看病


「風邪ではないですね」


「「へ?」」


「風邪ではないですね(大事なことなので二回言いました)、大丈夫ですけど…体の輝きの濃度が極端に低いのでサンドスターを処方します。フレンズにとってサンドスターの欠乏は病気みたいなものですからね、体調を崩すんです。運動は控えてください」


「フルル、レッスン休める!」


「そゆことじゃないでしょ…」


結局、デカい白ボトルに詰められた大量の虹色の粉末を1週間かけて飲ませることになった。

ヤクではない。


食べ物にふりかけ…そのまま飲んだりお菓子にかけてみたり。

しまいにはただただ水に粉を溶かし続けることで僕の5日は蒸発した。つまらぬ。

だがフルルちゃんも次第に調子を取り戻してきたようだ。


「オーッス!おみまいにきたぜ!」


「やあ、飼育員」


「まーたフルルはみんなを心配させるんだから!」


「気分はどうですか?」


PPPのメンバーのみんなもお見舞いに来てくれる。

錚々たるメンバーだがなんか見慣れてしまった。


「うん、ありがとう!」


まだ寝かせてはいるが…粉の量もあと少しなのでそろそろ動かしてあげられるだろう。

でも…

そうか、この粉が無くなったらもう1日しかフルルちゃんに会える日はないんだな…


よく考えたらこの粉末サンドスターでしょ?

スカイレースしたりするフレンズたちが飲んだら…ド̶ー̶ピ̶ン̶グ̶では????

…まあいいか。


「元気になったら練習こいよー!」


「んー!(うんとは言わない)」


バタンとドアが閉まる。

それにしてもこのフルルちゃんの寝床は快適だ。

シャワー、風呂、水道電気完備。

流石に危ないので火がでるものはない。

ここは離れのようになっていて、少し行くと更に大きなフレンズ用の建物があるらしい。

この建物は他と違いログハウスで、気に入って勝手に住み込んでいるのだとか。

普通に僕の住んでいたアパートより良い。


「タクミ、そこの棚のジャパリマンとって」


「はいよー」


バフバフと粉をまぶして手渡す。

ああ更に残り時間が…


微妙な顔をしてジャパリマンを頬張る。


「うーん…あんまりおいしくないんだよねー」


「我慢我慢、もう少しだから」


そう言いながらコップに飽和する程のサンドスターを混ぜ溶かして出す鬼畜具合。


「う〜おなかたぷたぷだよぉ…」


何だかんだ言って飲まないとまずいので無理やりにでも飲ませなければいけない。

頑張って飲んでくれたので頭を撫でて褒める。


「よし!えらいえらい!」


マコさんにも接触系スキンシップが大事だと言われていたのでそこんとこは心掛けているのだが。

そのままおでこを触る。


「うーん顔が赤くなってきたな…まだサンドスターが少なくて輝きが不安定なのかもしれない、もう少し寝てようか、濡れタオルもってくるね!」


「うん」


フルルちゃんが毛布の中に頭を埋める。

動作のひとつひとつが女の子って感じがする。




スザクの調子は完全に元に戻っていた。

評議会はセルリアンハンターを総動員して、次から次へと湧いてくるセルリアンの駆逐を行なっていたが…その勢いは増す一方だった。


「流石にオーダーきついですよぉ!」


半泣きでリカオンが疾走してくる。

毛皮も既にボロボロだ。

大きな触手が伸びてきてその手を捉える。


「イヤっ!いやです!離してぇ!」


バゴンと大きくセルリアンの体がひしゃげる。

そのまま爆ぜるより早く木々をなぎ倒して、セルリアンは崖までふっ飛んでいった。


「リカオン…もうへばったのか?」


「うぅぅ…ブラックですよぉ…」


「仕方ない、休んでろ!」


更にセルリアンが奥から湧いてくる。


「どこからそんなに…?キンシコウ!一般公開エリアにセルリアンを近づけるな!」


奥にいるフレンズはコクリと頷くと何処かに飛び跳ねていった。




彼女の髪を優しくかきあげ、そのおでこにヒンヤリとしたタオルを伏せる。

サンドスターが整わないだけでここまで体調を崩す物だろうか…?

僕はメンタルがやられてる時によく体を壊すのだが。

輝きがそれに直結する彼女らはそういった"傷つきやすさ"があるのかもしれない。


「ねぇ…タクミ…?」


彼女が瞼を開ける。


「うん?」


「ごめんね、こんな…私がこんなになっちゃったから大変だよね…」


「フフッ…大丈夫だよ、ほら、目を閉じて。休んでいいよ…」


妹なんていた事はないけど、まるでそれをあやしているみたいだ。

本当に、本当にこの時を止めたい。

もしかしたら、数日後には二度と出会う事が出来なくなるかもしれない君へ。


楽しかったよ。

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