はヒルダというべきか。ティファちゃんの∞の防御力を活かすスキルをすぐ見つけてくるんだからね。やっぱりティファちゃんは最高の逸材だねぇ」


「当然でしょ」


リッカはアッサリとそう言い返す。そんなリッカを見てエルーシャは苦笑を浮かべる。


「それにしても……リッカ君。君はいつからティファ君の強さに気づいたんだい?」


エルーシャはリッカが誰よりも早くティファの強さを知っていたと踏んでいる。だから、いつ気づいたのか気になって尋ねたらとてつもなく予想外な返答が返ってきたのである。


「あの娘が冒険者になる前からよ」


「へ?」


まさか、冒険者になる前から気づいたという予想外の回答に、エルーシャは目を丸くして驚く。リッカは軽く溜息をつき


「ティファの家族が魔物に襲われて死んだのは聞いてるわよね」


「あぁ、それが冒険者になろうと思ったきっかけだというのも耳にした事がある」


「あの娘、自分家族の元へ行こうと魔物がいる森に1人で入って行ったのよ」


そのリッカの言葉にエルーシャは再び驚く。だが、家族を全て失ったティファが、そういう想いにかられても無理からぬ話かとも思った。


「まだ町に滞在してくれた冒険者さんと一緒に森でティファを捜索して、ティファは無事保護されたわ。それも、無傷でね」


リッカの言葉に更に驚くエルーシャ。魔物が住む森で小さな女の子が1人で無傷で済むなんてあり得ない。


「町のみんなはティファがすぐに居なくなったのに気づいて、運良く魔物に襲われずに保護出来たって思っている。けど、私冒険者がポツリと漏らした言葉を聞いたのよ……」



『ここに複数の魔物の足跡があるのに何故……?』



「……なるほど……つまりティファちゃんは冒険者になる前から防御力が異常に高かったのか……末恐ろしい限りだよ……まだ冒険者登録する前の少女がなんだからねぇ……」


エルーシャは腕を組んで苦笑を浮かべながら、規格外の防御力を誇る少女を見つめる。


「だとしたら、あの愚かな冒険者は本当にとんでもない逸材を蔑ろにしてきた訳だ……ある意味でこっちも末恐ろしいねぇ……」


「その愚かな冒険者だけど……もしかして私達が達成した依頼。その前に引き受けて失敗したのって、その愚かな冒険者かしら?」


リッカがエルーシャの方を見てそう聞くと、エルーシャは苦笑を浮かべ


「おや?やっぱり気づいたかい」


「当然でしょ。この王都のBランクパーティーでゴブリンロード3体の討伐任務に失敗するなんて、それ以上の魔物が出た時だけよ。逸材を追い出したせいで自分の本当の実力に気づいていない愚かな冒険者だけよ」


リッカは溜息をつきながらそう言った。

 王都ギルドディアの冒険者は、他の国の冒険者に比べるとかなりレベルが高いと言っても過言ではない。上のランクであればある程その実力は桁違いである。

 そんな優秀なランクのパーティーが、自分達のランクより下位の魔物にやられて退散したなんてあり得ない。それこそ、先程言ったような事態が起こった場合のみである。しかし、その場合もっとギルドが慌ただしくなったり、村人に緊急避難が出されてるはずだがそれも無いので、リッカの中で答えは一つしかなくなったのである。


「これで彼にはよい薬になるといいんだけどねぇ〜」


「無理でしょ。バカにつける薬はないわ」


リッカは軽く溜息をついてそう返した。エルーシャはそんなリッカを見て再び苦笑する。


 その後、ようやくシンシアに依頼達成報告をしたティファは、リッカと一緒にゴブリンロードがドロップした素材をコックルさんに渡す為、コックルの店に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る