飛び越えたりフラッシュして消える

はすき

第1話 光線

ー7月、熱い熱い。ステテコみたいなズボンでも脚にまとわりついてそれだけで苦しくて泣けてきちゃう。

「ねえ……、おはよう。」

隣には、だいすきな人がいる。

丸々とした体が私にずん、と重みを乗せてそして一言吐いた。

「おあよう。まだ起きたくない……。」

「んねええ、あっついったら!!」

んもう!

「どうしたの、そんなハアハアいって。」

「暑いの!!」

足が鉄板みたいに熱かったんだから!


「なほちゃん。」

「……。」

「昨日、考えたんだ。」

「何を?」

……来るか?

29の夏。私はあと1ヶ月で30。そのことを相手も分かっているはずだ。

もう付き合って2年経つ。こんな汚い部屋からあんな綺麗な代物が出てくるのか?いつから隠し持って……。



「別れよう。そのほうがいい。」

「……は?」


思わず口をついて出た可愛くない反応。

「え、いや、は?」

可愛くないのに繰り返す。

「え、いやちょっと意味わかんないんだけど。」


「お互いのためだよ。」

おたがいのため……?

「わ、わかったよ。それじゃ、もう会わない方がいいね。」

声が、上ずってるよ。



なにこれ。光線。

えっと、声の届くスピードよりどれくらい速いんだっけ。

音が、1秒340m進む。

じゃあ光は?

そういえば、1秒に地球を7周だか、するんだっけ……?

んああ、そうですか。


光線すぎる。は?もう、わからないよ。君という人が。


気づくと家に着いていて、相手の家にいくつかの忘れ物をしたことを思い出した。

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