4日目 『屍人荘の殺人』

彼曰く、エンタメに振り切ってる作品。


 ***


『屍人荘の殺人』今村昌弘

原作小説は読んだことはないし、コミカライズもすべては読んでいない。

だからどういう内容かは把握していない。

だからこそ、見える世界もあるというもの。


知人に勧められて、アマプラに飛んでみた。

公開同時のCMも見ていたけれど、実際に劇場に観に行こうとならなかったのはそこまでそそらなかったからなのは確か。

では実際に観てみてどうだったか。


ミステリではあるけれど、エンタメに結構振り切っているなぁと感じた。

そもそも推理小説にパニックものを持ってくるなんて・・・。

それだけで新しさを感じる展開。

だってゾンビよ、推理モノにゾンビ。

特殊メイクはそこそこの出来だったけど、「ふぁっ?」となったのは間違いない。

だって唐突すぎたんだもの。

冒頭からちょこちょこと人名テロップが流れて、「ああ、ミステリーっぽいなぁ。コナンみたいだな」なんて思っていた。

「通りがかりのプロレスラー」なんて、明らかに怪しい登場人物なのに、ぜんぜんストーリーラインに浮かんでこない。

あれは何だったんだと思っていたら、まさか後半にドアを突き破ってくるパワーファイター役に持ってくるとは。

それはそれで面白いんだけど、拍子抜けだったことがもう一つ。


導入部分から明らかに主人公っぽい立ち回りをしていた明智が、パニック早々にゾンビの餌食にされていたのも「??」となった。

私は何を見せられているのかな・・・?><。

助手としてこき使われていた葉村のような気分だった。

でもそこでようやく、葉村が主人公だということに気付いた。

至るまでのルートがだいぶ長いな~。

ストーリーの核心があいまいなまま展開される高級ペンションでのパニックとその陰で起こる殺人事件。

明らかになった密室殺人という本当のストーリーライン。

作者がやりたかったのはこれか!と、ようやく気付いたころには2人目の殺人が起きていた。

ゾンビ化することを殺人というのかは置いておいて、うまい具合に密室でうごめく怪しい影がなかなかつかめないでいる。

雲をつかむような、不確かな実感。

そのたびに感じる違和感に抗いたくなる、どうにかして犯人が誰かを知りたくなる。

そんなワクワクが湧き上がってくる。


ミステリーっていいなぁ。

方向性は奇妙に歪んでいるけど、全体を見通すと面白い展開だなと思いました。

でも相変わらずゾンビっていうこの世ならざる者の存在を持ってきているところは突拍子のなさを感じないでもない。

でも作者としてはそれも含めてこの作品なんだと思う。


映画だけの感想だけど、総じて面白く鑑賞できました。

原作ももしかしたら続編を読むかもしれない。

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