ガブリィsideストーリー3

 ティファとリッカがパーティー組んで初めての依頼達成したその日、ガブリィは酒をグイッと煽り、空になった酒瓶を床に叩きつけた。


「ちきしょおぉ!?何でゴブリンロード如き倒せないんだよぉ!!?」


 ガブリィは怒りでそう叫んだ後、怒りを現在のパーティーメンバーである3人にぶつける。


「だいたい!?お前らがしっかりゴブリンロードを2体抑えておかねぇからだぞ!?」


ガブリィは3人を睨みそう叫ぶ。しかし、言われた3人は疲れたように溜息をつく。正直、依頼を失敗して帰ってきてから同じ事を何回も言われ耳タコな3人だ。


 

 あのガブリィの召集があった後、ガブリィはもう3人のメンバーだけでもいいから、リッカを探し出しティファに痛い目を合わせるように命令した。

 だが、ティファを崇拝してるところがある3人がそんな命令を聞けるはずもない。なので


「そんなやり方するよりも自分達がどれだけ素晴らしいかをリッカさんにアピールすればリッカさんも戻るのでは?」


と、多分ないだろうなと思いながらもそう言って、ガブリィを説得した。ガブリィもその言葉を受けそれもそうか納得し、次の日に依頼を受けに行くぞと3人に指示を出した。

 そして、翌日にガブリィが選んだ依頼が突然現れたゴブリンロード3体の討伐と聞いて3人は絶対無理だろう。これもう死んだと思った。が、よく自分達の対応をしてくれる受付嬢が3人にある物を手渡してきた。


「これ。どうぞ。危なくなったらすぐに使ってくださいね」


そんな言葉と笑顔付きで渡されたのが、魔物との戦闘から逃げる為に使用するアイテム「煙幕」が数点入った箱だった。この受付嬢、失敗すると分かってワザとこの依頼を受理したんだと3人は知り、3人は引きつった笑みを浮かべるしかなかった。


 そして、結果は受付嬢や3人の想像通り散々な結果だった。雑魚のゴブリンは何とか数体討伐出来たが、ティファが居なくなったせいで無傷という訳にはいかず、ガブリィもゴブリンロードに会う前に相当疲弊していた。

 更に、肝心のゴブリンロードの戦闘では、3人は3人でゴブリンロード1体に対処するのがやっとで、ガブリィ1人でゴブリンロード2体を相手に奮闘するしかなく、これまでゴブリン達に疲弊させられたガブリィが敵うはずなく敗北。3人はこれは無理だと判断して「煙幕」を使用して退散した。



「だいたい!お前らだってゴブリンロードを討伐した事があんだろうがぁ!?」


確かに、ガブリィの言う通り3人はゴブリンロードを討伐した事がある。しかし、3人がゴブリンロードを討伐出来たのは


「だから、それも何回も説明したじゃないですか。俺らが討伐出来たのはティファさんのおかげだって」


あの時は、討伐依頼が出されたのはゴブリンロード1体のみで、ゴブリンロードの攻撃は全てティファが引き受けてくれたからこそ、3人が何度もゴブリンロードに集中攻撃をしたおかげで勝てたのである。それについては何度も3人はガブリィに説明してきたのだが、どうしてもティファを自分より下だとみてるのか聞いてくれなかったのである。


「ちきしょおぉ……!?どいつもこいつもティファティファと……!?あいつは役立たずのグズなんだぞ!?みんなそれを分かってねえんだ!?」


いや、分かってないのはあんただ。と、3人はツッコミをいれたかったが、言葉を飲み込んでグッと堪える。言えば、自分達に八つ当たりがくるので黙ってる方が得策である。


「おい!明日また冒険者ギルドに行ってゴブリンロードを倒しに行くからな!!」


ガブリィはそう宣言するが、3人は恐らくガブリィはもう依頼は受けられないだろうなぁ〜と予想し深く溜息をついた。



「ガブリィさんのパーティーメンバーランクはBからDランクまで降格。ガブリィさん個人の冒険者ランクもDランクへの降格です」


「な……!?何でそうなるんだよぉ……!?」


結局、あの後ガブリィは酒の飲み過ぎで酷い二日酔いで、冒険者ギルドに行くのは数日経ってからになった。で、冒険者ギルドに着いた途端、いつもの受付嬢シンシアに冷たい目で最初に告げられたのがそれだった。予想の……いや、予想以上の結果に3人は密かに溜息をつく。


「先の依頼のゴブリンロードとの戦闘の様子。おまけに、依頼を受けて撤退した後も数日間もう一度挑む気配もない。これらを踏まえ、ガブリィさんの冒険者の資質を監査ギルドと考慮した結果決まった結論です」


「なぁ!!?」


シンシアの冷たい眼差しで淡々と告げる言葉に驚き固まるガブリィ。冒険者ギルドだけの決断ならまだ文句を口に出来たかもしれないが、ギルドの天敵と言われる監査ギルドまで同じ結論に達したのではもう覆す事は出来ないだろう。


「あぁ、それと依頼ならもう受付出来ませんよ。その依頼ならすでに。おまけに、1


「なっ!?なんだとぉ!!?」


 とてもいい笑顔でシンシアはガブリィにそう告げる。ガブリィはまるで信じられないといった表情で驚愕していた。3人もそれを聞いて驚愕の表情を浮かべている。

 いや、あの2人ならこの程度の依頼は楽に達成出来るのは3人もよく分かっている。ティファがあのゴブリンロードを1体討伐したという事実に驚いているのである。一体どのような方法で倒したんだろうと3人がガブリィの後ろで密かに話し合いをしていた時だった。


「た……!?大変だぁ〜!!?グスタン鉱山道でホウオウが現れたぞぉ!!?」


「何ですって!!?」


1人の男性冒険者が持ってきた報告にギルド内は騒然となる。シンシアも先程とは変わり緊迫した表情でそう叫ぶ。


 ホウオウ。御伽話などではよく幸せを運ぶ鳥などと言われる鳥だが、冒険者側からしたら全く真逆のSランク指定の超危険種の魔物である。その魔物が現れたとなればすぐに緊急対策をとらねばと、シンシアは周りの冒険者やマスターに声をかけようとするが……


「いや……その実は……まだ報告する事があって……その現れたホウオウはもう討伐されたんだ……」


「はぁ!?嘘でしょ!?」


ホウオウはSランク指定の超危険種魔物。そう簡単に討伐出来る魔物ではない。Sランクパーティーでも恐らく1日はかかるので、ホウオウ発見の報告を受けて何日経っているか分からないが、こんな早く討伐報告まで聞くとはシンシアには信じられなかった。


「う!?嘘じゃない!?たまたま俺も近くに用事があったからそれを目撃したんだ!?間違いない!?」


「……それでは、そのホウオウを討伐したのは一体誰なんですか?」


ホウオウを討伐した者だ。余程名のある者かと誰もが予想したが、冒険者の口から全員を驚かせる名前が聞かされる。


「その……ホウオウを討伐したのは……ティファちゃんとリッカちゃんだ。しかも、リッカちゃんの話だと、とどめをさしたのティファちゃんらしい……」


「な……!?な……!?何ですってぇ!!?」


シンシアが驚愕でそんな叫び声をあげる。ギルド内が先程よりも更に騒然となる。

 そんな中、ガブリィは「う……嘘だろ……」と呟いて呆然と立ち尽くしていた。後ろの3人は、ティファがどうやってホウオウを倒したの熱い予想合戦を繰り広げていた。



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