20日目 再会
彼曰く、先輩らしいことしてほしいんですよ。
***
大学時代の友人と会った。
久しぶりの再会、どんなに変わっているかなとちょっと楽しみにしてたけど、思っていたよりも大学時代のままだった。
社会人ともなるとやっぱり激変とまではいかないよね。
むしろ変わってなくて安心したくらい。
毎度毎度会うたびにニュースタイルを見せられたら困ってしまうから。
誰が誰なのかわからなくなると次の再会が怖いからね。
再会の場所は新宿。
何の思い入れもない場所だけど、集まるならここが一番中央値かなってことで。
昼間から酒を飲むという背徳感。
酒をそれほど強くないのにこういうことをしたがるあたり、私もまだ子供かもしれない。
しかも調子に乗っていたのか知らないけれど、普段なら一杯目ビールのところ、今日はなぜか角ハイボールを頼んでいる。
ウイスキー類はアルコール臭が強くて苦手なんだけど、不思議なもんだ。
たぶん飲みに来る前に卵かけご飯を胃の中に流し込んできたのがよかったのかもしれない。
とはいえ空きっ腹に濃度高めの酒はきつい、死んでしまうかもしれん。
串揚げ食べながら最近の仕事の話、サークル仲間の話、恋人との話。
ブリーチで一番かっこいい卍解のセリフは誰か、なんて中二病っぽい話もいろいろとした。
ハンターハンターは未履修だったので怒られた。
先輩にも言われてしまったから早いところ履修しないと。
会社の後輩が全巻大人買いしたなんて言ってたなぁ。
オタク心を取り戻さねばと思いながら、酒と串揚げを食べ続ける。
飲み始めて3時間、昼の1時から飲んでいるから随分と時間が経った。
まだここで飲んでもいいけど、店も変えたい。
同期と後輩がメガジョッキを飲み干すのを見届けて次の店に移る。
一軒目は私が選んだけど、二軒目は任せることにした。
向かった店でも飲み始める、今日の肝臓のキャパは結構あるらしい。
いつもなら3杯くらいで水に移行するところだけど、すでに一軒目で翠ジンハイボールを3杯追加している。
このままいくともう3杯くらい行けそうだ。
「やっぱり飲めるじゃないですか!」
飲み会をするたびに言われることがあるけど、私自身に飲める自覚はない。
顔真っ赤にするたびに頭ガンガンなって水を欲している人間が、強い肝臓を持っているわけないのだから。
とはいえ今日はよく飲んでいる方だし、意識保っているのがすごいと思う。
でも二人はそれ以上に飲んでいるから、やっぱり私は弱いんだよな。
うらやましいとは思わないがね。
好きなように食べ、好きなタイミングで飲む。
それが私の飲み会の流儀。
我関せずを貫きがちな、傍観者スタイル。
「そこがイケないとこですよ」
そう思う心を読み取るかのように、後輩から文句が出てきた。
私の所属していたサークルは確かにお世辞にも仲がいいとは思えない。
いがみ合うことも多いし、何ならそれさえないってこともあった。
元凶がだれとは特定できないけど、後輩曰く我々先輩がいけなかったらしい。
「先輩たちが誘ってくれれば後輩はついてくるんですよ」
「誘いを断る後輩なんていないんですから」
「積極性、欲しかったな~」
これ幸いと言い募ってくる後輩氏。
今さら言われても困るんだよなぁ・・・と思う反面、確かに何もしてこなかったなぁと反省している部分はある。
先輩面、というのが苦手な私に足りないもの。
それはまさに先輩らしい姿だったらしい。
よく考えたら後輩のその姿勢も大学時代のそれと変わっていなかった。
はたから見た時の後輩はいつも先輩から話しかけられるのを待っているように見えた。
「やっぱり変わらないなぁ」
改めてそう思う再会の日だった。
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