ガブリィsideストーリー

「おい!?俺のギルドポイントが全部無くなってるぞ!?どうなってやがるんだ!?」


教会の治療が終わり、ようやく目を覚ましたガブリィは、リッカにこっぴどくやられた事を思い出し、リッカを探して無理矢理連れ戻そうと考え、ふと何気なくギルドカードを見たら自分のギルドポイントが0ポイントになってるのに気づき、リッカを探すのを一旦諦めて冒険者ギルドに苦情を言いに来たのである。


「ここまで予想通りだと笑えますね」


ガブリィには聞こえないよう小声でそう呟き、クスクス笑うシンシア。呟いた声は聞こえなかったが、シンシアのその態度にガブリィは怒って更に怒鳴り声をあげる。


「てめぇ!?なんだ!?その態度はよぉ!!?」


「申し訳ありません。すぐに確認してまいますので少々お待ちください」


シンシアはそう言って微笑み何故か奥へと引っ込んだ。調べるのは受付にある魔道具でやってるのに、何で奥へ行くんだという違和感はあったが、ガブリィは言われた通り待つ事にした。


 そして、待つように言われてから30分以上経過した……


「おせぇ!?いくら何でも遅すぎるだろう!!?」


こんな時間まで待たされたのに、一向に自分の所に来ない事に怒り叫ぶガブリィ。もう我慢出来ず乗り込んでいってやろうかと考えた時


「やぁ、すまない。待たせたね」


「んなぁ!?ギルドマスター!?」


さっきの受付嬢ではなく、ギルドマスターであるエルーシャが自分の対応に来た事に驚くガブリィ。そんなガブリィを見てエルーシャはニッコリと笑い


「すまなかったねぇ〜。ガブリィ君の件は私が対応するように言いつけておいたからね。ただ、私もギルドマスターとして色々忙しくてね。時間をとらせて申し訳なかったよ」


「お……おう……まぁ、そういう事なら仕方ねぇよ……」


まさかのエルーシャの登場に、先程とはうって変わり大人しくなるガブリィ。それも無理からぬ話で、エルーシャは元冒険者Sランクの冒険者で、かつて単独で紅竜を討伐したと言われる程の猛者である。冒険者を辞めてギルドマスターになった後も、冒険者やギルドが活動しやすいように改善をしていった功績もある。そんな人物を目の前にしたら流石のガブリィも黙らずおえない。


「では、君の用件に関する回答だが……まず、リッカ君からポイントの返還を求められたからだ」


「はぁ!?リッカからだとぉ!!?」


リッカの名前を聞いた途端、ガブリィの怒りのボルテージが上がって、エルーシャの前だというのに怒り叫ぶ。しかし、エルーシャは特に気にした様子もなく淡々と続ける。


「リッカ君は君に違約金を払うよう請求され、仕方なしポイント全額をガブリィ君に譲渡したと言っている」


「当たり前だろ!?あいつはパーティーを抜けるって言ったんだから違約金を払うのは当然……」


「リッカ君は「スカウト」枠だろ。なら、リッカがパーティーを抜けると言っても違約金を払う必要性はない。もしそうだとしたら、同じ「スカウト」で君にクビを宣告されたティファちゃんに違約金を君は払ったのかい?」


「んぐぅ……!?そ……それは……!!?」


エルーシャの淡々とした言葉の反論にガブリィは何も言えなくなる。いや、何も言えないと言った方が正しいだろう。冒険者ギルドのルール上、エルーシャの言い分の方が正しいのだから。


「くっ……!?だが……!?リッカが譲渡した分より明らかに多く取られてるぞ!?それはどうなってるんだよ!?」


リッカに譲渡されたポイント分は諦め、とにかく自分が元々持っていたポイントを取り返そうとそう訴えた。


「それは、リッカ君の訴えがあったからだ」


「はぁ!?あのグズの役立たずの!!?」


ガブリィの言葉に、エルーシャの片眉がピクリと上がる。が、エルーシャは淡々と言葉を続けた。


「君はティファ君にギルドポイントを振り分けてなかったそうだね」


「それがどうした!?パーティーのリーダーである俺にポイントの振り分けが一任されてる!グズで役立たずの奴にポイントを振り分ける必要ないだろうが!!?」


ガブリィの声高々の主張に、ギルド内にいた者達は全員ポカンとなる。エルーシャは軽く溜息をつき


「冒険者ギルド要項第23条。パーティーのリーダーはギルドポイントの振り分けをするが、それは全てのメンバーに平等に配布すべし」


「はぁ?何だよ!?それは!?」


「冒険者の基本的なルールだよ。冒険者は基本自由な職業とはいえ、最低限のルールを守れないといけないからね。確か、パーティーのリーダーになった際に渡した紙に似たような事は書いてあったようだけど読まなかったのかい?」


「うぐぅ……!!?」


エルーシャの言葉にガブリィは言葉を詰まらせる。確かにそのような紙は貰ったが、読まずに捨てたのである。つまり、ルール覚えてないのは自業自得でただの恥だ。


「まぁ、そういう訳だからティファ君がこれまで1年間貰えていなかったポイントをティファ君に返しただけだ。何も問題ないだろう」


「んなぁ!?ふざけんな!!?」


「ふざけてるのはあんたの方さね」


「さっきから聞いていれば恥を大声でベラベラと見苦しいな」


突然背後から声をかけられ、ガブリィは怒り顔のまま振り向いた瞬間、驚愕で思わずその場で尻餅をついた。


「シャーリィーさんに!?マウローさん!?」


現在のギルドディアの2大Sランクに声をかけられ、ガブリィの声は震えて上擦っていた。が、そんなガブリィの事は気にした様子もなく2人はガブリィを睨みながら語り始める。


「あたしらのパーティーは結構大所帯。一軍・2軍・3軍とあるけど、そのどの軍に所属している子らにもちゃんとポイントを振り分けてるよ」


「元々、ギルドはメンバー数に応じたポイントを渡してくれるはずだ。メンバーが多すぎて計算ミスが多い可能性のある俺達ならともかく、メンバーが少ない貴様のパーティーが平等に振り分け出来ないとは言わせない」


まさかの2人のSランクによるギルドへの擁護発言にガブリィは何も言えなくなる。


「くっ……!?くそぉ……!!?」


ガブリィは足がブルブル震えながらも何とか立ち上がりギルドから出て行った。そんなガブリィが去って行く後姿をエルーシャ達は溜息をついて見送った。


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