オスロの湾岸で世界が叫ぶ

平中なごん

Ⅰ 散歩

 その日、私は二人の友人を連れ立って、ノルウェーの南東、エーケベルグの町の高台を散歩していた……。


 ここからは、この地方特有のオスロ・フィヨルドの絶景を容易に望むことができる。


 17kmにもわたる狭い湾内に、ゴツゴツとした岩の剥き出しになった小島が点在する、いかにも画家の創作意欲を掻き立てる風景だ。


 だが、厳密に言えばこれは〝フィヨルド〟ではないらしい……なんでも、〝ヴィーケン〟とか呼ばれる北欧特有の地形なのだそうだ。


 その違いはよくわからないけれど……。


 しかし、このように風光明媚な土地を友人と散策しているというのに、私は楽しげな気持ちを抱くことも、また爽快な感覚に浸ることもなく、それどころか鉛を腹一杯に飲み込んでいるかの如き重くうち沈んだ気分にずっと支配されていた。


 その理由は考えるまでもなく、すぐにいろいろと容易に思いつく……。


 いろいろと思いはつくが、それらを一言で表すならば、私を一生涯にわたって覆い尽くし、不気味な黒色に塗り潰している〝死〟というものが根源的な原因なのであろう。

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