なんかビャッコ様がやばい回
結局フルルちゃんはマコさんに頼んで、彼女の部屋に泊めてもらった。
まあ年齢的には問題ないわけだが見た目が完全に女子高生くらいだからな…というか前提が違くね?!何考えてんだ自分…
昨日二人が来たのは、僕にアドバイスを求めてだった。
が、もちろんこれと言って大したことはしていないというか事実上サボってたようなモノなので「心を通わせることが大事なんだぜ」とそれっぽい事を言ってみた。
と、まあここまでは順調だったのだが()、問題が一つある。
「なんで付いてきたの…?」
「久しぶりにフルルも遊びたいなーって」
横に完全守護形態フルル=チャンが座っている。
というか最早怪しい人みたいになってて他の職員の方に変な目で見られてる。
後輩の二人からは冷ややかな目線を浴びせられおまけにマコさんからは「アラー」みたいな目で見られている…
まずい。これは非常にまずい事態なのではないか。
次の停留所では、ヒロミが乗り込んできた。
「おはよう皆んな…と…何?」
もはや、誰?ではなく、何?と聞かれる未確認厚着生物フルル=チャン。
「タクミ君の付き添いだよー」
「「ねーっ!」」
女子感がすごいハモリだった。
うーん、こんな感じで仲良くなればいいんだよーと手本を見せてあげられれば良いのだが、悪いことに?僕の隣にいるのはアブノーマルな子。
はてさてどうするべきか…
あれ?
おかしいぞ?
突然視界が真っ白に染まった。
これがよくニュースで聞いていた「ホワイトアウト」だろうか。
いや、よく考えれば違う。
座席も横にいたフルルちゃんも見えないし、そもそも何故か座ってない。
まっさらな空間に浮かんでいる。
「な、何コレっ!」
ゾッとした。
この間聞いた怖い話に、異次元に飛ばされるとかあったが、もしやその類いだろうか?
得体の知らない不気味さで、不安が増していく。
突然バリバリと稲妻が走る。
と言っても音は無く、白い空間に目を細めると細い青と金色の筋が幾多も通っている。
それは突然耳元へ-「だぁれ?」
「タクミ先輩?着きましたよ?起きてください!」
「へぁっ?!」
クスクスとフルルちゃんとマコさんが笑っている。
どうやらもう着いてしまったようだ。
「夢…?うーんなんだかなぁ…」
「ホラ、外の風に当たったら一瞬で目が覚めちゃうよ!ゴーゴー!」
いつも通りテンション高めのマコさんに引っ張られて外に出、それに続いてフルルちゃんも出る。
「いってらっしゃーい!」
マコさんが車内に手を振ると、ヒロミが笑顔で手を振り返すのを見た。shit.
雪はそんなに強くないが、牡丹雪でドシドシと積もっている感じだ。
フルルちゃんが横でぽすぽすと歩いている。
丁度僕の鼻くらいの高さまでしかない背が、雪の中に埋もれていく。
フルルちゃんがおもむろにスキーゴーグルとマフラーを外して言った。
「…前の家みたいだね」
あぁ、そうだった。
あの家は跡形もなく吹っ飛んでしまったけど。
あの日、本当に骨を折る思いをして君を助けに行った日から、ずっと…
「にゃっ!」ズボオッ
「ひぎゃあ!!」
目の前の雪溜まりからいきなり猫耳少女が飛び出してきた。さながらポ〇モン。
「ひぎゃあって…」
「クスクス…」
笑うなよ…
そりゃいきなり出てきたらビックリするって。
「よくこんなビビリであの中に飛び込んで行けたもんだニャ…」
完全にナメきった態度で猫耳フレンズが言う。
虎柄、腕輪を嵌めていてオッドアイ…
「すごーい!あなたビャッコ様でしょ!握手しましょうよ!神様お願い!金運を分けてくださいっ!」
マコさんが飛びついた。
「ビャッコ…そうだっ!こないだ風呂に勝手に入ってきた!」
「「「「え?」」」」
「いやまった語弊があった」
「いやん…アタシそんなに軽い女じゃないわよん」
一斉に浴びせられる冷たい目。
いやマジ誤解だって…
「カクカクシカジカアーダコーダトナリノキャクハヨクカキクウキャクダ…」
「へぇ、なるほどぉ…」
おいシンヤ君なんだその訝しむ態度は。
「にしてもなんでビャッコ様がここに?」
「ニャッフッフ…」
ビャッコが不敵な笑みを浮かべる。
キランと目を光らせていて、何やら嫌な予感…
「お主カモーン!」
「ぐぇへぇっ!」
思い切り襟首を掴まれてビャッコがジャンプしたので、呼吸ができない。
「く、くるし、しぬ、しぬ」
「ちょーっとお借りしまっせー」
見てみると、ドッサリ雪の積もった木の上で、奇跡的なバランス感覚で立っている。
「まってよ!タクミと遊びにきたの!」
こちらにフルルちゃんが駆け寄ってくる。
「まーまー、後で帰すからよっと!」
「ちょ!襟首はま"あ"あ"ァァァァァァ」ギュウウ
マジで死ぬ。
「じゃねー!」
バリバリと雷鳴が轟き…
ドゴォォォォン!
と、ビャッコとタクミが立っていた木に、雷が突然落ちてきた。
「きゃぁっ!」
「タクミぃっ!」
「「先輩!」」
しかし木は何事もなくそこに立ち尽くしており、誰もいない…
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