ビーバーとカバ

斎藤遥

第1話

僕は廃棄物だ 。


会社にも恋人にも良いように使われて捨てられた 。


これからどうしたらいいのかわからないまま夜の道をとる水のようにゆらりゆらりと歩いていた。



 「兄さん、お兄さん」


いきなり話しかけられたのにビクッとして恐る恐る顔をあげると含み笑いをしている男性がいた。


一応、後ろを振り返ると、誰もいなかった。


「 いやいや目の前のあなたに話しかけたのよ、あたし……怪しい者じゃございやせん」


ちょっと話し方が特徴的な彼はふふっと笑って目を細めていた。


「お兄さん悩んでるでしょ……その話誰かにつけぶちまけたいと思わない?」


「僕、今お金ないので貢げないですよ」


「じゃあ場合によってはお金もらわないからさ……ちょっと試してみない?」


「話するだけでいいから、ねぇどう?」


譲歩してるような口調なのに強引な彼には通されて少しだけならと答えた僕。


振り回されるのはこれで最後だと信じて。


「オーケー、お兄さん……あたしにちゃんとついてきて」


そう言って彼は僕の手をひいてずんずんと進んでいった。

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ビーバーとカバ 斎藤遥 @haruyo-koi

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