大盾使いの少女は幼馴染の聖賢女と始動する

 ティファが改めてギルド内を見渡せば、そこにはシャーリィーやマウロー以外の冒険者達もいた。その冒険者達の顔ぶれは昨日自分とリッカを「スカウト」してくれた者ばかりだと分かり、ティファは思わず頭を下げる。


「すみません!!皆さん!!皆さんはせっかく私達を「スカウト」してくださったのにこんな裏切る形になってしまって……!?」


ティファは頭を下げて謝罪の言葉を口にする。が、周りの冒険者達は何故自分達が謝罪されているのか分からずキョトンとしていた。


「ティファ。別にあんたは何も裏切っちゃいないさ」


「えっ……?」


「俺達の「スカウト」を受け俺達のパーティーに入るも、自分がリーダーとなってパーティーを結成するも自由。それが冒険者というものだ」


シャーリィーとマウローの言葉を受け、ティファはゆっくり頭を上げる。周りの冒険者達は誰も怒っている者はおらず、むしろ、自分とリッカがパーティーを組んだ事を歓迎しているようだった。


「それよりも、ティファ。あんたはさっさと私達の所まで上がってきな。ティファのパーティーランクはまだEランクなんだろ?」


「そうだね。まだ結成したパーティーで実績もないからねぇ〜」


シャーリィーがエルーシャにそう尋ねると、エルーシャは苦笑しながらそう答える。

 冒険者ランクには個人だけでなく、パーティーにもランクがあり、個人からだとFスタートだが、パーティーだとEランクからのスタートになる。いくら、ティファという規格外の防御力の持ち主と、「聖賢女」と呼ばれているリッカがいるパーティーでも、まだ実績を積み上げてない以上はルール上Eランクスタートである。


「まぁ、それも時間の問題だろう。2人のパーティーならAランクはすぐに上がるだろうさ」


マウローはニヤッと笑ってそう言った。マウローの期待が込められた言葉に、ティファはプレッシャーでアタフタしてしまう。隣の幼馴染のリッカは「当然でしょ」と言って腕を組んで座っている。


「時に、自分達のパーティーでもどうにかならない時、別のパーティーに依頼を出して一緒に依頼をこなす事もあるさね。もし、ランクが上がって私達の依頼もやれるようになったら、そん時はあたし達を優先に頼むよ」


シャーリィーはニッコリ笑ってティファの肩を叩いてそう言った。ティファはそれを受けプレッシャーで引きつった笑みを浮かべるしか出来ない。


「おい。抜け駆けするな。女狐。ティファ。俺は優しいからな。そんな厳しい依頼を出すつもりはないから安心して俺達を優先して受けてくれ」


「ハッ!?あんたが優しいだって!?厳つい筋肉ダルマの巨漢が何言ってんのさ!?鏡を見てから言いな!!」


「厄介な依頼ばかり引き受けてる女狐よりは優しいさ」


「体力がいる依頼ばっかりの奴が何言ってんだい!?この筋肉ハゲダルマ!?」


「あぁ!?これはハゲじゃねえ!?オシャレスキンヘッドだ!?」


「それのどこがオシャレだって言うんだい!?笑わせるんじゃないよ!?」


自分への依頼協力の話から何故かいつもの口論になる2人に、どうやって止めに入っていいか分からずアワアワするティファ。


「はいはい!2人共!そこでストップだよ」


エルーシャがようやくシャーリィーとマウローの仲裁に入った。エルーシャが仲裁に入って口論はやめたものの、お互いそっぽを向いてお互いを見ないようにする2人。そんな2人を見てティファは苦笑を浮かべる。


「お〜い!ティファちゃん!俺達のパーティーはまだランク低いから!依頼する事があったら受けてくれよな!」


「あっ!てめぇ!?抜け駆けすんな!ティファちゃん!俺も頼むぜ!!」


「こんな野郎の依頼より!お姉さんの依頼を優先しても構わないわよ!!」


ギルド内にいた冒険者達が続々とティファに依頼協力の優先を求めてきて、ティファはその数にプレッシャーを感じるも、同時に胸の中に熱い感情が湧き上がる。


(皆からこんなに期待されてる……!役立たずと言われた私が……!)


ティファは一度深く深呼吸した後、ギルド内にいる冒険者全員を見回して笑顔を浮かべ


「はい!冒険者ティファのパーティーは!皆さんの盾になれるよう!頑張ります!!」


ティファのその宣言に、ギルド内にいた冒険者達は大歓声をあげた。自分で宣言しておいて、冒険者達の大歓声にアタフタしている幼馴染をリッカはずっと優しい瞳で見つめていた。

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