からかい、つっこみ、またいじる
@kaka03
第1話 破天荒が彼女の場合
「ねえ、
「なんだよ、
「私たち付き合ってからそろそろ一ヶ月だよね?」
「あー、たしかにそのくらいだな」
「だからいったん別れてセフレになろうよ!」
「
高校2年の7月、人生で初の彼女がなかなかクレイジーなことを言い出してきた。
「いやぁ、この一ヶ月でだいたい恋人らしいこともやり尽くしたかなと思ってさ」
「俺まだ童貞だけど!? 」
高1の頃から片想いを続け、一ヶ月前に勇気を振り絞った渾身の告白が実を結んだばかりだというのに、これどういう状況なの……ウケるー。
「童貞はほら、セフレになってからでも卒業できるしさ!」
「彼女とセフレじゃなんかほら、モチベーションが違うじゃん!こう、ほら……なんというか違うじゃん!? 」
「語彙力まで童貞になってるよ?」
「えっ、童貞って語彙力にも影響すんの?」
「します」
「まさかの断定!? 」
付き合い始めはテンパりすぎてなかなか会話が続かず、彼女がそんな俺の様子を面白そうに笑っていたものだ。
見てくれ、俺のこの成長ぶりを。でも今なぜか振られそうなんだけどね。
「待て、とりあえずちょっと待ってくれ!なんで急に彼女からセフレにジョブチェンジしようと思ったのか、理由を説明してくれ」
「えーっと、経験値が貯まったから上級職にクラスアップしようと思ったからかな」
「えっ、セフレって彼女の上級職なの!? 」
「そうです」
「なんでそんな曇りなき眼で断定できるの!? 」
おかしい、さっきから会話が通じない。昨日までそんなことなかったのに……なかったよね?
「まぁ、真面目に理由を説明すると」
「すると?」
「セフレってなんか不良っぽくてカッコいいなって……」
「中2の男子なの!? 現代ではだんだんいなくなってきてる、不良に憧れるタイプの中2の男子なの!? 」
意思疎通ってこんなに難しいものだっけ。そういえば俺が彼女との会話に慣れ始めてきた頃から、からかわれることが増えてきたけど、それはカップルのイチャイチャトークだと思って、一人部屋にいるときには思い出してニヤニヤしていたのに。
からかわれてると思っていたのは俺だけで、もしかして最初から会話が噛み合ってなかっただけ?
「えっと……一応聞くけど、彼女としてセックスしたいと思わないのかな?」
「うん。とくには」
「えぇー……」
「正直、キスも嫌かな」
「ねぇ、ほんとに姫子さん俺の彼女なの!? 」
もうやめて。俺、今すぐにでも泣き出しそうだよ。
「うん、だから彼女やめてセフレになろうと……」
「嫌だよ!? 俺もっとイチャイチャデートして、水着イベント回収して、HシーンのCG全部回収したいよ!」
「引くわー。高志さん引くわー。現実の彼女との思い出をエロゲ感覚でプレイしようとしてるよー、引くわー」
姫子さんはエロゲにも理解があるとても素敵な彼女(まだ別れてないよね?)だ。
……ちなみにまだ高2の俺は、全年齢向けの美少女ゲームしかプレイしたことがないが。
……本当だよ?
「と、とにかく、そんな訳のわからない理由で別れるなんて、俺は絶対にお断りだね!」
「えぇー、セフレでも彼女でも、これからもイチャイチャはできるよ?」
それだと俺が肉体的な関係があればいいみたいじゃないか。
そんなわけあるか。俺はどうしても付き合いたくて告白したんだから。
「俺は姫子のこと、この一年ずっと好きで、やっと付き合えたんだ!絶対に手放すつもりはない!」
「えっ……あっそう……なんだ。あ、ありがと……」
……あれ?なんか急に本気で照れてないこの子?
「付き合う前は休み時間とかに少し話せるだけでもすげぇ嬉しかったし、付き合えることになってからも、一緒に帰ったりするだけでもめちゃくちゃ楽しいんだ!」
「う、うん……そうなんだ……」
なんだなんだ、さっきまでの勢いもないな。よくわからないがチャンスだな。
「だから俺は、これからも姫子と彼氏彼女として一緒にいたいんだ!」
「わかった!わかったからいったん落ち着いて?お願いだから!」
「え?あ、おう」
「一緒にいたいんだ!じゃないよ……今の高志がイタいんだけど……もう、顔あっつい……」
そんなに赤面していったい何なんだよ。しかも俺がイタいってなんでだよ。
俺がそんなイタい発言でもしたっての……かよ……。
……してるな。めっちゃしてるな……。
ヤバい、ダメだ思い出すな。ああぁ、勝手に脳内でリピート放送始まっちゃう。
(脳内回想中)
……ぎゃああああぁあああああぁあああぁあ!?
「ひっ、ひ、姫子さん!? 違うんだこれは、いや、言いたかったことが違うわけじゃないんだけど、でも違うんだ!」
「うんうん、わかってるよ。私のことが好きで好きでたまらないから、別れたくないんだよね?」
「いやぁぁああ!? 恥ずかしい!なにこれ、めっちゃ恥ずかしいっ!」
必死に彼女を引き留めようとして、自爆したイタい男がこちらになります。
もう誰か助けて……。
「あはははっ。急に一人でアオハルし始めたと思ったら、一瞬で黒歴史認定しちゃうんだもん。ウケるー」
「できたばかりの傷口に塩塗らないでくれない!? まだカサブタにすらなってないからね!? 擦りむいたばっかりなんだから、もっと優しくして!」
「でも……そんなところも好きだよっ」
「そこは好きになってほしいところじゃないんですけど!? 」
結局、形勢逆転かと思っていられたのは一瞬だった。
姫子にからかわれ、振り回されるのが俺の立ち位置なのだろう。
しかし、今回はさすがに振り回されっぱなしで終わるわけにはいかない。今後の性春が……間違えた!青春が懸かっているのだから!
「あぁ、それでさ高志」
「ん?なんだよ姫子」
「あのセフレになろうって話、冗談だから」
「…………え?」
「いやー、ちょっと高志をからかってあげようと思ってね。いきなりセフレになろうなんて言われたら、どういう反応するのか見てみたくなっちゃって」
「……え、えーっと、つまり俺たちはこれからも彼氏彼女ってこと?」
「そうだよー。まさか真に受けてあんなに必死になるとは思わなくてさ。だから、その……ごめんね!」
「…………よがっだよ゛お゛ぉぉ゛お゛ぉぉ゛!」
俺、ガチ泣き。
さすがに今回は内心マジで焦ってたので、安心したらもう涙が……。
どうなることかと思ったけど、いつも通りからかわれてるだけで本当によかっ
「あっ、でもキスが嫌なのは本当だよ」
「………………え?」
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