第199話 新しい仲間
翌日。ケルノス連合国出発の日。
朝食を食べ終えたオレ達は王都の中をブラブラと歩いていた。
出発の時間まではまだ少しあるからってことで、フィーリアちゃん達へのお土産を買おうって話になったのだ。
「はぁお腹いっぱいだぁ」
「お前めちゃくちゃ食べてたもんな」
「だって今日で出て行くわけだし。色々食べとかないと勿体ないっていうか。流石に虫系は遠慮したけど」
「あれは流石にな……まぁ、食わず嫌いって可能性もあるけど」
「あれを食べるくらいなら私は食わず嫌いのままでいい……」
虫は無理だ。虫は絶対に嫌だ。いや、うん。カムイの国を悪く言う気はないんだけど。
こればっかりは合う合わないがあると思う。
「でも、朝食は美味しかったけど。そろそろマリアさんのご飯も恋しくなってくるっていうか」
「そうだな。でも、今日の夜には食べれるんじゃないか?」
「楽しみだなぁ。みんなにちゃんとお土産買って帰らないとね。何がいいかな?」
「俺に聞かれてもなぁ。そういうの得意なタイプだと思うか?」
「見えない」
「まぁそうなんだが。そんなはっきり言うなよ」
「別に悪い意味じゃないよ? だってレイヴェルがそういうの手馴れてたらなんかそれはそれで嫌だし」
「なんだよそれ……」
「ま、それはともかくお土産色々見て回ろっか。なんかいいのが見つかるといいんだけど」
「お土産をお探しですか?」
「「うわぁっ!?」」
急に背後から声をかけられてオレもレイヴェルも思わず飛び上がる。
「って、フェティか。もう、びっくりしたぁ。急に声かけられるのは心臓に悪いよ」
ロゼとフェティのところにはまた後で挨拶しに行こうと思ってたけど。まさかこんなタイミングで会うことになるとは思ってなかった。
「すみません。まさかそこまで驚かれるとは思わなくて」
「いや、俺らも完全に気を抜いてたからな。まさか誰かに声かけられるなんて思っても無かったし」
「でも、どうしたのフェティ。そんな大荷物もって。今からどこか行くの?」
「はい。その予定です」
「予定? どういうこと」
「……お二人にお願いがあります。私も一緒に連れていってもらえませんか?」
「……えぇっ!?」
「ほ、本気で言ってるのか?」
「もちろん本気です。そのための準備はしてきましたし、ババ様……師匠からの許しも貰っています。むしろぜひ行くべきだとまで言われました」
「ロゼが……」
「外の世界を見てくるにはいい機会だろうと。私はこれまでずっとこの国の中でした過ごしたことが無かったので。お二人の住んでるセイレン王国は獣人も受け入れる国だと聞いています。最初に行く国としては良い選択肢になるかとも思いますし。ダメ……ですか?」
「うっ……」
こんな可愛い上目遣いで見つめられて断れる人間がいるだろうか。いやいない。もしいたとしたらそいつは人間じゃない。悪魔かそれに類する何かだと思う。
なんてことを思いながら、チラリとレイヴェルに目を向ける。
目が合ったレイヴェルは小さく肩を竦めるだけだった。
ダメだって言わないってことは、そういうことなんだろうな。
「……わかった。フェティがそう言うなら」
「っ、ありがとうございます」
「そんなお礼を言われるようなことじゃないって。むしろフェティが一緒に来てくれるなら私もすごく嬉しいし」
「あぁ、今回フェティにはすごく助けられたからな。これからも仲間としてよろしく頼む」
「よろしくねフェティ」
「はい、よろしくお願いします!」
そう言ってフェティは頭を下げる。
まさかこんな形で仲間が増えるとは思わなかった。それもまさかフェティが来てくれるなんて。
なんでそう思ってくれたのかはわからないけど……うん、素直に嬉しい。
「それじゃあフェティも一緒に行こっか」
「はい。お二人はお土産を探してたんですよね。私もお手伝いします。このあたりのお店の情報は一通り把握してますので」
「さすがフェティ、じゃあお願いするね!」
「任せてください」
それからオレ達は出発の時間が近づくまでお土産を選んだ。
フェティが持っていた情報と話術を駆使して、様々な店で値切り交渉のための舌戦が繰り広げられたのはまた別の話である。
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