12日目 代休
彼曰く、今見えているものは亡霊だから。
***
働くというのはとても大変なことだ。
ずっと頭を回転させて、体を動かして、目の前のことと再来週のことに注意を行ったり来たりさせないといけないのだから。
だがずっとそうしているのにも限界というものがある。
ずっと動き続ける機械も、油を差したり、劣化した部品を交換しなければベストパフォーマンスは発揮できない。
人間もそれは同じ。
限界が来たら働きぶりは見るからに衰える。
年齢的なものもそうだけど、それ以上にずっと同じことを続けていると精神的にも疲れてしまうこともあるのだ。
年齢的に私がキツイ、というわけではないが、最近は気にするべきことが多すぎた。
はたから見れば大した量ではないかもしれない。
大局的に現場を見ているわけでなく、自分の担当のプロジェクトのみに神経を傾けているから、ほかの担当者に白い目で見られている部分もなくはないと思っている。
そうはいっても自分のプロジェクトを進めないことには、私にも次の仕事があるのだから。
終わりが近いものから終わらせていく、ひと段落つけるものがあるならその地点まで頑張る、粘る。
好きで仕事をしているならばそれくらいのことは耐え抜かなければ。
社会人として大事なことだ。
そして同じくらい、仕事を続けるには休むことも大事になる。
ずっと働かせていた脳が、明日も同じように働くとは限らない。
ましてやずっとフル稼働させていたも脳だ。
受験期ほどの若さもないし、勉強ほど素直に進むでもない。
人と人とがかかわっている限り、自分では処理しきれないエラーもたびたび出てくる。
自分事でなくても、自分の企画なのであれば自分事になってしまうのだ。
仕事というのは時に理不尽だ。
自分の責任でなくても、結果的には自分の責任になってしまうこともあるのだから。
だからいくら自分が休もうと思っても、気が気でなくてなかなか休めない。
代休ともなればなおさらだ。
そんな代休日に限って、何かしら対応しなければならない事案が発生する。
安心しきっているタイミングで地震が起きるようなもので、発生なんて予期していない。
人間万事塞翁が馬、とはよく言ったものだと思う。
本当に、人生には何が起こるかわからないものだ。
夕暮れ時の寒空の下、行くはずのなかった会社への道を歩きながら、昼過ぎまで惰眠をむさぼって代休を無為にしたことを少し後悔した。
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