第145話 到着と再会

 レイヴェル達が馬車を修理した後、オレ達はすぐに最後の予定地であるカウス村へと向かっていた。

 その道中、また盗賊や魔物の襲撃があるんじゃないかと警戒していたオレ達だったが、そんなこともなく、オレ達は無事にカウス村へと辿りつくことができた。

 村に着いたのはもう完全に日が落ちた頃だった。


「あー、疲れたぁ。さすがにずっと警戒してると疲れるね」

「ははっ、護衛任務なんかだとこれが普通なんだけどね」

「あぁ、護衛対象に万が一があってはいけないからな。場合によっては一週間以上常に全方位を警戒することになる」

「えぇ……考えたくもないなぁそれは。レイヴェル、私達はこれから先何があっても護衛依頼だけは受けないようにしようね」

「護衛依頼はC級以上にならないと受けれないはずだけどな。受ける受けないはともかく今の俺達にはまだ縁遠い話だろ」

「わかんないよー。もしかしたらこの依頼で昇格できるかもしれないし」

「そう簡単にはいかないだろ」


 どうだかね。まぁその辺を決めるのはイグニドさんとかロミナさんだろうから、オレもよくわかんないけど。でも可能性はあると思う。さすがにちょっと楽観的過ぎか。


「それはともかく、他の二組も無事にたどり着けたみたいだね」

「あ、言われてみれば……」


 馬車を置いておく場所にはすでにオレ達の馬車を除いて二つの馬車があった。ライア達とコルヴァ達のものだと思う。


「また私達が一番最後だったんだ」

「まぁ別に競争してるわけじゃないから気にすることもないんじゃないかい」

「それもそっか。えっと、集合場所は……宿で良かったんだよね」

「そのはずだよ。この分だともう先に入ってるだろうね」

「俺達も急ぐとしよう。あまり待たせるわけにもいかないだろう」

「そうですね」


 そうして宿に向かって歩き始めたその時だった。


「クロエさん」

「え?」

「すみません、予定よりも調査が長引いてしまって。戻るのが遅くなってしまいました」


 背後から聞こえたのはあまり抑揚のない少女の声。

 その声を聞いたオレは弾かれるように後ろを振り返り、心からの笑みを浮かべた。


「フェティ!」

「わぷっ、きゅ、急に抱き着かないでください。暑いし、苦しいです」

「あぁもう! ホントに心配してたんだから」


 フェティと別れたのは今朝の話だし、ちゃんと村で合流するって話にはなってたけど、それでも心配なものは心配だ。

 だからこうしてちゃんとあえてすごく嬉しい。


「はぁ、この通り無傷で無事ですから。そろそろ離してください。そろそろ鬱陶しいです」

「う、鬱陶しいって酷いなぁ。私は心配してただけなのに」

「何事にも限度がありますから」

「もう。恥ずかしがらなくてもいいのに」

「はは、クロエは本当にフェティのことが気に入ったんだな。クロエ、嬉しいのはわかるけどそろそろ離してやった方がいいんじゃないか? せっかく仲良くなったのに度が過ぎると嫌われるぞ」

「むぅ……わかった。レイヴェルがそう言うなら」

「ふぅ……ありがとうございますレイヴェルさん。おかげで助かりました。ですが、私とクロエさんの仲が良いという点は訂正していただきたいかと」

「別に恥ずかしがらなくてもいいのに」

「恥ずかしがってるわけじゃありません。事実です」

「ははっ、驚いたね。まさかあんたが本当に追いついて来るとは。アタシらも今着いたばかりだってのに」

「そうなんですか? 予定ではもう少し早く着く予定だったのでは?」

「まぁこっちも色々あってさ。後で話すね」

「……わかりました」

「おい、お前達何をしている。あまり待たせるわけにはいかないと言っただろう。話すことがあるなら後にしろ。宿に向かうぞ」

「おっと、これ以上はヴァルガに怒られそうだね。アタシらも行くとしようか」

「そうだね」

「はい、わかりました」

 

 全くヴァルガも頭が固いっていうか、ちょっとくらい大目に見てくれたらいいのに。ヴァルガは生真面目過ぎると言うかなんというか。


「まぁいっか。フェティも行こう。もう宿でみんな待ってるみたいだから」

「はい。あ、そうでした。クロエさん」

「どうしたの?」


 すると、フェティがオレの方にスススっと近寄ってきて耳元で小さく囁く。


「あなたから頼まれた件についても調査を終えました。詳しく話したいので、夕食後に時間をとれますか?」

「っ……わかった。後で詳しく聞かせてもらうね」

「二人ともどうかしたのかい? 置いてっちまうよ」

「あ、うん! すぐ行く!」


 フェティの調査結果か……いや、今から色々と考えても仕方ないか。ライア達と話すことも色々多そうだけど、これも忘れないようにしないと。心の準備だけはしといた方が良さそうかな。

 そう心に決めて、オレはファーラ達の後を追って宿へと向かうのだった。

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